97 彼女と彼の、落とし物 其の二
【おこんばんMEー。ごっめーん座標軸設定まちがえちゃったー、しかも転移補助具も忘れたYO☆。なので本日の異世界コラボスイ―ツ研究会は延期でよろとマイフレンドに伝えておいてくださ―い。ちなみに貴様のお望みの『トマトとゾンビの月月火水木金金パート3』は次回に続くだ、たまにはそれもよろしかろう。それではよろぴく、今日はモフモフ祭りだぜてへぺろ】
「………」
―――――バキっ。
新作映画を待ってた魔王さま、ちいたま一つ無駄にした。
てへぺろ。
などというもはや半自虐ネタを披露したのは私です。ごめんなさい。
23歳もう少し落ちつけといいたかったのですね、きっとそうきっとそうあれおかしいな目から汗が。
「まんまみーあ、独りぼっち哀しいです」
【黙れ。我がいとし子たちを貴様のそばになど置けるか】
まんまみーあが(今日も)冷たいの。
ただいま、夕暮れ。
緑籠もる【連窩】はまんまみーあの住処にて、今宵のお宿を頂くところなのですが。
あたしひとり、ぽつんと離れていたりします。
おかしくないか?
転移ポイント間違ったといえども、今日もあたしいい子にミニマムもふもたちの子守りしたよ。それはもう燃えるコスモが湧きあがりかけるほどの献身っぷりなまでに子守りしたよ。
ミニもふもどもを抱えて投げ続けたおかげで確実に明日の朝は筋肉痛だと自信があるくらいなのですが。
「まんまみーあ、寒いよお。寒いですうう」
みぎゃあみぎゃあとぶえぶえ泣いていたら、ため息ついたお母様が仕方なさそうに尻尾を振って招いてくれた。
行っていいんだよね? だよね? だよね? てか駄目でも行く。
もそもそとリュック一つ担いで、まんまみーあに寄り添った。
もっふもっふなお母たまの尻尾の先にくるまりながら、夜になった異界の空を見上げる。
「うん、きれい」
幸せ。
【…】
緑の屋根に包まれた場所のこと、急激な温度変化はない【連窩】での野宿は実はそこまで寒くはない。
しかし、もっふりこもこもとかわえらしいミニマムもふもふたちとご立派なふかふかお母たまのもふもふか団子を遠目に一人ぼっちなんて心胆寒からしめるなり、と真顔で語れる今夜のわたし。
さりげなく愛らしいミニマムたちと隔離された位置とは言えどもこのふっかもふ天国の隅っこに混ぜてあたるというのなら、至福の喜びを右往左往極まって天に昇って地にも潜って伝播し奉らんとどや顔で宣言できる。
本気と書いて、今からゐってきましょうか?と訳せるこの感情。
だがしかし。
恥ずかしがりやなお母たまはそれを拒否するだろう事が問題なのである。
もふっとした暖かな毛皮の向こう側で小さな獣たちの寝息が聞こえる。
小さな獣たちの、満たされた安息の時間の証明。
「…蒼星が見えるね」
真っ暗な夜天の中には、数多の綺羅星が輝くのは異界であろうとも変わらぬ理。
手を伸ばした先に見えるのは、蒼く陰る星一つ。
【隠れるもの】とも【隠すもの】とも呼ばれるソレ。
暖かな寝床のなかで京香はつぶやく。
「 ―――― 今夜は誰が消えるのかしら」
呟きに答えるものはいない。
本日の棄書
『トマトとゾンビの月月火水木金金パート3』
イスランご所望の新作B級ゾンビ映画第三弾。
トマト祭りの真っ最中にゾンビが復活。真っ赤に熟れたトマトの果汁が香るゾンビたちによるノンストップオンクレージーな物語。
ヒーローは日本人観光客な荒さ―女。ヒロインは碧い瞳のショタ天才子役(生真面目ツンデれ)。白の半ズボンが徐々に真っ赤に染まりゆく様子に萌え萌えしたのは某異界渡りです。乞う次回!(嘘)
NGワードは『映画に使用されたトマトはすべてスタッフが美味しくいただきました。』―――― 本気か?
第三弾にはミュージカル風味が新しく導入されて更なるカオスが待ち受けているという前評判が立っている。ゾンビなのに。
異世界コラボスイ―ツ研究会
胃のフレンズたちによる研究会。
月3くらいの頻度で開かれる、夢と食欲と好奇心に満ちた研究会。
こちらの成果が異世界コラボシリーズであることは云うまでもない。
もふもふか団子
もふもふ+ふかふか+団子な状態。造語。
京香の為のもふもふ活用(一部)
もふる(現在形)
もふった(過去形)
もふりた~い(未来願望形)
もふも(重複した愛のあまり最後まで語り尽くせぬ「もふもふ」誤用形。類似形に「もふもっっ(←詰まった)」あり)
もっふり(ふんわり感が強調されたもふもふ形容動詞)
書き続けるときりがないので、一部で終了しておこう。
本日の復讐(じゃにゃくて復習)
ちいたま
異世界におけるパソもどき。それなりに貴重。壊しちゃいやん。