↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界帰りの最強武士、現代ダンジョン学園で底辺Fランクに偽装してスローライフを送る~昼寝と専属家政婦の極上ご飯を邪魔する大企業は、木刀の峰打ちで物理粉砕(ざまぁ)します~  作者: トール
第四章:夏休みの臨海合宿と、極楽ハプニング

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/111

第099話:部室会議、いつも通りの顔で

 


 東城から託された資料をもとに、部室の全員が集まった。

「――というわけだ」

 トールが、事の経緯を淡々と語り終えると、部室に、これまでにない重い沈黙が落ちた。

「常盤とかいう奴、盾花さんの工房にも、氷華ちゃんの実家にも、手を伸ばしてたってことッスよね……」

 鯖江が拳を握りしめる。

「ええ。……許せませんわ、そんなの」

 氷華の声にも、いつもの朗らかさとは違う、確かな怒気が滲んでいた。

「私も……お母さんの工房を、そんな風に利用されるなんて、絶対に嫌です」

 盾花もまた、真剣な表情で頷く。

「白石殿」

 トールが静かに白石さんへ視線を向けた。

「お前と、結衣にも、危険が及ぶかもしれん」

「はい。承知の上です」

 白石さんは、いつもの穏やかな微笑みのまま、しかし確かな芯を込めて答えた。

「わたしは、佐藤様が、そして皆さんが、大切なものを守ろうとするなら――どこまでもお供します」

 その一言に、部室の空気が、静かに、しかし確かに定まった。

「――というわけで」

 イシュラーナの声が、いつもの調子に戻る。

『鯖江くんとわたくしで、常盤の動向は引き続き監視いたしますわ。今のところ、まだ向こうがこちらの動きに気づいた様子はありませんの』

「頼む」

 蓮司も、静かに頷いた。

「常盤の狙いが最深部のゲートだというなら、いずれ、あそこに向き合う日が来る。その時は、俺も戦う」

「無論だ」

 トールは、木刀を静かに手に取った。

「今はまだ、いつも通りの日常を守る。……だが、いざという時は、俺も本気を出す。そういうことだ」

 その一言に、部室の全員が、それぞれの覚悟を込めて頷いた。

 * * *

 会議の後、部室にはいつも通りの、穏やかな空気が戻っていった。

「――さて、こんな時こそ、いつも通りの飯を食うとしよう」

 トールがそう言うと、白石さんが微笑みながら夕食の支度に取り掛かった。

「そうですわね。深刻な顔ばかりしていても、始まりませんもの」

 氷華もいつもの調子を取り戻しながら、紅茶の準備を手伝い始める。

「俺も、今日はとびきり美味い夕飯にするッス。士気を上げていかないと」

 鯖江がそう言って厨房に向かうと、盾花もくすくすと笑いながらそれに続いた。

 その光景を眺めながら、蓮司はぽつりと呟いた。

「――こんな時でも、いつも通りでいられるのが、お前たちの強さなんだろうな」

「その通りだ」

 トールが誇らしげに頷いた。

「どんな敵が来ようと、この部室の日常は揺るがん。それが、俺たちのやり方だ」

「――そういえば」

 夕食を待つ間、盾花がふと思い出したように口を開いた。

「常盤って人、内閣府の特別顧問なんですよね。……そんな立場の人が、どうしてここまで強引な手を使うんでしょうか」

 盾花の素朴な疑問に、蓮司が静かに答えた。

「そういう手合いは、大抵『大義名分』ってやつを掲げるものだ。国のため、未来のため――そう言えば、大抵のことは正当化できると思っている」

「――胸糞悪いッスね、それ」

 鯖江が顔をしかめると、氷華も同意するように頷いた。

「本当に。大義名分があれば、他人の日常を踏みにじってもいいなんて、そんな理屈、わたくしは絶対に認めませんわ」

「その通りだ」

 トールが、静かに、しかし確かな力を込めてそう言った。

「どんな大義があろうと、目の前の誰かの当たり前の暮らしを奪う権利など、誰にもない。俺たちは、それを、身をもって示してやるだけだ」

 その一言に、部室の全員が、それぞれの決意を新たにしながら頷いた。

「――さて、飯にするか」

 トールがそう言うと、白石さんが「はい、もうすぐ出来ますよ」と柔らかく微笑んだ。深刻な話の後にも、いつも通りの温かな夕食の香りが、部室いっぱいに広がっていった。

 夕食の席では、いつも通りの賑やかな会話が飛び交った。

「――白石殿、この筑前煮、いつにも増して美味いな」

「ふふ、佐藤様のために、少し味付けを工夫してみたんです」

「相変わらず、佐藤さんは食べることが一番の幸せですのね」

 氷華が呆れたように、しかし温かな笑みを浮かべてそう言うと、盾花も鯖江も、それぞれの箸を進めながら笑い合った。蓮司もまた、その輪の中で、ごく自然に箸を動かしている。

「――こういう時間が、何より大切なんだろうな」

 蓮司がぽつりと呟くと、トールは静かに頷いた。

「その通りだ。だからこそ、俺たちは、これを守るために戦う」

 その静かな決意の言葉に、部室の全員が、それぞれの胸のうちで、改めて確かな覚悟を固めていった。いつも通りの賑やかな食卓の裏側で、誰もが、大切な日常を守り抜くという、揺るぎない意志を静かに共有していたのだった。その夜の空には、雲一つない、澄み渡った満天の星々が、いつまでも変わらぬ約束のように、静かに、そして優しく瞬き続けていた。

 窓の外では、初夏の陽射しが、いつも通りの渋谷の街並みを照らしていた。だが、その日常の裏側で、静かな戦いの火蓋が、確かに切られようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。