第055話:極上のダブル・ホールドと、親バカ防波堤の誕生
魔道具研究会の部室は、異常な熱気に包まれていた。
急遽、高校生用のメイド服を着て助っ人に入った白石さんの登場により、メイド喫茶スペースの空気は完全に狂騒の渦と化していた。
「お待たせいたしました、ご主人様。お代わりの極上紅茶です」
白石さんがお盆を持ち、ふわりと微笑みながら歩く。
高校生サイズで作られた衣装の生地は、大人の女性である彼女の『圧倒的で暴力的なまでの双丘』を収めきれず、胸元のボタンは今にもはち切れそうに悲鳴を上げている。
さらに、短いスカートの生地は、経産婦特有の豊満で柔らかな肉感を蓄えた『極上のヒップライン(安産型)』を内側から限界まで押し上げ、歩くたびにむっちりとした大人の腰のカーブがこれでもかと強調されていた。
「うおおおおっ! あの胸の谷間もヤバいが……歩くたびに揺れる、あの豊満なお尻のライン……たまらんッ!」
「前からも後ろからも圧倒的なバブみ(包容力)だ……あぁっ、いい匂い……昇天するぅぅ……!」
白石さんが笑顔でお茶を運ぶだけで、客の男子生徒たちは致死量の色気に当てられ、次々と鼻血を出してノックアウトされていく。
しかし、ホールが熱狂に包まれていた、その時。
「あっ!」
忙しくお盆を運んでいた白石さんが、床に這わせてあった魔道ケトルの延長ケーブルに、ヒールの高い靴を引っ掛けてしまった。
「きゃあっ!?」
バランスを崩し、前のめりに倒れ込む白石さん。その先には、他校から冷やかしに来ていたガラの悪い男子生徒(モブ客)が座っていた。
「おっ! 超絶美人メイドのラッキースケベ、いただきぃっ!」
モブ客は下心全開で下劣な笑みを浮かべ、両腕を大きく広げて白石さんの豊満な身体を受け止めようとした。
――だが、そのモブの汚い手が白石さんに触れる、コンマ一秒前。
「むっ」
パーテーションの裏でまかないの焼きそばを食っていたはずの佐藤通が、音もなく、風すらも置き去りにする神速の歩法でモブ客の目の前へと割り込んだ。
「げぶぅッ!?」
トールは容赦のないショルダータックルで、下心を全開にしていたモブ客を横っ飛びに弾き飛ばす。そして、空いた両腕で、倒れ込んでくる白石さんを真正面からガッチリと受け止めた。
ドサッ!
「…………っ!!」
結果として――超過激なサイズアウトを起こしている白石さんの『弾けそうな胸の谷間』が、トールの顔面に完全にダイブ(密着)した。
さらに、彼女の細い腰に回されたトールの両手は、勢い余ってスカート越しに限界まで張り詰めていた『豊満なヒップの双丘』を、がっちりと深くホールドしてしまっていたのである。
「ほう……」
顔面を包み込む胸の圧倒的な弾力と、甘い香り。そして両手からダイレクトに伝わってくる、経産婦ならではの圧倒的な質量と柔らかさを兼ね備えた、極上のヒップの感触。
トールは周囲の喧騒を完全にシャットアウトし、真顔で宇宙を感じていた。
「……前面のクッション(胸)もさることながら、この後方の装甲の豊かな弾力……。誠に、極楽であるな」
「さ、さささ、佐藤様ぁぁぁっ……!?/// ど、どこを触って……っ///」
至近距離で顔面を胸に埋められ、さらにお尻をガッチリとホールドされた白石さんは、顔を茹でダコのように真っ赤にして悲鳴を上げ、慌ててトールの身体から身を引き剥がした。
『(カシャカシャカシャカシャッ!!)ギャアアアアッ! 顔面ダイブ&極上ヒップホールドのダブルコンボォォォッ!! トール様、美味しいところを完全に独占してますわーーッ!!///』
レジ裏に置かれたイシュラーナ(スマホ)の無音シャッターが、狂ったように連写される。
「てめぇ! 何しやがる、俺のラッキースケベを……っ!」
弾き飛ばされたモブ客が怒鳴り声を上げるが、トールは白石さんを背中に庇うように立ち塞がると、魔神をも震え上がらせる冷酷な眼光で睨み据えた。
「――俺の飯を作る人間に、気安く触れようとするな。目障りだぞ、羽虫」
「ヒッ……!?」
トールの全身から漏れ出す本気の殺気(過保護な独占欲)に当てられ、モブ客は情けない悲鳴を上げて逃げ出していった。周囲の客たちも「あんな超絶美人メイド、あいつの専属なのかよ!」と血の涙を流している。
* * *
「おのれ、我が娘を差し置いて、年上の家政婦とイチャついているだと……!?」
その光景を、部室の入り口の物陰からギリィッとハンカチを噛み締めて睨みつけている中年の男性がいた。氷華の父であり、旧メジャー『神宮寺家』の現当主である。
娘の様子をこっそり見に来たお父様は、トールの過保護な独占欲と、氷華が「もうっ、佐藤さんったら!」と頬を染めてトールを見つめている姿を見て、「あんなに冷たかった娘が、青春している……!」と涙ぐんでいた。
しかし、お父様の視線がふと、部室の半分の『展示スペース』へと向けられた時、彼の思考は完全に停止した。
「……なんだ、あれは」
展示台の上に無造作に置かれている、ペン立てにされた『イチゴオレの空き缶』。
(間違いない、氷華がラボに持ち込んできた、あの無限エネルギー抽出機(空き缶)と同じものだ! なぜこんな所に……!?)
さらにその横には、ネットを騒がせている『自動収集マジックバッグ』と『無限冷却流しそうめん機』が展示されている。
(まさか……世界中の企業や軍事機関が血眼で探している【謎の天才企業】の拠点は、娘の部室だったのか!?)
全ての点と点が繋がり、お父様は白目を剥いて発狂しかけた。企業トップとして、今すぐトールを確保し、神宮寺家のラボに監禁してでも技術を吐かせなければならない。
――だが。
「佐藤さん、お弁当のおかず、わたくしにも一口くださいませ」
「ん。美味いぞ」
展示スペースの裏側で、トールが氷華に唐揚げを分け与え、氷華がこれ以上ないほど幸せそうな笑顔を浮かべている。
その平和すぎる光景を見たお父様の胸に、企業トップの野心よりも遥かに強大な『親バカ』の感情が突き上げた。
(この平穏な部室(聖域)を、大人のドロドロした事情で壊せば、娘のこの笑顔は消えてしまう……。神宮寺の未来より、娘の笑顔(青春)だ!)
「おい、この部室にヤバいオーパーツが展示されていると聞いて来たんだが!」
そこへタイミング悪く、新興メジャーの息がかかった外部の調査員たちが、部室に踏み込んできた。
「ひぃぃぃっ! き、来やがったぁぁっ!」
定時退社を守るためにもみ消し役に徹していた凪教官が、胃を抱えて絶体絶命のピンチに陥る。
しかし、そこへ颯爽と立ちはだかったのは、神宮寺家当主のお父様であった。
「お引取り願おうか! 私は神宮寺グループのトップだが、この部屋にあるのは最新のAR技術とただのガラクタだ! 専門家の私が保証する!!」
「なっ……旧メジャーのトップが、なぜこんな所に!?」
かくして、胃痛持ちの事無かれ主義教官と、娘の青春を守護する親バカのトップによる、夢の(?)『最強もみ消しタッグ』が誕生した。
大人たちが入り口で決死のディフェンス(レスバトル)を繰り広げている中。
「……文化祭とは、誠に良いものだな」
トールは『空間断絶・絶対防音お昼寝結界』の中で、白石さんのメイド服姿と特製オムライスを堪能し、スヤスヤと平和な昼寝を満喫して幕を閉じるのであった。




