第054話:ヤバすぎる出し物決定と、超過激サイズの助っ人メイド
九月。新学期を迎えた渋谷代々木学園は、年に一度の『文化祭(学園祭)』の準備期間に入り、どこか浮足立った熱気に包まれていた。
しかし、学園の片隅にある魔道具研究会の部室だけは、いつも通り極上のそよ風(積層魔石エアコン)が吹き抜ける、平和で怠惰なスローライフ空間であった。
「さて、わたくしたち魔道具研究会も、文化祭の出し物を決めなくてはいけませんわ」
黒板の前に立った神宮寺氷華(氷の女王)が、チョークを手にして宣言する。
「とはいえ、わたくしたちの部員は四人だけ。大掛かりなことはできませんの。何か意見はありますか?」
「はいっ! クレープ屋さんとか、タピオカドリンクの屋台がいいです!」
戌井盾花(タンク娘)が元気よく手を挙げるが、特大アンティークソファーで寝転がっていた佐藤通が、心底鬱陶しそうに首を横に振った。
「却下だ。そんなものをやれば、俺が火の前に立って調理をさせられる羽目になる。俺は当日、絶対に何もしない。ただソファーで寝て、白石殿が作ってくれる特製お弁当を食べるだけだ」
「もーっ、佐藤さんったら! お祭りなんですから、少しは手伝ってくださいよ!」
「……ならば、展示だけで済むものを出せばいいだろう。そこに転がっているガラクタを適当に並べておけ」
トールが指さしたのは、部室の隅に無造作に置かれているアイテム群だった。
魔石を全自動で吸い込む『500円のリュックサック』。
電力ゼロで超絶冷却を続ける『無限冷却流しそうめん機』。
そして、ペン立て代わりに使われている『イチゴオレの空き缶(超高効率魔力バッテリー)』。
「いやいやいや! 駄目ッスよボス!!」
パシリの鯖江録郎が、悲鳴を上げて立ち上がった。
「どれもこれも、ネットの裏掲示板で世界中の大企業や軍事機関が血眼になって探してる、推定価値数千億円のオーパーツですよ!? そんなの展示したら、一発で身バレして俺たち消されますぅぅっ!」
『チッチッチッ。甘いですわね、録郎』
テーブルの上のイシュラーナ(スマホ)が、( ¯﹀¯ )ドヤッというアスキーアートを点滅させた。
『展示品にはわたくしがハッキングした偽装プログラムを流し込みますわ。「これは最新のAR技術と、ただの現代アート(手品)です」と言い張れば、一般客には絶対にバレませんのよ! トール様の手を煩わせない、完璧な展示スペースですわ!』
「うむ。決まりだな」
「ええええっ……」
鯖江が頭を抱える中、氷華がコホンと咳払いをした。
「展示スペースにするのは構いませんが、それだけでは文化祭の華がありませんわ。部室の残り半分のスペースを使って……『メイド喫茶』をやりたいですの!」
「メイド喫茶、ですか?」
「ええ! わたくしと盾花で接客をしますわ! メイド服……殿方なら誰しもが憧れる、あのフリフリの衣装を着れば、わたくしのAスタイル(絶壁)も少しはボリュームアップして見えるはずですのよ……!」
切実すぎる乙女の願い(コンプレックス)を前に、トールは「まあ、俺が接客しなくていいなら好きにしろ」とあっさり許可を出した。
* * *
そして迎えた、文化祭当日。
魔道具研究会の部室は、二つのスペースに分けられていた。
半分は、トールたちが錬成したヤバすぎるオーパーツ群を「ただの現代アートです」と言い張って飾る展示スペース。
そしてもう半分は、氷華と盾花、そして鯖江の召喚獣たちがコスプレして接客する『メイド喫茶』である。
「お、お帰りなさいませ、ご主人様……っ。ご注文は紅茶でよろしいですの?」
「いらっしゃいませー! サクサクの手作りクッキーもありますよー!」
不慣れなメイド服姿で顔を赤くする氷華と、元気いっぱいの盾花。
さらに、ジャンク品の『魔道ケトル』で淹れた超高純度ミネラルティーの異常な美味さと、積層魔石エアコンの極上の空調が口コミで広がり、部室には廊下まで続く長蛇の列ができていた。
「駄目ですわ、お湯の補充が追いつきませんの!」
「クッキーも品切れ寸前ですぅっ!」
予想外の大繁盛に、ヒロインたちと裏方のパシリ(鯖江)は完全にパニック状態に陥っていた。
「……五月蠅いな。これでは落ち着いてまかない飯も食えん」
部室の最奥、絶対に客が入ってこれない安全圏(パーテーションの裏)のパイプ椅子で、トールは一人、出店の焼きそばをすすりながら鬱陶しそうに眉をひそめていた。
その時である。
「あの、氷華ちゃん、盾花ちゃん。なんだかすごく忙しそうね。結衣はおばあちゃんとお化け屋敷に行っているから……私も少し、お手伝いしましょうか?」
トールの保護者として文化祭を見学に来ていた白石さんが、見かねて助っ手を申し出たのだ。
「ほ、本当ですか!? 助かりますわ! 鯖江くん、予備のメイド服を!」
「イエッサー! クラスの女子から借りた、高校生用の標準サイズのメイド服ッス!」
鯖江から衣装を受け取り、白石さんはパーテーションの奥へと着替えに入った。
数分後。
「ええと……胸のあたりもキツいんですが……なによりスカートが短すぎませんか? お尻のあたりがパツパツで……っ」
着替えを終えた白石さんが、恥ずかしそうにモジモジと身をよじりながら姿を現した。
「「「…………ッ!!」」」
その姿を見た瞬間、氷華、盾花、鯖江の三人は完全に息を呑んで硬直した。
高校生(標準体型)に合わせて作られた衣装の生地は、大人の女性である白石さんの『圧倒的で暴力的なまでの双丘』を収めきれず、胸元のボタンは今にもはち切れそうに悲鳴を上げている。
――しかし、それだけではなかった。
経産婦特有の、豊満で柔らかな肉感を蓄えた『圧倒的なヒップライン(安産型)』。それが短いスカートの生地を内側から限界まで押し上げ、歩くたびにむっちりとした大人の女性の腰のカーブがこれでもかと強調されていたのだ。後ろを向けば、タイトスカートのようにパツンパツンに張り詰めた極上のヒップラインと、そこから伸びる艶めかしい太ももが、暴力的なまでの大人の色気を撒き散らしている。
「……前後ともに、凶悪すぎる兵器ですわね」
氷華が、自身のAスタイルと見比べながら、敗北感と共に遠い目をして呟いた。
「お待たせいたしました、ご主人様。お代わりの極上紅茶です」
白石さんがお盆を持ち、ふわりと微笑みながらホール(接客)へ出る。
――その瞬間、メイド喫茶の空気が一変した。
「なっ……なんだあの超絶美人のメイドは!?」
「うおおおおっ! あの胸の谷間もヤバいが……歩くたびに揺れる、あの豊満なお尻のライン……たまらんッ!」
「前からも後ろからも圧倒的なバブみ(包容力)だ……あぁっ、いい匂い……昇天するぅぅ……!」
白石さんが笑顔でお茶を運んで歩くたびに、客の男子生徒たちはその致死量の色気とヒップラインに当てられ、次々と鼻血を出してノックアウトされていく。
超過激サイズの助っ人メイドの登場により、魔道具研究会の文化祭は、甘く危険な熱狂の渦へと包まれていくのであった。




