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異世界帰りの最強武士、現代ダンジョン学園で底辺Fランクに偽装してスローライフを送る~昼寝と専属家政婦の極上ご飯を邪魔する大企業は、木刀の峰打ちで物理粉砕(ざまぁ)します~  作者: トール
第三章:ダンジョン体育祭と、もみ消し教官の誕生

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第034話:轟教官の野心と、奈落のドラゴンステーキ

 


「……間違いない。あのオーパーツ鞄、そして第10階層のボスを数秒で屠った異常な戦闘力……。あいつらが、本社を壊滅させた【謎の天才チーム】だ」


 学園の特別教官室。


 とどろきは、一人モニターを睨みつけながら、血走った目で低く笑い声を漏らした。


 新興ダンジョンメジャー本社は、数日前の謎の襲撃と空売り(ショート)によって完全に機能不全に陥り、今や倒産寸前の状態にある。轟自身の出世コースも絶望的になっていた。


「だが、これは千載一遇のチャンスだ……!

 本社がガタガタになった今、俺があのEクラスのガキ共を捕らえ、あの超絶技術を独占すれば……俺が新興メジャーを再建し、世界の覇権を握るトップに立つことができる!」


 歪んだ野心で顔を歪ませ、轟はインターホンで本社の残党部隊へと連絡を入れた。


「ターゲットはE組の佐藤通、神宮寺氷華、戌井盾花、鯖江録郎の四人だ。奴らを『特別補習』と称して学園の強制転送陣に誘い込み、人類未踏破クラスである【第91階層・奈落の竜の巣】へと送り込む。お前たちは転送先で重武装して待ち伏せ、奴らの手足を撃ち抜いてでも技術を吐かせろ。ドラゴンの餌になりたくなければ、必ず口を割るはずだ」


 大人たちの身勝手で残忍な欲望が、平和なスローライフを脅かそうと動き出していた。


 * * *


「おい、Eクラスの四人。先日の実技テストにおいて、貴様らが不正な魔道具を使用したという疑いが出ている。これより学園最下層の特殊転送陣にて、特別補習(尋問)を行う」


 放課後の魔道具研究会。


 轟教官が冷酷な笑みを浮かべて部室に乗り込んできた時、佐藤通トールは特大ソファーの上で、白石さんが持たせてくれた三時のおやつ(手作りスイートポテト)を食べている最中だった。


「……五月蠅いな。不正などしていない。帰ってくれ、昼寝の時間だ」


「貴様に拒否権はない。逆らえば、この場で即刻退学だ」


 退学になれば、ペントハウスでの快適なスローライフも失われてしまう。トールは小さく溜息をつき、スイートポテトの残りを口に放り込んで立ち上がった。


「やれやれ。面倒だが、付き合ってやる」


 氷華、盾花、鯖江と共に、トールは轟に連れられて地下の特殊転送陣へと乗せられた。


 ――しかし。


 転送陣が起動し、眩ばゆい光が彼らを包み込んだ瞬間。


 轟は自らも転送陣の縁に立ち、狂気に満ちた笑い声を上げた。


「ふははははッ! 愚かなガキ共め! 貴様らが送られるのは補習室ではない!

 レベル90以上の最凶モンスターが跋扈する【第91階層・奈落の竜の巣】だ!

 そこで新興メジャーの精鋭残党部隊にたっぷり可愛がってもら――」


『トール様、転送座標の強制ハッキングを受けましたわ!』


 イシュラーナの警告が響く中、空間が反転する。


 視界が晴れた先は、むせ返るような硫黄の匂いと、マグマの照り返しが不気味に赤く光る、広大な地下空洞だった。


「な、なんですのここは……ッ!?」


「空気が、ビリビリしてます……! 息をするだけで肺が焼けそうですぅぅっ!」


 氷華と盾花が恐怖に顔を引きつらせる。


 さらに彼らを絶望させたのは、周囲をぐるりと囲むようにして銃口を向けている、十数人の重武装した新興メジャーの残党部隊。


 そして――彼らのさらに奥、マグマの海からヌルリと鎌首をもたげた、ビルほどもある巨大な【真紅のドラゴン】の姿だった。


「ひ、ひぃぃぃっ!? レベル90オーバーのエリアボス!?

 終わった、俺たち完全に終わりましたよボスゥゥッ!」


 鯖江が腰を抜かしてへたり込む。


 転送陣の安全圏(バリア内)から、轟教官が拡声器で高らかに宣言した。


「無駄な抵抗はやめろ佐藤!

 大人しくお前たちの技術オーパーツのすべてを俺に明け渡せ!

 さもなくば、お前たちの手足を撃ち抜き、そのドラゴンの餌にしてやる!」


 武装部隊が、無慈悲な殺気を放って安全装置セーフティを外す。


 生徒を平気で魔物の餌にしようとする、大人の汚い悪意。


 ――だが。


 トールの目は、轟でも武装部隊でもなく、奥で咆哮を上げる真紅のドラゴンに完全に釘付けになっていた。


「……ドラゴン、だと?」


 ほんの刹那、瞳の奥で古い記憶が疼いた。かつて言葉すら交わせぬまま刃を交え合った、幾頭もの紅い竜たちの断末魔が、脳裏を掠める。だが、その陰りはまばたき一つの間に消え去り、次の瞬間には、彼の意識は完全に「食材」としての品定めへと切り替わっていた。


「そうだ! 恐ろしいか! 恐怖に震え――」


「まさか、あの究極の食材……『ドラゴンの肉』か!!?」


「……は?」


 轟の声が裏返った。


 トールの瞳に、異世界で数多の魔神を屠った時以上の、狂気的なまでの『極上の食欲(殺意)』が発火した。


「いつか、白石殿が『究極のドラゴンステーキを焼いてみたいですね』と言っていたのだ。だが、探すのが面倒で保留にしていた最高の高級食材……。それを、わざわざお前たちが俺の目の前に用意してくれたというのか!?」


「な、何を狂ったことを言っている……! 撃て! そいつの足を撃ち抜け!」


 轟の命令で、残党部隊が一斉にアサルトライフルを発砲する。


 ――しかし。


「……俺の極上のステーキドラゴンを、貴様らの安っぽい銃弾で傷つけるな」


 ヒュンッ!!


 トールの姿が消えた。


「なっ!?」


 次の瞬間、銃を構えていた隊員の背後にトールが立ち、その太い首筋に木刀の柄尻を無慈悲に叩き込んだ。


 メキボキィィィンッ!!


「ガアアアアアッ!?」


 頸椎が砕ける生々しい音が響き、屈強な男が白目を剥いてマグマの海へと吹き飛ぶ。


「ヒィッ! ば、化け物……ッ!」


 残りの隊員たちがパニックに陥り銃を乱射するが、トールは風のように弾丸の雨をすり抜け、一切の容赦なく彼らの関節を次々と破壊していく。


 ボキッ! ギャアアアッ! メチャッ!


「五月蠅い羽虫どもめ。お前たちの血で、俺の肉が不味くなったらどうするつもりだ」


 レベル70を超えるプロの残党部隊が、ただの高校生(の姿をした歴戦の武士)によって、文字通り赤子のように手足を折られ、グラウンドのゴミのように積み上げられていく。


 圧倒的で残酷な蹂躙劇。


 数秒で部隊を全滅させたトールは、そのまま木刀を構え、咆哮を上げて迫り来る超巨大ドラゴンへと真っ直ぐに跳躍した。


「グルアアアアアアアアッ!!」


「大人しく、白石殿のフライパンに収まれ」


 木刀に込められた、極限まで練り上げられた『気』。


 トールが空中で木刀を振り下ろした瞬間、空間そのものが両断されたかのような衝撃波が走り、強固なドラゴンの首が、まるで豆腐のようにスパンッ!と綺麗に切断された。


 ドズゥゥゥゥゥンッ!!


 巨大なドラゴンの首が地面に落ち、光の粒子となって消滅する。そして後には、大企業のビルほどの価値がある【特級無属性魔石】と、赤身と脂身が完璧な霜降りを描く【最高級ドラゴンのブロック肉(数百キロ)】がドロップした。


 すかさず、鯖江の自律ドローンが急降下し、500円のリュックサックがダイソンの如き吸引力でそのすべてを全自動回収していく。


「あ……あぁ……っ」


 バリアの内側で、轟教官は完全に膝から崩れ落ち、股間を濡らしながら失禁していた。


 彼が全幅の信頼を置いていた重武装の精鋭部隊も、人類未踏破クラスの最強ドラゴンも、トールの「夕飯の食材調達ピクニック」のついでに、一分足らずで物理的に粉砕されてしまったのだ。


「……さて」


 食材の確保を終えたトールが、血の気の引いた顔の轟の前へとゆっくりと歩み寄る。


「ヒッ……! く、来るな……ッ! 俺は新興メジャーの特別教官だぞ!

 俺を殺せば、お前は社会から……っ!」


「安心しろ、殺しはせん。ただ……俺の『昼寝』を邪魔し、白石殿の『手料理を食う時間』を遅らせた罪は、きっちりとその身体で払ってもらうぞ」


 トールは無表情のまま、轟の右腕を掴み――。


 ゴキッ!


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


 腕の骨が完全に逆方向にへし折れ、轟の絶叫が奈落の底に響き渡った。


「イシュラーナ、帰りの転送陣をハッキングしろ」


『承知いたしましたわ!

 もちろん、この汚い大人の泣き叫ぶ無様な映像は、学園の裏掲示板と教育委員会にバッチリ送信しておきましたのよ!(

 ¯﹀¯ )ドヤッ』


 かくして、新興メジャーの野心を燃やした鬼教官は、トールの食欲の前に完全に物理粉砕され、社会的な死をもって学園から退場することとなった。


「よし、帰るぞ。今日は極上のドラゴンステーキの宴だ」


 最高級の食材を手に入れ、ご機嫌な様子で転送陣に乗るトール。その後ろで、氷華と盾花は「この人……やっぱり敵に回したら一番ヤバいですわ……」とガタガタ震えながらも、ステーキの魅力には抗えず、しっかりとついていくのであった。



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