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異世界帰りの最強武士、現代ダンジョン学園で底辺Fランクに偽装してスローライフを送る~昼寝と専属家政婦の極上ご飯を邪魔する大企業は、木刀の峰打ちで物理粉砕(ざまぁ)します~  作者: トール
第四章:夏休みの臨海合宿と、極楽ハプニング

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第109話:もう一人の男友達と、三人それぞれの、その後

 


 事件が落ち着いた後も、蓮司は変わらず部室に顔を出し続けていた。

「――蓮くん、これからもずっと、この部室にいてくれるんですよね?」

 盾花が尋ねると、蓮司は肩をすくめた。

「まあな。他に行く当てもないし、何より」

 蓮司は、ソファーで木刀の手入れをするトールへと視線を向けた。

「こいつと軽口を叩き合える場所は、そう多くないからな」

「――お前が言うな」

 トールが素っ気なく返すと、蓮司は愉快そうに笑った。

「トールさんに、対等に軽口を叩ける人がいるの、なんだか新鮮ですわね」

 氷華がくすくすと笑う。

「これまでは、佐藤様は少し孤独な感じもありましたから」

 白石さんの言葉に、トールは僅かに視線を逸らした。

「……悪いことではあるまい」

 その素っ気ない一言の裏にある、確かな喜びに、部室の全員が気づいていた。鴉羽蓮司という、トールにとって初めての「対等な男友達」の存在は、こうして、これからの日常に、静かに、しかし確かに根を下ろしていった。

 * * *

 決戦から二月が過ぎた、ある休日の午後。

 * * *

「――佐藤様」

 キッチンで二人きりになった時、白石さんが、静かにトールへ声をかけた。

「わたし、これからも、佐藤様のお隣で、ずっとお料理を作り続けたいと思っています」

「――うむ。それは、俺にとっても、この上ない幸せだ」

 トールの率直な答えに、白石さんは、優しく目を細めた。二人の間には、言葉にせずとも通じ合う、確かな絆があった。

 * * *

「佐藤さん」

 部室の窓辺で、氷華がトールに歩み寄った。

「わたくし、これからも、わたくしなりのやり方で、貴方の隣に立ち続けますわ」

「ああ。それでいい」

 トールは、静かに頷いた。

「お前のそのままの姿を、俺は好ましく思っている」

 その言葉に、氷華は頬を染めながらも、確かな誇らしさを胸に微笑んだ。

 * * *

「トールさん」

 盾花もまた、静かにトールの前に立った。

「私は、これからも、ただの親友として、皆さんの隣にいます。それが、私にとって一番自然な形ですから」

「うむ。お前らしい、良い選択だ」

 トールの短い一言に、盾花は満足げに頷いた。

 * * *

 白石さん、氷華、盾花。三人それぞれが、誰か一人に絞られることなく、それぞれの形で、トールの隣にあり続けることを選んでいた。ハーレムの均衡は、これまでと変わらず、しかし確かに、それぞれの絆を深めながら、穏やかに続いていくのであった。

『――皆様それぞれの想いが、それぞれの形でトール様に届いている。それでいいと、わたくしは思いますわ』

 イシュラーナの一文が、誰にも見えないところで、静かに浮かんでは消えていった。

「――蓮、お前はどうなんだ」

 その夜、二人きりになった際、トールがふと尋ねた。

「俺か? まあ、こういう賑やかな日常の隅っこで、お前と軽口を叩きながら生きていく。それで十分だ」

「――そうか」

 トールは、それだけ答えると、静かに微笑んだ。それぞれの形の幸せが、この部室には、確かに満ちていた。

 * * *

 翌日、部室では、蓮司の歓迎の意味も込めた、ささやかな昼食会が改めて開かれることになった。

「――蓮くん、これからもよろしくお願いしますね」

 盾花がそう言って頭を下げると、蓮司は照れくさそうに頭を掻いた。

「こちらこそ、世話になる。……こんな賑やかな場所、正直、五年間の中でも初めてでな」

「あら、それは光栄ですわね」

 氷華がくすくすと笑うと、鯖江も嬉しそうに箸を進めながら口を挟んだ。

「蓮さん、今度また稽古つけてくださいよ。俺、もっと強くなりたいんスよ」

「ああ、望むところだ」

 その賑やかなやり取りを眺めながら、トールは静かに目を細めた。

(――五年前は、まさかこんな日が来るとは思わなかったな)

 異世界の戦場で失ったと思っていた戦友が、こうして再び隣にいて、共に笑い合っている。その何気ない光景こそが、トールにとって、何よりの奇跡だった。

「――トール、何をニヤついてる」

 蓮司に指摘され、トールは慌てて表情を引き締めた。

「別に、ニヤついてなどおらん」

「嘘つけ、めちゃくちゃ緩んでたぞ」

 その軽口の応酬に、部室にはまた、賑やかな笑い声が響いていった。

 * * *

 昼食会の終わり際、蓮司がふと、皆に向かって改まった様子で口を開いた。

「――皆、聞いてくれ。五年間、身元不明のまま、一人でこの世界を彷徨っていた俺にとって、この部室は、本当にかけがえのない居場所になった」

「蓮くん……」

 盾花が思わず目を潤ませると、蓮司は照れくさそうに続けた。

「大げさなことを言うつもりはないが……これからも、よろしく頼む」

「――当然ですわ」

 氷華が微笑みながらそう答えると、鯖江も元気よく頷いた。

「もちろんっス! 蓮さんは、もう立派な部室の一員ッスから!」

 その温かな言葉の輪の中で、蓮司は、これまで見せたことのないほど、穏やかで満ち足りた笑顔を浮かべていた。五年間の孤独な放浪の果てに、ようやく辿り着いた、確かな居場所だった。


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