↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界帰りの最強武士、現代ダンジョン学園で底辺Fランクに偽装してスローライフを送る~昼寝と専属家政婦の極上ご飯を邪魔する大企業は、木刀の峰打ちで物理粉砕(ざまぁ)します~  作者: トール
第四章:夏休みの臨海合宿と、極楽ハプニング

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/111

第105話:常盤との対峙

 


 扉の先に広がっていたのは、古代の遺跡を無理やり改造した、異様な研究施設だった。中央には、巨大な魔法陣を刻んだ装置が鎮座し、そのそばに、常盤修造が静かに佇んでいた。

「――ようこそ。まさか、本当にここまで来るとはな」

 常盤は、感情の読めない笑みを浮かべた。

「常盤修造。お前の狙いは、分かっている」

 トールが、静かに木刀を構える。

「異世界へのゲートを利用し、あの世界を国家の資源として利用する。そして、俺や蓮を、その道具として扱おうとした」

「道具、とは人聞きが悪いな」

 常盤は、肩をすくめた。

「私はただ、この国の未来を考えているだけだ。異世界という、無尽蔵の資源と技術の宝庫を、いつまでも一部の学生や民間企業の道楽に留めておくのは、国家的な損失だとは思わんかね」

「――お前の言う"国家の未来"とやらのために、盾花の母君の工房や、氷華の実家、結衣の保育園まで、人質に取ろうとしたのか」

 トールの声に、静かな怒りが滲んだ。

「必要な犠牲だ。大きな目的のためには、多少の……」

「黙れ」

 蓮司が、剣を抜きながら鋭く遮った。

「五年前、俺を利用しようとした時も、お前は同じことを言っていたな。"必要な犠牲"、か。反吐が出る」

 常盤は、蓮司の姿を見て、僅かに目を細めた。

「――ほう。生きていたのか、鴉羽くん。それは重畳。ならば話は早い、今からでも――」

「もう遅い」

 トールが、静かに、しかし確かな圧を込めて言い放った。

「お前の計画は、既に東城殿を通じて、しかるべき筋に伝わっている。ここでお前を止めれば、それで終わりだ」

「そうか。それは、少々予定が狂ったな」

 常盤は、静かに笑みを消すと、装置の起動スイッチに手をかけた。

「だが、ゲートさえ起動してしまえば、こちらのものだ。異世界への道が開けば、私を止める理由も、もはや誰にもなくなる」

「――お前という男は、どこまでも身勝手だな」

 氷華が、怒りを滲ませた声で言い放った。

「わたくしたちの平穏な日常を、勝手な理屈で踏みにじろうとする。そんな身勝手、絶対に許しませんわ」

「私も、絶対に許しません」

 盾花も、大盾を構えながら声を上げた。

「――やめろ!」

 トールが叫んだ瞬間、常盤は無情にもスイッチを起動させた。

 中央の魔法陣が、禍々しい光を放ちながら、暴走的な唸りを上げ始めた。

「――しまった」

 蓮司が舌打ちすると、常盤は恍惚とした表情でその光景を見つめていた。

「これでいい。もはや、誰にも止められはしない」

 その言葉と共に、遺跡全体が、これまでにない激しい振動に見舞われ始めた。

「常盤! お前は、自分が何をしようとしているのか、分かっているのか!」

 トールが怒声を上げると、常盤は恍惚とした表情を浮かべたまま、静かに答えた。

「無論だ。歴史の転換点に、自らの意志で立ち会おうとしているだけのこと。……お前たちのような子供には、分からんだろうがな」

「――子供、か」

 蓮司が、剣を握る手に力を込めながら、静かに笑った。

「異世界の戦場で、何度も死線を潜り抜けてきた俺たちに向かって、よくもまあ、そんな台詞が吐けるものだな」

「経験の量など、大義の前では取るに足らんことだ」

 常盤は、感情の読めない声でそう言い放つと、暴走する魔法陣の中心で、静かに佇み続けた。

「お前の"大義"とやらのために、どれだけの人間の平穏が踏みにじられてきたと思っている」

 氷華が、怒りを滲ませながら杖を構えた。

「盾花のお母様の工房、わたくしの実家、結衣ちゃんの保育園――全部、あなたにとっては、ただの駒でしかなかったのでしょう」

「その通りだ。国家の未来のためには、当然の犠牲だ」

 常盤の淡々とした返答に、部室の全員の怒りが、確かな臨界点に達しようとしていた。

「もう、十分だ」

 トールが、静かに、しかし確かな覚悟を込めてそう言い放った。

「お前の暴走を、俺たちが今ここで、必ず止めてみせる」

「止める、だと?」

 常盤は、初めて僅かに表情を歪めた。

「この期に及んで、まだそんな青臭いことを言うのか。……いいだろう、見せてもらおうか。お前たちのその決意とやらが、どこまで通用するものか」

 常盤がそう言い放った瞬間、施設内に配置されていた残存兵力が、一斉に武器を構えた。

「――皆、油断するな」

 トールの声に、一同は静かに、しかし確かな戦意を込めて頷いた。暴走する魔法陣の唸りが、遺跡全体を揺らし続ける中、最後の戦いの幕が、静かに切って落とされようとしていた。

「蓮、氷華、盾花、鯖江。それぞれの役目を果たせ。……俺は、常盤を直接叩く」

 トールの指示に、一同は素早く頷き、それぞれの持ち場へと散っていった。異世界帰りの最強武士と、その仲間たちによる、最後の決戦が、今、ここに、確かに始まろうとしていた。誰一人として、退く者はいなかった。それぞれの覚悟を胸に、一同は、静かに、しかし確かな一歩を踏み出していった。この地下深くの奈落の底で、平穏な日常を守り抜くための、最後の戦いが幕を開けようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。