団長の勘違いは進む sideギルロイド
「マグノリア、話しがある。残れ。」
新入りの団員達の鍛錬が終わったあと、
俺はミカ・マグノリアを残らせた。
2階から新入り達の鍛錬を見学していたら、
マグノリアと稽古をしていたギュンターが、マグノリアを見つめたあと、何か話して顔赤くしていた。
ギュンターに何か言われたマグノリアが、
何か焦ったような、慌てた反応をした。
顔を赤らめるギュンターと、困っているマグノリア。
俺は夜中のマグノリアの話しを思い出す。
(・・・大丈夫かアレは)
「団長、何の御用でしたでしょうか?」
稽古を終えたマグノリアが俺の元に来る。
自分より頭1つ分以上小さいマグノリアのマリンブルーの瞳が、
俺を見上げ、視線が交わる。
体をうごかしたからか、青白い肌はほんのりと薔薇色になっている。
「マグノリア、ギュンターとの稽古は大丈夫だったか?」
「はい?」
「ギュンターと会話してた時、困っていただろう?」
「え?あ、ああ〜あれですか・・・あれは、
ギュンターが、その・・・僕が女に見えるって言われたんすよ、」
「女に見える・・・?」
そう言われ、俺はマグノリアをよくよく見つめる。
シャープな小さい顔を彩る金髪は、細く柔らかな質感で、他の男に比べたらサラサラとはしているが、少々傷んでいてザックリと短く切り揃えられている。
少し栄養不足そうな青白い肌は少々荒れているがなめらかで、細かな傷痕がいくつかある。
アーモンド型の瞳は長い金色の睫毛に彩られたマリンブルー。
血色はくすみ気味な、よく見ると果実のような赤い唇・・・て、俺は何を考えているんだ。
体格は華奢な方だが、それなりに鍛えているのがわかる。(栄養が足りてなさそうな華奢さではあるが)
中性的な外見ではあるが、
貴族令嬢や町娘達と比べたら、振る舞いも話し方もかなり男らしく、声も男にしたら確かに少々高めだが、少年的な声に少年的な容姿だ。
確かに、一目見た時は少し、美しいとは思ったが。
(少々見惚れたのは秘密だ)
「・・・あ、あの、団長、」
マグノリアが緊張しているのを見て、ハッとした。
気付けば俺は、随分とマグノリアの顔に、自分の顔を近付けて見つめていた。
「すまん、近かったな、」
「いや、心配おかけしました、大丈夫ですから僕は。」
「ああ、てっきり、ギュンターに言い寄られて困ってでもいるのかと思ったんだが、なら良いんだ。
何かあれば相談しろよ、」
「あはは、アリガトウゴザイマス・・・」
違かったなら良い。
だが、女性に見間違えられ見惚れられることもあるとなると、この男所帯では、やはり気を付けた方が良いだろう。
話しが終わり鍛錬場の入口へ向かうと、
マグノリアとよく一緒にいるイシス・リオガルドが居た。どうやらマグノリアを待っていたようだ。
午後は王城への登城の用事がある。
俺は準備するために執務室へ向かうと、
グリーンがかった蜂蜜色の髪が見えた。
副団長のエヴァン・キースだ。
先ほどまで新入りの稽古の監督をしていた。
「待ってたぜギルロイド。」
「エヴァン、どうした?」
「いやさ、ちょっと気になってな」
エヴァンは俺と同期の騎士で、フレンドリーな男だ。
騎士団に入ったばかりの頃、
王弟である俺に、分け隔てなく接してくれて仲良くなった友人だ。
「さっき、ミカ・マグノリアを残らせて話していただろう?何の話ししてたんだ?」
「ああ、そのことか。」
マグノリアが男にモテるから騎士団で心配だ、なんて話し、しても良いのだろうか。
流石に個人のプライベートに関わる話しだしな、、
いや、でもマグノリアの安全を考えると、
副団長のエヴァンも知っていた方が、より気にかけてやれるかもしれない。
「実はな、マグノリアは今まで、男に言い寄られることが多かったようでな。だから、騎士団で何かあったら相談しろよ、と言ったんだよ。何せここは男だらけだからな。」
「男に??ふーん。そりゃ大変だな。女の子からモテるならまだしも、男にモテるなんて。はは、まあ確かに、マグノリアは美人っちゃ美人な見た目してるもんな」
「ああ、一応個人のプライベートに関わる話しだから、他言無用で頼む。お前も気にかけてやってくれ。」
「了解。しかし、ずいぶんマグノリアを気にかけてるんだな。珍しいな、そんなにマグノリアと話ししてたのか?」
「あぁ、まあ・・・な。
何というか、アイツは、・・王族の俺を、あまり怖がらないからな。」
初めて挨拶した時からそうだった。
騎士としての礼儀ある態度は取るが、
俺を恐れることなく、真っ直ぐ俺を見つめ、ほがらかに言葉を紡いでいた。
俺の寝室で目が覚めた時も、
臆することなく、俺と当たり前に会話をした。
軍神だの仰々しいアダ名に、この大柄な体格に強面の容姿。騎士団長という肩書きに、王弟という身分。
初対面の人間なら恐れられることが多いのに、
俺よりずっと小柄で儚げな雰囲気のアイツは、臆することなく、
視線を返し、ほがらかに話す。
「それにアイツは何かと目立つからな。
入団初日から、マーティンを虐めてたアッガス達を止めたギュンターに加勢したって話し聞いたろ?昨日はアッガス達からギュンターを助けたあと、励ましていた。」
優しい言葉をかけて。
「あーね、イシス・リオガルドだっけ?マグノリアと一緒にいる銀髪のやつ。2人とも美形だから、一緒にいると目立つよな〜、騎士団の事務の女の子騒いでたぜ、」
「それに、剣術や体術の動きも悪くない。このまま鍛え続ければ良い騎士になるだろう」
「お、期待してるねえ団長殿」
そう、期待している。
華奢で小柄で、青白い顔に中性的な容姿故のマグノリアは、一見あまり強そうには見えないが、
歩き方や目の動き、身のこなしが、新入りにしては中々良い。
さっきの鍛錬でも、騎士の家系出身のギュンター相手に、苦戦せず打ち合っていた。
最後は負けていたが、まるでわざと負けたかのように見えた。そんな訳はないだろうがな。
「それじゃあ、俺は登城の準備をする。騎士団を頼んだぞ」
「はいよ、」
ギルロイドが執務室に入ったあと、
1人廊下に残るエヴァンは、
ニヤリと、何やら新しいオモチャを見つけた子供のように笑った。
「ミカ・マグノリアねぇ・・・」




