団長の寝室にて、あらぬ誤解
(一応、暗殺対象でもあるんだけど、)
頭の中で、今の状況を巡らせる。
団長の寝室に2人きり。今はまだ夜中。
廊下にも人の気配は無く、
暗殺には絶好の機会だが、
「まだ水飲むか?」
「あ、いえ、もう大丈夫です、すみません、」
私のコップを受け取り、キッチンへと向かう。
ていうか、私態度がくだけ過ぎだな。
新入りの騎士団員なら、軍神王弟の強面騎士団長相手には、本来もっと畏れ敬う態度を取るだろうし。
それが、規則を破り寝こけて、団長に運ばれたうえに、ベッドを譲って頂いて夜中に水まで貰い・・・
(素行不良で騎士団を追い出されては敵わない)
私は急いでベッドから降りて、立ち上がる。
キッチンでコップを洗う団長の背中を見る。
(・・・この人、私のこと警戒してないのかな?)
夜中に寝室に入れた相手に背中まで見せて。
私は、寝間着の懐に忍ばせた短剣に触れる。
騎士団の支給品の短剣だ。
王弟なら、もっと警戒するものじゃないだろうか。
キッチンに立つ団長の背中を見つめる。
(こんなにすんなりと隙を見せてくれるとはな)
もっと時間をかけて、団長のお近付きにならないといけないと思ってたけど、まさかもう寝室に入れるとは。
しかし、相手は私を男と思っているから気にならないだろうけど、あんなガチムチの色気ムンムンイケオジの寝室に深夜に2人きり。
(うーん、流石に少しドキドキする)
ふと、私はある可能性に思い当たり、
ピコーンと頭に電球が浮かんだ。
(あ、もしかして団長って、性欲が男にも向く感じ、、?)
だとしたらこんなに甲斐甲斐しい理由が納得出来る気がする。
(ふむ、もしそうなら、色仕掛け作戦で行くべきか、、?いや、寝室に何か弱味はないか探すか・・・)
キョロキョロと周りを見ていると、
棚に飾られた小さな瓶を見つけた。
中には、マグノリアの花が入っている。
「・・・これは、」
「昔、人から貰ったんだ。魔法で綺麗なまま保たれるようにしてあるんだとさ」
「魔法で?そうなんですか・・・」
懐かしそうにマグノリアの小瓶を見つめる団長の顔は、慈しむような、それでいて、心なしか少し悲しげにも見える。
今この人、隙だらけだなぁ。
短剣に手を伸ばすか考えたが、
諦めた。
(何か弱味でも探るか・・せや!!)
「その、団長って・・・男性も恋愛対象なんですか?」
「は?」
ポカーンとした団長に、
「いやあ、こんな夜中に、自分のベッドに僕を寝かせて甲斐甲斐しく世話してくれるなんて、
てっきり、男も恋愛対象になるからかな〜、なんて・・・」
そんな私に、団長は呆れたようにハァ、とため息をついた。
「あのな、俺は恋愛対象は女だ。男は恋愛対象外だ。
そんなつもりじゃない」
「そうでしたか、」
「下心があるように見えたか?」
心外だと言わんばかりの団長に、私は言い訳をする。
「いや、その、今まで、出会って間もないうちから、妙に親切にしてきた男は、大体そういう目で見てくる奴だったので、つい・・・すみません、団長を疑ったわけではなくて、」
関係性が浅い内から妙に甲斐甲斐しいやつは、大体下心があるものだ。
「・・・男から狙われることが多いのか?」
やべ。
眉間に皺を寄せ、驚愕の表情でこちらを見る団長。
「ああ、そのですね、いや、あの、そのお・・・」
やべえ、言い訳どころかますます変な方向に話しが拗れた。
今、男の姿の自分がそんなこと言ったら、
男に狙われることが多い男だと言ってるようなものじゃないか。
変な誤解を解かなければと焦り更に言い訳を考えると、団長は真剣な顔で、
「ここは男だらけの騎士団だ。大丈夫か?言い寄られて困ってたらすぐに相談しろよ」
「あ、はい、、、アリガトウゴザイマス」
私は諦めた。




