愛してる、を、月が綺麗ですね、と誰かが言った。
お楽しみの昼食、
食堂に行ったら、丁度ギュンター君とマーティン先輩がいた。
せっかくだから皆んなで食べようとなり、
4人で席に着いた。
「今日は大丈夫でしたか?マーティン先輩」
「大丈夫だよ、3人のおかげかな、今日は全然絡まれなかったよ、」
「なら良かったっす、」
今日は魚の定食を選んだ。口に入れると魚の味付けが実に美味い。
「ここの飯は美味いなあ〜、うんめうんめ、」
「ミカは細いからな、たくさん食えよ」
「イシス君とミカ君だよね?2人は仲が良いね、」
「俺達、同郷の出身なんすよ。幼馴染なんです。」
「そうなのか、出身はどこら辺なんだ?」
「俺達は◯◯らへんの出身、ギュンターは?」
「俺はー・・・」
お互いの出身地や自己紹介で盛り上がる。
私の前に座るギュンターの食べっぷりが凄い。
「ギュンター君凄い食べるね〜、」
「オーガスタスで良い、・・・ミカ、」
何故か少し照れながら言うギュンター君。
「ああ、オーガスタス、僕のこともミカで良いよ、」
ニコッと笑うと、オーガスタスの顔が赤くなりギュッと中心にすぼまった。
「笑顔が天使・・・」なんて呟きがマーティン先輩から聞こえた。
イシスがプッ、て笑う。
うーん、変な奴らだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
夜中、ふと目が覚めて、
窓の外を見た。
月が綺麗なのを見て、
(外にでも出るか)と思い、コッソリと宿舎を出た。
本当なら、消灯後は外に出るのは規則違反だが、
まあ見つからなければ平気だ。
外に出て、月が美しく見惚れた。
夜風が吹き、風が運ぶ草木の匂いが爽やかさが、
この数日の忙しさを癒してくれるようだった。
中庭にある池の傍にしゃがみ込み、水面に映る月を眺める。
膝に顔をうずめ、目をつぶる。
すると、ウトウトとしてきて、
夢うつになった。
夢うつつの中、夢を見たような気がする。
幼い女の子が、
『月が綺麗ですね』
と、隣に座る男に言って、男が微笑んだ。
何だか懐かしい夢に沈むミカエラの肩に、
大きな上着がかけられ、ミカエラの体が持ち上げられた。
ウトウトとしていたミカエラをお姫様抱っこした人物・・・ギルロイドは、
「全く・・・夜中に外に出て、池の傍で寝こけるとは。気が抜けすぎだ」
と呟き、ミカエラを運んで行った。
ミカエラは、夢うつつから目覚め、
目をショボショボさせながら、
「イシス、今何時・・・」
「・・・今はまだ夜が明けていない。夜中だ」
低くかすれるような低音イケボの囁き。
「そっか、じゃあもう一眠りしてる、、、」
ん?
イシスにしては声が低いイケボ、そもそもこのベッドの匂いは、、
顔を横に向けると、
デスクライトだけがつけられた薄暗い部屋の中で、
自分の真横のソファに、砕けたラフな格好のギルロイドが横たわっていた。
「?!!✕◯✳%≠≠○?!ガッゴファ◯✕#@=えああ!??ゲフォンッゲッフン」
驚きのあまり盛大にむせた。
「いや落ち着け、マグノリア」
落ち着けと言われましても。
目が覚めたら団長の部屋だなんて、落ち着けないでしょう。
今の団長は、昼間は後ろで緩くまとめている髪も、今はハーフアップでザンギリ髪があちこちに跳ねている。胸元が開いたラフな部屋着の団長を、デスクライトだけが照らす薄暗い部屋で見る破壊力。
かすれた低音イケオジボイス。
破壊力がヤバイ。
何だこの色気の暴力は。
並の女が色仕掛けするより、この人の色仕掛けの方が殺傷能力が高いだろうとか、頭が急回転している。
ギルロイドが近寄り、ミカエラの背中をさする。
緩く胸元が開いた服を着る団長から香る少し汗ばんだ匂いに、
あー、ベッドの匂い、団長の匂いだったんだ、団長の胸板すげ、胸毛も少し生えてる、、ガチムチイケオジ、、、なんて間抜けなことを考えながら、
混乱しむせていると、
団長が水を差し出してくれた。
「すみません・・・団長、ご迷惑を、」
これ絶対めちゃくちゃ怒られるやつだな、と、
ションボリと水を飲んでいると、
「・・・フッ、」
え、団長が笑った?
「くくく、全く、面白いなお前は。」
「へい?」
「いやな、昨日執務室で個別で挨拶した時も、
どんなやつでも大抵は俺の前では口数が少なくなるのに、
お前は華奢な割に、俺と普通に会話するし、
存外肝の太いやつだなあと思っていたら、
マーティンを助けたギュンターの加勢に入ったとか聞いたり、
アッガス達に絡まれてたギュンターを励ましてたりと、あちこちで活躍してるもんだから、
何か面白い奴だなあ、って思ってたんだよ。」
昼間の職務中に見る姿とは思って、飲み屋にいるオジさんみたいな気さくな様子のギルロイドに、
ミカエラは目をパシパシと瞬きする。
「そしたら、入団2日目にして、規則を破り夜中に宿舎から出てるわ、そのまま寝こけるし、
色々と規格外だね、お前」
ヤバイ!!規則破ってたのをよりによって団長に見つかったのか。
「あ!す、すみませんでした、規則破って」
「規則違反だが、マーティンやギュンターを助けた分で、今回は見逃してやるよ、」
ギルロイドの言葉に、ミカエラの心が温かくなる。
(この人、人をよく見てるんだなあ・・)
あ、そうだ、
忘れてたけど、ここ団長の部屋だ。




