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人に頼ることも騎士の資質



「にしても優しいなミカは」

「んえ?」


夜、自由時間が与えられ、私とイシスは王都を歩き、屋台で晩御飯を食べている。


「マーティンのことを助けただろ?」

「ああ、あれはねぇ、せっかくの昼飯時に、あんなことされると美味しく食べられないからさ。虐めとかダサいし」

「あはは、お前らしいなミカ。」

「イシスだってマーティン先輩のこと助けたじゃん。」

「あれはな、マーティンの家系が、そこそこ良い家系だから利用価値があると思ったからだよ。」

「はは、イシスらしい。」


ーーーーーーーーーーーーーーー


夜、宿舎に戻り、

ベッドに寝転がる。


(ギルロイド団長の弱味ねぇ・・・)

さて、どうやって見つけようかと、あの手この手を考えながら、ミカエラは眠りについた。



翌日、

鍛錬が終わり、休憩時間にイシスと騎士団の敷地内を歩いていた。

任務中に何かあった際、脱出経路などの事前確認も兼ねてブラブラしていると、


建前の影の、人気が無い場所に行ったあたりで、

物音が聞こえた。


人が数人いて、何やら揉めている。

「昨日はよくも俺に恥をかかせやがったなあ?新入りぃ、」


おお、いかにも小説に出てきそうな三文悪役のセリフだな、と思いながら覗くと、


昨日、食堂で揉めてたアッガス男爵令息達と、熱血君が居た。

居たっていうか、アッガスにより、熱血君が壁に押し付けられ襟を掴まれてる。


「なあイシス、アレッてさ、、小説とかで見る、校舎裏に呼び出しって奴じゃない?アレ」

「あー、放課後に校舎裏で待ってるってやつ?」


まあ今は放課後ではなく、まだ昼前なんだが。


「アンタがカンニングしてるところをマーティン先輩が見つけてバレたから、逆恨みで虐めてるんだろ?自業自得だろ」

「新入りが生意気言ってんじゃねえよ!」


アッガスが熱血君の顔を殴る。


「うわー、手ぇ出したよ。」

「見た目通り短気な奴だな」


熱血君なら、その気になれば返り討ちに出来る気がするのだが、3対1じゃ厳しいのだろうか。

あの成金バカのアッガスも、体格だけなら熱血君よりあるからな。


助けに入るべきかどうかと、

さてどうしたもんかと悩んでいると、

イシスが、良いことを思いついたと前に出た。


「アッガス先輩!お久しぶりです、覚えてますか?」

「あ?何だお前、」

「以前、先輩のご両親が主催のパーティーでお会いしたんですけど、覚えてますか僕のこと。」

イシスがにこやかに語り紡ぐ。

「パーティー?」

「はい、ああ、覚えてなくても無理ないですかね。先輩のご両親のパーティーはいつも賑やかで参加者も多いですから。でも、商才目覚ましいと評判のアッガス男爵家の先輩と会えるのを、僕楽しみにしてたんです。僕の父親からは、アッガス先輩は将来有望な方だから、是非先輩の騎士団での振る舞いを参考にしなさいって言われてて、、アッガス先輩から学べたこととか、是非先輩のお父上にも話したくて、」


イシスが、よくもまあペラペラと出来事を、さも本当かのようにまくしたてると、

アッガスが、マズイ、といった顔をした。


「そ、そうかよ、まあ、今後も父上と仲良くしたいなら、俺に対する態度はわきまえるんだな、」

そう言い残して足早に逃げていくアッガス。



「イシスは口が上手いなホントに」

「アイツみたいな親の権力を振りかざしている奴は、親の顔色をかなり伺うタイプが多いからな。

こっちが、アイツの親とそれなりに面識があって、騎士団での振る舞いを見ている相手だと思わせれば、

とりあえず俺の前ではあんま無茶出来ないだろってね」

「なるほど、さすがだなイシス・・」    


「あの、2人とも、」

そうだ、熱血君は殴られてたんだった。

「大丈夫か?ギュンター君」

「ああ、あれ位なんてことない。昨日も今日も、また助けてもらってしまったな。すまない」

「良いって。でもさギュンター、正義感強いのは良いけど、あんま無茶すると、また今日みたいなことが起きるぞ?」

「・・・わかってる。1人で解決出来る力も無いのに、正義感だけで行動しても、こうやって人を巻き込んでしまっては本末転倒だ。」


(ホント真面目だな〜この人は)


「んー〜・・・、別にさ、1人で解決しようとしなくて良いと思うよ?」

「え?」


熱血君が顔を上げる。

「ほら、騎士は、基本集団で行動するもんだろ?

1人で解決しなきゃならない場面もあるだろうけど、

大抵はチームプレイだしさ。

だから、周りの人に頼るとかも、ありなんじゃない?」


そう言うと、熱血君・・・ギュンターは、

困惑したように私を見つめたあと、


「頼る、か・・。頼る・・・ううむ・・・、

騎士たるもの、強くあれ、と言われてばかりだったから、頼る、か・・・」



「そうだ、頼れば良い。」

「「!!」」

背後からかけられた声に、私とイシスは素早く振り向いた。


いつの間にか、私達の後ろの少し離れた場所に、

ギルロイド団長が立っていた。


(気配を感じなかった・・・)

気配を察知出来なかったことに驚きつつも、

私はすぐに、「お疲れ様です団長、」と頭を下げた。


「マグノリアの言う通りだ、騎士団はチームプレイで協力しあいながら、任務を遂行する。

お前たちは、騎士団に入団したが、まだスタートラインだ。これから、同じ騎士団の団員と共に切磋琢磨しながら、座学や実技、実地訓練を重ね、騎士として成長していくのだ。

だから、その中で、他者に頼ることを覚えていけば良い。」


ギルロイドの、淡々とした、けれど温度のある確かな言葉に、

ギュンターは泣きそうな顔になったあと、

「ありがとうございます!!」と、頭を下げた。


「マグノリアとリオガルド、ギュンターを一応、医務室に連れて行ってやれ、」


「「はい!!」」



その後、ギルロイドの指示通りギュンターを医務室に連れて行き、私達は訓練に戻った。



夜、部屋にて。

「今日も晩御飯美味かった〜、

にしても、全然気配感じなかったね、団長」

「ああ、草を踏みしめる音すらしなかった。バケモンかアイツ」 


バケモンは言い過ぎな気もするが、

ギルロイドの気配の消し方は、並大抵のものじゃない。


「さすが、若くして騎士団長になった男だよね。やっぱ凄いわ」


けれど、彼が若くして騎士団長になったのは、

能力の高さだけでは無いのだろう。

昼間、ギュンターにかけた言葉。

威圧感な振る舞いをすれど、騎士の卵を導く存在として、温かな情があった。


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