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熱血君と文官先輩


何の騒ぎだ?と声がした方を見やると、


「ええ?何だよ新入り君、」

「弱い者虐めなんて人聞き悪いな〜」

「そこの眼鏡君が勝手に転んだんだよ〜、なあ?」


(あ、あれ、さっきの熱血君だ)


何やらニヤニヤした笑いを浮かべる先輩らしき3人組と相対しているのは、団長との挨拶でミカエラの前に挨拶していた熱血君だ。


熱血君の足元には、丸眼鏡をかけたオカッパの男性騎士がアワアワと、床に散らばった食器を集めている。


「いいや、俺は確かに見ていた!貴方方が、この方に足を引っ掛けて転ばせたのを!」


(なるほど、虐めってやつか)


「あの3人組、資料で見たな。

一番デカいやつが、アッガス男爵家のザガードだ」

「あー、あの騎士団員一覧の問題児リストに載ってたやつか。成金で金で爵位得た家、」

イシスは一度見ただけで資料の内容を大体は記憶出来るし、思い出すのが早い。頭の回転が早い奴だ。

入団決定後に、組織から渡された資料の中にあった、騎士団員一覧に載っていたな〜そういえば。

「後ろの2人はその腰巾着だ」

「てかさ、あれ助けた方が良いかな」


私はガタリと立ち上がり、5人の元へ歩み寄る。

「あの〜大丈夫すか?」


えへへ〜、と近づくと、熱血君が私に気づくなり、またガン見してくる。

何なんだコイツは。


下手に4人を刺激するのもアレだと思い、

私は床に倒れる丸眼鏡の男に近寄る。


「大丈夫すか?今拭くもの持ってきますね。」

「へ?あ、て、天使・・・?」

丸眼鏡さんが何か呟いたが、私は雑巾を取りに行き、

汚れた床を丸眼鏡さんと一緒に拭く。


周りがザワザワと、「あの成金男爵、まーたマーティンを虐めてんのか」と誰かが言うと、

ザガードが「チッ」と舌打ちし、


「覚えとけよ新入り、」と、熱血君に耳打ちして去った。


「マーティン先輩、大丈夫ですか?」

イシスがマーティンに手を差し出す。

「あ、ありがとう、、」


(マーティン?あ、この丸眼鏡さんの名前か)


「僕の名前知ってるの?」

「はい、マーティン先輩って、去年の騎士団に入る試験で座学トップでしたよね?だから俺覚えてて」

ペラペラと、「先輩を尊敬する後輩」を演じながら喋るイシス。

相変わらず口が上手い。

丸眼鏡さん、、もといマーティン先輩は、「そ、そうなんだ、ありがとう、」と照れ臭そうにする。


イシスは裏社会に入らなければ、役者にでもなれただろうな、と、私はイシスの演技っぷりに白々しく笑いながら拭いていると、


「すまない、ミカ・マグノリア・・だったよな?」

熱血君がバケツを持ってきて、床を拭く。


「え?ああ、えっと君は・・」

「オーガスタス・ギュンターだ。助けてくれてありがとう。」

「ギュンター君か。いいえ、」



「3人共、本当にありがとうございました」

マーティン先輩が、私達に頭を下げる。


「いいえ、にしても、大変でしたね。」

「いつもあんなことしてくるんですか?アイツらは」

「いや、、去年、アッガスと同じ座学のクラスの時に、アッガスがカンニングしてるの見かけてビックリして声上げたら、そのまま監督の先生が気付いてさ。それからなんだよね、たまに嫌がらせしてくるようになって」

「ただの逆恨みじゃないですか!何で退団にならないんですか?!あんなやつが」

熱血君が怒る。

「アッガスの家は多額の寄付金を騎士団に入れてるからさ、金に物を言わせて作った人脈もあるし、強く言えない人も多いんだ。」

「でも、騎士道精神に反しますよあんな振る舞いは」

「仕方ないんだ。虐めに勝てる人間じゃないと、この先やっていくのも難しいから、よほどの虐めじゃない限りは、自分で乗り越えるしかないってのはわかるしさ。あ、、、けど、新入りの君たちに助けられて情けなくてごめんね、」

マーティン先輩が、申し訳無さそうにする。



「情けなくなんかないっすよ。」

「へ?」

「情けないのは、3人で1人に寄ってたかて嫌がらせする奴らの方ですよ。

マーティン先輩は何も悪くないんだから、情けなくなんかないっすよ。3対1で虐めるアイツらがダサいんすから」

私がそう言うと、マーティン先輩は目をシパシパさせて私を見つめる。


まあ男だらけの騎士団は、弱肉強食になり気味なのだろうけど、マーティン先輩は文官の騎士らしいし、

武官の騎士3人に囲まれたら力で押し負けるのも無理はない。

何だかんだ身分や力が物を言う貴族社会では、

多少の嫌がらせは自力で乗り越える強さも必要なのも理解は出来るが、

それはそれとして。




(ああいう奴らムカつくしな。)

私は、幼少より裏社会に身を置いてきたから、

自分が真っ当な倫理観を持ち合わせているかどうかは微妙だが、

寄ってたかって弱い者虐めをしてる光景は飯が不味くなる。



ん?マーティン先輩の目がウルウルしている。

「・・・本当に天使みたいだ」

「はい?」

何やら感動したように、手を組み、こちらを見つめるマーティン先輩。


違う方向からも視線を感じて振り向くと、

熱血君が私をガン見していた。


何なんだコイツら。

「さて、午後はそれぞれの鍛錬がありますし、そろそろ行くかミカ、」

「ああ、そうだな」








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