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団長にお近付きに


「あ〜〜〜騎士団入って以来の1番のピンチだった。」


夜、私はベッドにボスン、と沈んだ。


「よくバレなかったなお前」

「ホントだよな。もう駄目かと思ったよ。危なかった」


窓の外からは、今日も元気よく、オーガスタスが木剣を振る音が聞こえてくる。

よく耳を澄ますと、ザガードの声も聞こえ、「ミカーーー!!」と、私の名を叫んでる。

それを聞いたイシスが笑っている。


(夜にやかましいんじゃ、あの2人)






翌日、

団長に話しかけられた。


「エヴァンから聞いたぞ、俺に相談て何だったんだ?」

昼休みに団長の執務室に忍び込んだときに、

私、エヴァン副団長に「団長に相談があって」って言ってたなそういえば。


(相談・・・別に無かったんだけど、どうしよう)

貴方の弱味を教えてください、なんて言えないしな。


咄嗟に思いついた嘘を言う。

「その、僕、団長みたいに強くなりたくて、

団長の強さの秘訣を知りたいな〜、なんて」


「強さの秘訣か・・・」

団長が顎に手を当てる。



「ミカは騎士団長になりたいのか?」

「騎士団長にというか、ギルロイド団長みたいになりたい、ですかね」

それを言うと、ギルロイドが照れ臭そうに笑う。


「ふっ、そんなふうに思ってくれてたのかお前、」

少し困ったような顔で微笑むギルロイド。

ギルロイドの切れ長な目が柔らかく細められ、優しげな笑顔だ。


(こんな優しく微笑んだりするのか)

普段の印象とはガラリと変わる。


「強さの秘訣か。俺はひたすら鍛錬に打ち込み続けてきただけだから、あまり参考にならんかもしれんが。

食事と、鍛錬と、睡眠と・・」


(食事かあ。私も、食事はしっかり意識するようにしてみるか。)

「団長が、野外訓練で魔獣をぶっ飛ばしたの凄かったです!僕の細腕じゃ難しいかもしれないですが、」

「ミカもそれなりに強いんだから、目指してみれば良いさ」


(流石にあの丸太のような腕にはなれないだろう)


「だがまあ、個人でやる鍛錬の仕方のアドバイスくらいは出来る。いつでも相談しに来い」

「ありがとうございます!」



(よっしゃ!団長のお近付きになるって目的、少しは前進したかな?)


「僕が鍛錬するところを見て欲しいです、アドバイスとか欲しくて」

「ああ構わないぞ、」



こうして、私は夜、風呂に入る前の個人でやっている鍛錬を、団長に見てもらうことになった。


室内の稽古場で、木剣を持ち素振りをし、団長を待つ。


「待たせたな、ミカ」

稽古場の扉が開き、団長が来た。

「団長、すみません夜に」

「構わん、」

団長が近付いてきて、ふわりと石鹸の香りがする。

(ああ、お風呂上がりだからか)


まだ少し湿った髪を下ろしたギルロイドのいつもとは違った雰囲気に、ミカエラは少しドキドキした。


(ガチムチ強面イケオジの風呂上がり・・・事務の令嬢達が見たら気絶しそうだな)


ギルロイドは見た目の怖さから、エヴァンやイシスのように、令嬢達に群がられていることは少ないが、

ギルロイドの逞しい体躯や強面に、「獅子軍神様、今日も素敵、、」と、ときめく女性は少なくない。


(王弟という身分が無ければ、もっと気軽に言い寄る女性は多かっただろうなぁ)と思う。


「じゃあ、僕が普段やっている稽古をお見せしますので、アドバイスお願いします、」


ギルロイド団長が頷き、私は剣の素振りをしだす。

人型に束ねられた藁に剣を打ち込んだり、

蹴りやパンチを繰り出したり、

筋トレをしたり。

いつもやっている内容で鍛錬をし、一通り終わったあと、団長がアドバイスをくれる。


「ミカは身のこなしが軽やかだから、それを邪魔しない筋肉のつけ方をした方が良いと思うが、どうだ?」

(なるほど。それは盲点だった。)


「じゃあ、そのやり方で鍛錬してみたいです!」

「わかった、じゃあ今から説明するから・・・」


団長が手本を見せてくれ、私がそれの真似をする。

「ありがとうございます団長!これからこのやり方をやってみます!」

「ああ、頑張れ。・・ふふっ、しかし、お前は、教えたことを楽しそうに真似するな、」


そんなに楽しそうに真似してただろうか。

(団長の教え方がやる気が出るっていうか、だからつい楽しんでしまった・・・)

「あはは、更に成長出来ると思うと、楽しくて」

「そうか、・・・ミカを見てると、ある女の子を思い出す。

昔、俺に稽古つけて欲しいって言って、教えると、楽しそうに稽古する女の子が居たんだ」

「女の子、ですか?団長の親戚の女の子とかですか?」

「あーーまあ、親戚の子、だな。

その子も、ミカみたく、俺のような騎士になりたいと言ってくれてた。」

「そうなんですか、団長に憧れてたんですねぇ、その子も」

「そうかもな、」

そう言った団長は、一瞬、遠い昔の誰かを思い出すような顔をした。




ギルロイドの脳裏に蘇っていたのは、

ギルロイドがまだ10代の頃に、ギルロイドに懐いてくれていた幼い女の子だった。

その女の子は、動物が好きで、ギルロイドのようになりたいと、小さな体で、木剣を振っていた。


(ミカを見てると思い出すのは、髪や瞳の色が同じだからか。名前が似てるからか。)

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