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ザガード・アッガスの自白〜団長、照れる〜

「香水・・?」

私の言葉に、皆が、地面に転がる瓶を見る。


「・・・遅効性の、魔獣誘引香水か」

イシスがポツリと呟いた言葉に、私は納得がいった。

「遅効性、あーだから、段々匂いが強くなってきたのか」

「・・・どういうことだ、アッガス」



団長に問われ、観念したようにアッガスは白状した。


理由は、

「食堂で、マーティンに嫌がらせしてたのを、新入りのオーガスタスに止められて、

恥をかいた。翌日、オーガスタスを殴ってた時も、オーガスタスに反論されたことにイライラしていた。

だから足を引っ張りたかった。

だから、体にかけてから段々匂いが強くなる魔獣誘引香水をかけた、」

という。


「はあ、成金・・・じゃなくてアッガス、

アンタさ、せっかく素質あるんだから、真面目に鍛えたら強くなれんのに、もったいなくね?」


私の言葉に、イシスが「素質?」と問う。

「さっき、鹿型魔獣が押し寄せてきた時、アッガスは鹿型魔獣の一撃目の突進を蹴りでいなしてた。

その後は吹っ飛ばされて木に体を打ち付けても、

すぐ立ちがって、鹿型魔獣達の突進を避けてた。

鹿型魔獣の角を叩く力も強かったし、

フィジカルのポテンシャル凄いんだよ、この人。

体術の成績良いでしょ?

ちゃんと鍛えてる人の動きだよ」


「お前、あんなピンチな中でよく観察出来たな、」

イシスが呆れたように驚く。 

 

「マグノリアの言う通り、アッガスは体術の成績は、同期の中でもトップクラスだ。」

団長がミカエラの言葉を肯定する。


しかし、アッガスの口調は重い。

「・・・鍛えたって、俺は次男だし、

兄貴には敵わねえし、」

商会の息子であるには兄が居て、

商人の素質が無いアッガスと違い、

アッガスの兄は商才があり、父親から期待されているのだと言う。

兄から見下されているアッガスは、騎士に憧れていて、

フィジカルが優れてる自分は、騎士団でなら、

商才ある兄貴より輝けるかと思い、騎士団に何とか入ったのだと言う。



しかし、騎士になるには腕力だけじゃ足りない。

騎士には頭脳も必要だ。

けれど、座学は劣るアッガスは、思うように伸びず、

日に日に荒れていったのだと言う。


「んなの、座学も今から頑張って、見返せば良いじゃないすか。」

「「「「・・・は?」」」」

ミカエラの、あっけらかんとした言葉に、

ギルロイド、イシス、オーガスタス、アッガスの全員が、ポカーンとした顔をする。


「だって、考えてみろよ。

今の騎士団には、軍神と名高いギルロイド団長みたいな、

お手本になる人が、騎士団にいるんすよ?

そんなの絶好のチャンスじゃないすか」


私がそう言うと、何故か照れ臭そうにする団長。

何照れてるんだこのイケオジ。可愛いな。


「・・・何で俺に構うんだよ、マーティンの味方じゃねえのかよお前は。」

アッガスが、疑心暗鬼といった顔でこちらを見る。


「そりゃ虐めはダサいからな。

アンタ、マーティン先輩とオーガスタスにちゃんと謝れよ。


・・・でも、アンタが、

兄や父親を見返したくて頑張って騎士団入ったのも、今まで鍛え続けてたのも事実なんだろ?」


アッガスが、いたたまれなさげに、斜め下を見る。


「なら、見返すのは応援するよ。

アンタ強いんだしさ、

正攻法でもっと強くなってさ、兄をギャフンと言わせるところ、見せてくれよ、」 


それは、ミカエラの本音から出てきた言葉だった。

血なまぐさい生死に関わる裏社会では、

腕が立つ者が名を上げる。

強くなければ言い残れない。

だからだろうか、素質が充分にあるアッガスが、強くなっていくのを見てみたいというのは、

紛れもない本音だった。


あとは、裏稼業で生きてきたミカエラだからこそ、

ちょっとやそっとの悪事を働く子供には、別に動じないのだ。

今回のアッガスの悪事が、ちょっとやそっとの悪事と言えるかは微妙なところだが、幸いにも、

オーガスタスとイシスとミカエラの3人は、

今回の危機を、チームプレイにより、大きな怪我を負うことなく乗り越えられた。



そんなミカエラの言葉に、アッガスが目を見開く。

そして、

「・・・何でそんなに寛容なんだよ。感覚おかしくねえかお前」

「それは俺も思う、」

アッガスの言葉にイシスも同意する。何だよイシスまで。


「ミカ、お前だって一応ピンチだったのに、何でそんな寛容なんだ、」

「僕そんなにピンチに見えた?オーガスタス」


(殺さずに生かして捕縛するのが難しかったからで、

本気で仕留めにかかれば、魔獣の仲間を呼ばれることもなかったし、もっと早く終わってた)


しかし、オーガスタスやアッガスからしたら、

そんなミカエラの内心は知る由もなく。

アッガスが誘引したせいで押し寄せた鹿型魔獣に突進され吹っ飛ばされたりしていたミカエラが、

ずいぶんと寛容な態度を取るものだと、驚いていた。


イシスからすれば、ミカエラのそれは、

寛容というよりも、裏社会でピンチに慣れてしまっているミカエラの感覚がおかしいだけなのだとわかるのだが。

特に、イシスよりもミカエラは、危険な目に遭うことに感覚が麻痺している。

「皆大した怪我も負わなかったし。

誘引した魔獣も危険度は低い奴だったし、鹿型魔獣に吹っ飛ばされても受け身取れたから無事だったし、」と、至ってケロリとしている。



「僕は平気だよ。

幸い、皆大した怪我しなかったし、

あー、とりあえずちゃんと謝れよ、アッガス」


あっけらかんと言うミカエラ。

そんなミカエラの言葉に、アッガスは、少し泣きそうな顔をし、


「・・・・・・す、すまなかった、ギュンター、

それに、リオガルドも、マグノリアも。

団長にも、ご迷惑おかけしました」

と、頭を下げた。


それを見た団長は、ため息を吐き、

「詳しい話しは改めて聞く。皆、近くの医院に行くぞ」

「「「「はい!!」」」」


団長が、アッガスの首根っこを掴んで立たせ、

改めてオーガスタスや私達に頭を下げさせ、

私は思わず笑った。



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