第七話 魔法使いの過去
きれいとは言えない牢屋の鉄格子越しに見えたのは、一人の男。
年齢は四、五十代といったところだろうか……。
殺意こそ無いが、ただものならぬオーラを放っていることはわかる。
しかし、なんだろう……。
この雰囲気、誰かに似ている気がする……。
「誰だ? お前たちは……?」
「え、えっと……」
誰だと聞かれると答えに困る。
アルム魔法学校の生徒?
この屋敷の客人?
「この惨めな姿を見に来たのか……?」
そう言いながら、男の周りは怒りの覇気で溢れていた。
どうやら彼の地雷を踏みかけているのか?
「ち、違います……その……め、女神の……」
「お前、その指輪……もしかしてグラキエスか……!?」
次の瞬間、それまで開いているのか閉じているのかよく分からない目をかっぴらき、両手を鉄格子にかけた。
「は、はい……そうですが……」
「自分以外の指輪の所有者は初めて見たな……」
そう、よく見るとこの人の指にもディアリングがはまっているのだ。
話を聞くと、彼の指輪の属性は風。
あのアルム魔法学校のイリス校長と同じ属性の魔法使いだ。
彼女も周りの先生とは別格のオーラを放っていたが、目の前にいる男からは、イリスですらレベルが違う。
「申し遅れた。私は、名をヴィルベルと言う」
「あ、雪枝信之です。一応アルム魔法学校の生徒です」
「フィリア・アエニグマです……」
自己紹介を終えた。
しかし、ヴィルベルはある一つの単語に反応した。
信之の「アルム魔法学校」にだ。
「アルム……ってことは、イリスがいる場所か!?」
「えぇ!? 校長を知っているのですか!?」
それから話を聞くと、なんとヴィルベルはイリスの実の父親だったのだ。
あの睡眠薬で眠らされる前に話していた、彼女の父親が今、目の前にいる。
「そうか……アイツはもう校長か……」
「はい、あと……」
隠しておくのも良くないと思い、彼女が自分に対して睡眠薬を飲ませて眠らせたこと、そのまま魔族に引き渡したことなどを話した。
別にイリスを貶めたいわけではまったくない。
だが、この紛れもない事実を言わないでおくというのもどうかと思ったからだ。
「そんなことを……娘が本当に申し訳ない事をした……謝罪させてくれ……」
ヴィルベルは地面に額が当たりそうな勢いで深々と頭を下げた。
彼は何も悪くは無いはずなのに。
「あ、頭を上げてください! ヴィルベルさん!」
「そうそう、おじさんは何も悪くない」
フィリアにもそう言われ、頭を上げたヴィルベルだが、首を横に振る。
「いや、おそらくイリスがそんなことをしてしまったのは私のせいなんだ」
「……どういうことですか?」
そこから、彼の話が始まった。
大まかな内容は、イリスが信之が眠る前にしていた話と同じだったが、大きく違う点もいくつかあったのだ。
「え? 魔族が指輪を……?」
「あぁ、理由は分からないが、奴らは指輪を欲しがっていた。『渡さないのであれば家族を危険に晒す』と脅されもした」
そのせいで、大好きな家族とも離れなければいけなくなったという。
その結果、母は鬱になり死亡。
残されたイリスは施設に預けられる。
彼女にとって、自分の大切な家族を壊した指輪に憎しみを覚えたのだろう、と言った。
それからヴィルベルは一人で魔族と戦い続けた。
しかし、話を聞くと彼は英雄のように聞こえる。
彼をこんな地下牢に閉じ込められている理由が分からない。
「あの、なぜこんな場所に閉じ込められているのですか……?」
「それは……」
次の瞬間、地下牢の扉が勢いよく開いた。
ドアの方を見ると、豪華な装飾具を身にまとった大男と、何人かの衛兵が後ろにいた。
その大男は、手に簡単に人を殺めることができる強力な杖型の魔道具をこちらに向けていた。
「それ以上口にするのはやめたまえ、ヴィルベル様……?」
その声と姿を見た瞬間、隣にいたフィリアは青ざめた。
「お父様……?」
こんにちは、あまないです。
なんだが大変なことになりましたね…
皆さんはイリスのあの行動についてはどう思いますか…?
意見を聞かせてください!!!




