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僕がなろう系で貴族になる話  作者: あまない
二章 お家に帰りたい
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第三十一話 人工ワガママ

『信之、高校でお友達できた?』


どこだここは……?


たしかさっきまで自分は海の上でシーデビルと戦ってて……


『そんな暗い顔だと女にモテないぞ』


薄れていた意識が戻っていく。


目を開けると、目の前には自分の実の父と母がいた。


「お母さん……?」


「どうしたの? 体調でも悪いの?」


今、目の前には両親がいる。


幻覚ではない。


だとしたらこれは……


「信之……もしかしてハーレムモノの妄想でもしてるのか? 懐かしいなぁ……父さんも若い頃は……」


いつものような会話だ。


目の前には温かいごはんがあって、窓の外を見ると、いつも通りの朝が来ていて……


「信之……?」


「大丈夫だよ、お母さん」


いつまでも窓を見てボーッとしているので、お母さんもかなり心配しているようだ。


「友達……い、いるよ!」


「そっか、なら良かった」


質問の答えが聞けたお母さんは、『冷めないうちに早く食べなさい』と言ってきた。


お父さんは昔話をずっと一方的に話している。


変に見えるかもしれないが、これも日常の風景だ。


「いってきまーす」


「行ってらっしゃい」


いつも通り、玄関にお母さんが見送りに来てくれる。


思春期の頃って、反抗したり、親子の会話が少なくなったりする時期だが、雪枝家ではそんなものは微塵も感じない。


(何でだろ、いつも通っているはずなのに……)


そう、妙に懐かしく感じるのだ。


その辺の電柱に止まっているカラスですら懐かしい。


なんだろう……この不思議な感覚……


(週末、一回も外に出てなければ、そうも感じるわな……)


信之は、不登校とか、そういうものではない。


人と話せないわけでもないし、いじめられているわけでもない。


しかし、登校中に誰かに話しかけられたり、『一緒に行こ』とか言われたことは、少なくとも高校生になってからは一度もない。


でも、それを苦痛だとも思ったこともない。


(なんで謎に主人公席なのかな……)


授業は退屈だ。


テストも、一週間前からの準備で十位以内に入れる。


学校を苦痛に感じたことはないが、楽しいと感じたことも無い。


唯一、家以外で楽しいと感じられる空間は……


(やっぱ放課後の本屋の寄り道はやめられない……!)


そう、本屋だ。


父の影響で幼いときからライトノベルを中心に見ていた。


そのため、部屋には壁一面に本が埋まっている。


朝起きて、ご飯を食べて、学校に行って、本屋に寄って、夜ご飯を食べて、寝る。


そんな変わり映えしない日々だ。


「よっ! 信之!」


「村上……」


本屋で本を漁っていると、後ろから声をかけられた。


そこにいたのは、唯一の友達の村上だ。


彼はクラスの一軍で、放課後には友達とカラオケだのスタバだのショッピングだの……


まさに陽キャの鏡だ。


「遅かったね……って、けっこう息切れしてるけど……」


「悪いな、前に一緒に遊びに行った女の子がハサミ持って追いかけて来たから」


「それ本当に大丈夫!?」


彼とは、同じライトノベルの読者だ。


教室でその本を読んでいたら急に話しかけてきた。


そこから仲良くなったんだ。


そして今日は新刊の発売日ということで、二人はこの行きつけの本屋で待ち合わせしていたのだ。


「よし、もう帰る?」


「まだ時間あるし……ちょいと公園寄らね?」


お目当ての本は買えたので、今日の目標は達成したのだが、今日は公園で二人で読むことにした。


公園につくやいなや、さっそくその本を開けて、読み始める。


三十分程で半分読み終わり、残りはお楽しみということになった。


「なぁ、信之、ちょっと話を聞いてくれるか?」


さっきまで笑顔だったのに、急に改まった顔でこちらを向いてきた。


「いいけど、どうしたの?」


信之は首を傾げた。


彼のこんなに真面目な顔を見たことがないからだ。


「信之、お前は……お前は、自分のことを待ってくれている人が遠くにいるとき、会いに来たいと思う?」


「どうしたの急に? もしかしてラノベに影響された?」


彼は速攻で『違うわ!』と返したが、真面目な顔は変わらない。


「うーん……どうだろ……それは、僕のことが好きな人?」


「あぁそうだ。お前のことが大好きで大好きでたまらない人だ」


信之は考え込む。


そんなこと、今まで考えたことがない。


「そして、その時、自分のすぐ側に、もう一人、お前のことが大好きな人がいたら、どうする……?」


「え、えぇ!?」


さらに頭がこんがらがってくる。


彼がなぜこんな質問をしているのかが理解できない。


「そ、それは……あ、相手に合わせて……」


「お前は? お前はどうしたいんだ?」


さらに突き詰めてくる。


信之はそのまま言葉をつまらせてしまった。


「お前は、前から思ってたけど、欲がなさすぎる! もっとこうしたい! とか、ああなりたい! とか……」


「ちょ、ちょっとまって、本当に急にどうしたの?」


そう聞くと、村上はピタッと止まった。


そして、信之の隣に再び座った。


「まぁ要するに、もっとワガママになれってことだ。周りに流されたり、無理やり相手に合わせようとしたり……そんな事してたら、お前が消えちまう」


終始、彼が何を言っているのかわからないが、なぜか言葉が心に刺さる。


「信之、お前は、本当はもっと強いと思う。だから、胸を張って生きろ」


「村上……」


次の瞬間、周りの景色が光に包まれ始めた。


村上の姿も少しずつ……


「え、えぇ!? な、なにこれ!?」


「まぁ偉そうなこと言ったけど、要約すると、お前はよくやったって言いたいだけだ」


訳が分からない。


何かをやり遂げた記憶なんて……


(あれ……? なんだ……この景色……)


自分の視界に、映像が流れている。


そこには、自分がデカいバケモノに一人で立ち向かっている姿が見えた。


「こ、これなに!? 村上!!」


「信之、ワガママになって頑張れよ!!」


一瞬失った意識が戻ってきた。


そして、自分の頭に何やら柔らかい感触と甘い匂いが伝わってくるような気がした。


こんにちは、あまないです。

この作品では超珍しい真面目回でした!

こんなお友達、欲しかったです。

皆様の周りにはどんなお友達がいますか?

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