第二十九話 付いた気がする…
「お前ら、ほんとにシーデビルを倒そうだなんて正気か……?」
「信之なら大丈夫……って、信之……?」
後ろを見ると、顔を真っ青にしている信之の姿があった。
ここは、さっきの男の船だ。
男の名を、カイゼルと言う。
村のギルドのエースだ。
この船には、かなりの数の商人と、その荷物が乗っている。
ここ何ヶ月か大陸を渡れていないため、船に乗りたい人を募集したら10分で集まったらしい。
「フィリアは何でそんなに緊張してないの?」
「……そ、それは……」
彼女の隣でニヤニヤしながら二人の会話を見ているカイゼルが口を挟む。
「『見られてる』からだろ……?」
「……っ?!」
そう言われた瞬間、彼女の顔が赤くなった気がする。
まぁ、そのことは置いておいて……
「すいません、なぜ今、危険な海をそこまでして渡りたいのですか?」
信之が、緊張しまくってガチガチになっているのにもかかわらず、乗っている商人たちはそれどころか、周りの人と談笑している。
緊張なんて微塵もしていないように見える。
そのため、思わず聞いた。
「そりゃぁ! 久々に、アッチにいる仲間に会えると思えば怖くなんかねぇよ!」
「そうそう! こいつなんて、アッチにいる女房にずっと会えなくて……」
「ちょ、おい!!!」
その場には、和やかな空気が流れ続けている。
実はシーデビル……大したこと無かったりして……
「まぁ、とりあえず、お前らを信じてるってことだ」
「え?」
思わぬ言葉に、信之の身体の奥で何かが弾けた。
「な、なぜですか……?」
「まぁ、お前が契約者だってこともあるが、一番は……」
次の瞬間、フィリアが運転席から声を上げた。
「来た!!!」
この良いときに……!
でも今はそんなこと言ってられない。
信之はすぐに外を見た。
窓の外に映っていたのは、鯨。
それも黒色だ。
「アレが……」
「あぁ、まさに海の悪魔だな……」
ヤツの姿を捉えると、船内の人間は打ち合わせどおりに動き出す。
「お前ら、本当に良いのか? やっぱり俺も……」
「だ、大丈夫! そんなことより早く商人の皆さんを!」
作戦はこうだ。
シーデビルを確認した瞬間、後ろから引っ張ってきていた小舟に信之とフィリアが乗り移り、カイゼルと商人達は乗ってきた船で全速力で大陸に向かって走る。
その船の護衛をしながら、二人でシーデビルを倒す。
略して……『餌に気を取られている隙に……!』作戦。
「しかし、よくこんな作戦、許可してくれたな……」
この作戦で一番危ないのは、カイゼルの船だ。
その中には戦闘能力を持たない商人もいる。
それなのに、信之がこの作戦を発表した時、誰一人として反対するものはいなかった。
「じゃあ、船の護衛は任せたぜ!!!」
「はい!!」
そう言い残し、カイゼルの船は全速力で大陸に走っていく。
「フィリア! お願い!」
「はい!」
そして、フィリアは信之たちの船の後ろにある魔動石に触れる。
この魔動石は魔力をガソリンにしてプロペラを動かす、いわばエンジンのようなものだ。
これは、カイゼルの船にも付いている。
「やばい! カイゼルさんの船に……!」
信之たちも全速力でシーデビルの元へ向かう。
そして、シーデビルは口から攻撃を繰り出そうとしている。
それを信之の力で海の水を凍らせて、攻撃が当たるのを防ぐ。
「よし! フィリア、あの火を!」
あの火というのは、先程カイゼルと戦ったときに用いた黒い火のことだ。
「フランマ・エテルナ!」
その氷の壁を伝って、フィリアの黒い火がシーデビルに届く。
そして、当たった瞬間は咆哮を上げたが、すぐに燃え尽きてしまった。
「やっぱり、呪い系の魔法攻撃は効果がほぼない……」
「物理攻撃しかないってこと……!?」
あの時と同じだ。
前に、魔法を無効化するヘビ型の魔物と対峙したことがある。
その時とよく似ている。
どうする……?
そんなことを考えていたら、シーデビルの鰭がカイゼル達の船に攻撃をしようとしている。
この距離からだと、氷の壁も間に合わない。
「カイゼルさん!!!」
次の瞬間、シーデビルの鰭がスパンと切れた。
よく見ると、カイゼルが魔剣を片手に手を上げている。
今のはカイゼルが切ったんだ。
「アイツ、やっぱ強い……」
フィリアも、その剣技に見惚れているように見えた。
その時、信之の中で何かが動いた。
「フィリア、魔動石にもうちょい魔力入れてスピード上げられる?」
「上げられるけど……そんなスピード出したらシーデビルに近づきすぎる……」
しかし、そんなことを言われても、信之の目と勢いは変わらない。
「大丈夫! とりあえず、近づけるところまで近づいて!」
そう、信之の中で決心が付いたのだ。
こんにちは、あまないです。
バトルシーンを書くの非常に苦手ですいません。
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