第二十三話 食材を買いにきただけなのに...
効果が真逆の魔法石を持たせられていたあの事件から、一夜が明けた。
朝イチから森を歩き続けた。
そして日がほぼ落ちたのと同時に、目的地に到着した。
「やっと着いた……」
この体になってから一週間が経った。
途中、色々なことがありながらも、目的地である村に着くことができた。
……のは良いのだが。
「村というか国じゃん……」
着いたのは、周りを高い石の壁に囲まれた大きな町だ。
ここは、いわば次の国へと繋がる貿易が盛んな場所。
ここを出ると次に港町に着き、そこから船で次の国へ渡れるのだという。
「ホント、大きな町……」
二人で丘の上から町を見下ろしながら、フィリアが呟く。
ケントルムの王都に次ぐ大きさだ。
しかし、信之には心配なことがある。
今の自分は通常の十分の一の力しか出せない。
そして、体は女性の見た目。
(マジで変なことが起こりませんように……)
信之は心の中で静かに願うのであった。
◇ ◇ ◇
「眩し! 今ホントに夜!?」
「昼みたい」
町に入る頃には、完全に夜になった。
……はずなのだが。
町は真っ昼間と変わらないほど明るい。
フィリアはこの明るさが怖いのか、信之の隣にピッタリとくっついている。
「そこのお嬢ちゃん達! 今、バーやってるよ!」
「ちょっとお姉ちゃん! 今、良い男いるよ!」
この町は一体どうなっているのか……。
町を歩けば勧誘がうるさい。
まるで某歌○伎町のようだ。
「やーっと着いた……」
「信之……早くご飯……」
面倒な勧誘を潜り抜け、なんとか宿にありついた。
二人は倒れ込むようにベッドに横たわる。
しかし、二人には夕食の食材が何もない。
「あの~、今日夜ご飯抜きというのは……?」
「お願い、信之」
もう外に出たくない。
あの勧誘の嵐に飲まれたくない。
しかも男の体ならまだ安心できたかもしれないが、今はフィリアとほぼ同じ大きさの女の子だ。
見た目も声も完全に女の子。
「ぐっ……! そ、その上目遣いにはもう乗らない……」
「お願い、信之……」
そして結局――。
「お姉ちゃん! ほら! 良い男いるよ!」
「眩しい。夜だとは思えない……」
信之は再び町へ繰り出すことになった。
「はぁ、早く適当に食材だけ買って帰ろ……」
うるさくて眩しい通りを歩き、なんとか最寄りの様々な食材が売っている店に着いた。
店内に入ると、誰もいない。
そこには、
『会計の時はベルを鳴らしてください』
と書かれた紙が置いてあるだけだった。
(売ってる物は普通か……って高っ!)
ただでさえ金欠で、お金に余裕がない。
それなのに、ここの物価は前の村の三倍だ。
「……あの~」
「え?」
商品の前で悩んでいると、後ろから弱々しい声で誰かが話しかけてきた。
フィリアではない。
というか、彼女がここにいるわけがない。
後ろを見る。
そこには、細身で今の自分より少し背の高い女の子がいた。
『僕っ娘だ!』
「ん? どうかしました?」
「あ、いえ。何も……」
目を合わせない。
人と話すのが苦手なのだろうか。
手もモジモジして落ち着かない様子だ。
「あの……た、高い……ですよね……? 値段……」
「まぁ、前の村と比べれば……」
信之がそう答えると、彼女は少し息を吐いた。
そして、震えながら信之に言葉を発する。
「えっと、その……じょ、女性限定なんですけど、安くできる方法があって……」
その言葉を聞いた瞬間、信之は胸が高鳴った。
「え!? 本当ですか!? ぜひ教えて下さい!」
「で、ではこちらに……」
そう言われ、信之はその女の子に言われるがまま店の奥に入っていく。
その時の信之は、
『食材が安くなるなら何でも良いや!』
と思っていた。
そして――。
店員の足が止まった。
「……?」
そこにあったのは、鍵の付いた小さな部屋。
「……え?」
信之は思わず固まった。
店員が鍵を開ける。
そして中へ入る。
部屋には、弱い青とピンク色の照明。
そして――。
一つのベッドがあった。
「……こ、ここって……?」
信之の頭の中に、ようやく一つの疑問が浮かんだ。
(待て)
(僕、何処に連れてこられてるんだ……?)
食材を安くしてもらえる。
その一心でここまで来た。
しかし、今になって冷静に考えてみる。
普通、食材を安くするためにこんな場所へ案内されるだろうか?
「…………」
信之の背中に、冷たい汗が流れる。
(いやいやいやいや!!?)
果たして、この店で一体何が起こるのか。
信之は、自分がとんでもない場所に足を踏み入れてしまったことを――ようやく理解した。
こんにちは、あまないです。
なんだかヤバい雰囲気になっちゃいましたね…
さて、これから信之(女の子)はどうなってしまうのか…




