第十九話 とうとう色づいちゃったか…
「ん……? 朝か……」
ここはケントルム帝国の南地方。
北の大地にある魔族領から、段々と南下してきている。
パウルス公国は世界の最東端にある国で、もう少し南の方にある港町へ向かい、そこから次の大陸へ船で向かうために移動している。
二人は、ルプセルの群れに襲われたあの日の夜から一ヶ月半が経ち、季節は春から夏へと変わった。
「やっぱ久々のベッドで寝るのは落ち着かないし、よく眠れなかったな……」
ここは港町までの最寄りの村。
あと少し歩けば目的地に着く場所まで来ていた。
ここの所、野宿しかしていないのでベッドには慣れない。
信之が布団から出て朝の支度をしていると、フィリアが部屋から起きてきた。
「あ、おはよ。フィリア」
「おはよう……」
まだ目は半分閉じている。
そして髪型は、もはや芸術作品と思えるぐらいには爆発していた。
「はい、朝ごはん。昨日食材は買っておいた」
「ありがと……」
二人でテーブルの対面に座って朝食を食べる。
椅子に座って朝食を取るのも何週間ぶりだろう。
「今日、行きたい場所ある。行って良い?」
「全然良いけど……どこに行くの?」
フィリアがこのように言ってくることは珍しいことではない。
むしろ多い気が……。
「秘密」
「???」
隠し事は珍しい。
しかし、秘密と言われた以上、これ以上問い詰めるわけにもいかない。
ここ最近はずっと歩いたり戦ってばっかだったので、今日はそれぞれ別行動することにした。
「にしても、かなり大きな村だな……」
ずっと宿にいても暇なので、外に出て探索することにした。
人口は1000人にギリギリ届かないぐらいだろうか。
ここまで人に囲まれた空間にいるのも久しぶりだ。
「そこのお兄ちゃん! よかったらオークの肉、いらない?」
「こっちにはドラゴンの卵もあるよ!」
地味に不味そうな食材の名前しか聞こえてこないのだが、人見知りが発動し、全スルーした。
「ん? なんだここ?」
街を一通りフラフラと歩いていると、看板に『鳩屋』と書かれた店を見つけたのだ。
店を覗くと、テーブルが何個かと、奥のカウンターに十数匹の鳩がいた。
「鳩肉売ってるのかな……?」
「儂は鳩肉は食えないぞ」
後ろから、気配もなく現れたのは顔中シワだらけの老人だ。
「うわぁ?! びっくりした……」
「フォッフォッフォ……若いのにビビりじゃな。どれどれ、気になるなら入ってみなさい」
老人が店の扉の鍵を開けた。
どうやらここの人らしい。
「あの……ここはなんのお店ですか?」
ゆっくりとカウンターにある椅子に腰を掛け、一息つくと質問に答えた。
「ここは、鳩を使って世界中のどこへでも手紙を届けられる店じゃ。人の力で届けるのと鳩の力で届けるのとでは、早さも費用も段違いじゃ。鳩は空も飛べるからな」
俗に言う、鳩版の郵便局のようなものだ。
正直、手紙を書く相手などいないと思って、この店を去ろうとする。
しかし――
《《ある人物》》の怒っている顔が浮かんだ。
「では、一通良いですか?」
そう言うと、老人はカウンターの下から紙とペンを出してくれた。
そして、一番近いテーブルに置き、手紙を書き始めた。
書き始めこそ悩んだが、途中からはペンが止まらず、最終的には便箋いっぱいに文字を書いた。
「ではこれを……」
「うむ……」
手紙を渡すと、中身が見えないように折っていたのに、勝手に紙が開いてしまい、老人に中身が見えた。
「これは愛する愛する人への手紙かな……?」
「ち、違います!! 現状報告です!」
そう笑いながら、鳩の足に手紙をくくりつける。
そして、目的地へと飛んでいくようにする魔法を老人が鳩にかけて、鳩は窓から飛んでいった。
「おそらくあの国へなら五日もあれば着くであろう」
「ありがとうございます!」
信之は料金を払い、店を出た。
なんだか気持ちが温かかった。
しかし、その温かい気持ちも一瞬で冷めることになった。
街を歩いていると、視界の先に見慣れた髪色が見えた。
「ん……? あれは……フィリア……って……え?」
視界には、知らない男と歩くフィリアの姿があった。
こんにちは!あまないです。
なんだか最近刺激的な回が少ないと感じています。
次はかなりエキサイティングな話になると思いますのでぜひ!!!




