第十八話 宣戦布告(?)
アイラの馬車の周りは、完全武装の魔族で囲まれていた。
「はじめまして、私の名はマレリスです。以後、お見知りおきを……」
奥から出てきたのは、黒と朱のドレスを身にまとった魔族だ。
明らかに周りの魔族とはかけ離れたオーラを放っている。
「あ、あれは……何?」
アイラは魔族の存在は知っていたが、目の前にいるマレリスと名乗る魔族は知らない。
「あれは魔族トップのマレリスです! 七つのディアリングの内の一つ、闇の指輪の持ち主です!」
そうステラが馬車の中で叫ぶと、アイラの背筋には冷たいものが走った。
そう、目の前にいるのは信之と同じ力を宿した実力者だからだ。
彼と一緒にいるときにも感じた、どうあがいても勝てない雰囲気。
それを一番彼女が感じていた。
ここで馬車の中に籠もっても仕方がないので、三人は馬車から出た。
「それで、魔族のトップがなんの用?」
足は震えていた。
それでも、ここで引き下がるわけにはいかない。
「まぁまぁ、落ち着いて。《今日は》戦うために来たわけではありません……あなたに文句を言いに来たのです……」
「文句……?」
マレリスは不敵な笑みを浮かべながら言う。
周りの魔族も少し笑っている。
「なぜあなたは! あの男と旅をしているのですか!!? 男を連れ去ってこいと命令したのにぃ!!!」
その言葉を聞いた三人と周りの魔族は、目が点になった。
本当に何を言っているのかが、一ミリも理解できない。
数秒の沈黙が流れた後、マレリスの配下のカラが耳打ちする。
『マレリス様! 例の男は誘拐しましたが途中で逃げられました。というか以前見てましたよね!?』
『あれ? そうでしたっけ?』
魔王とは思えない会話が、三人にも小さく聞こえる。
「ま、まぁ、そういうことです……」
本当に会話が何一つ噛み合わない。
「あなたは何をしに来たの?」
マレリスはアイラの質問に、口角を上げながら答える。
「そう、今日の本当の目的は、あなたの国をいただこうと思っている事を伝える……」
「それ言っちゃいけないやつです!!!」
間髪入れず、カラが言葉を遮る。
不思議な雰囲気が流れているが、マレリスの言葉をその時、アイラは静かに理解した。
「そ、そう! 今日の目的はあなたたちに注意です! あの男を探すよりも、まずは自分の国の事を気にしたほうが良いですよ。それではまたいつか……」
魔族の特権である転移魔法を使用し、馬車を囲っていた魔族、そしてマレリスとカラは消えてしまった。
◇ ◇ ◇
「そうか……やはり、信之を探しに行くわけには行かないな……」
今日、放課後に起こった出来事を、アイラの父親であるルッツに話した。
出来事を話していくと、ルッツはだんだんと暗い顔をした。
魔族がこの国を狙っていると分かった以上、国防に力を入れなければいけないのは、シュヴェルト家として当たり前のことだった。
しかし、アイラもすぐには納得できない。
「なぜですか!? 今こそ、グラキエスの所有者である彼をこの国に戻すべきです!」
彼女の叫びが、屋敷の対話室に響いた。
しかし、ルッツの顔色と声色は全く変わらない。
「知っているとは思うが、この屋敷の地下にはたくさんの魔導具が眠っている。グラキエスもその内の一つだった」
ルッツの話を要約すると、シュヴェルト家は昔から強力な魔導具の管理を任されてきた家であり、魔族にとっては喉から手が出るほど欲しいのだという。
しかし、前に何者かが侵入してグラキエスを盗まれている。
指輪の所有者である信之を執事という形で雇い、事実を世に出さないようにしたが、もしこれが魔族側の仕業だった場合、また侵入されるかもしれない。
「そのため、以前より張る結界を強固にはしたが、心配は消えない……そうだろう?」
アイラも、頭では話に納得していないが、シュヴェルト家のご令嬢として頷くことしかできない。
「それに、マレリスのその言い方だと、彼は生きている。悪魔の契約者がそんなに簡単に死にはしない」
ルッツの話に納得したふりをしながら、静かに部屋を出た。
部屋の外にはステラとクラウスがいた。
「アイラさん……」
「アイラ様……」
彼女の頭の中はぐちゃぐちゃだ。
しかし、ここは取り乱してはいけない。
それを分かっている。
(信之が生きてるって分かっただけで良かったのかしら……って、あれ?)
マレリスが言った言葉に、一つ引っかかった事がある。
(たしか、『なぜあなたは! あの男と旅をしているのですか!!?』って言ってたっけ……?)
あなたは……?
つまりは、アイラと同じ女の子……?
女の子と旅をしてる……?
「信之ぃーーーーー!!!」
アイラは取り乱してしまった。
こんにちは、あまないです。
まずはここまで呼んでいただき本当に、本当にありがとうございます。
もう少しで二章が終わる予定なのでお楽しみに!!!
P.S
あなたの推しは誰ですか?私はフィリアです。




