第十六話 たまにはカッコいい所を…
「ルプセルの群れだーーー!!! 逃げろーーー!!!」
見張り台のような所から一人の村人が叫んでいる。その声を聞いた他の人々は我先にと出口へ逃げる。村は一気に静かになった。
信之は混乱して逃げることを忘れてしまい、一人静かに村の中へ佇んでいる。
「これはマズいやつでは……?」
段々とこちらに何かが近づいてきている気がする。こんな時でも眠ることができるフィリアが羨ましくてしょうがない。
「と、とりあえず隠れよう……」
信之は道端の小さな裏路地へ身を隠した。このまま走って逃げることもできたが、フィリアを背負いながら全力疾走したところで追いつかれる。魔法もこのままだと撃ちにくい。そのため、いつでも指輪の力を使えるよう準備だけはできている。しかしフィリアは起きない。
『ちょ、ちょっとフィリア……起きて……!』
小声で話しかけてもビクともしない。そして、この薄暗い裏路地にも不気味な気配が近づいてきていた。
十秒ほど経ち、大通りをそっと覗くと、そこには何匹もの狼型の魔物ルプセルがいた。しかし違和感がある。明らかに一度こちらを見たにもかかわらず、襲ってこないのだ。
(もしかして目が悪いのか?)
その次の瞬間、近くの家の中から何かが崩れる音が聞こえた。するとルプセルの群れは、その音がした家へ一斉に突入していった。
(なるほど……耳がいいのか……)
後に調べて分かったのだが、ルプセルは進化の過程で目が退化し、その代わり耳が非常に発達した生き物だという。つまり、音を立てなければいいのだ。
(よしっ! 突破口が見えた! あとは音を立てずに、この村の近くの避難所へ行けば……)
先ほど逃げる大人たちが『早く避難所に!』と叫んでいたため、そこを目指す。
(なんだかんだ言ってフィリアを起こさなくてよかったな……)
そんなことを思いながら抜き足差し足忍び足でその場を離れる。音を出さなければいいと分かればこっちのものだ。
信之が頑張って音を立てないよう歩いていると、背中で何かが動いた。
「ねぇ、信之……ここどこ?」
できるだけ起きてほしくないタイミングで目を覚ましてしまった。かなり寝ぼけている。
『しーーーっ! 静かに! 今大きな音を出すと襲われるっ!』
その時、ポケットに《《ある物》》が入っていることを思い出した。
◇ ◇ ◇
「あ、そうそう信之。君にこれを一つあげよう」
それは村の入口でミラと話していた時、彼女から手渡された緑色の球体だった。
「あの……これは?」
「オトダマだ。ここらにはルプセルという魔物が多くいてな。それを投げると大きな音が鳴って、そっちの方向へ集まるんだ」
そう、この時ルプセルについてちゃんとレクチャーされていたのだ。それなのに襲撃を受けてから思い出した。完全にアホである。
「この紐を引いた十秒後に音が鳴り出すから」
俗に言う手榴弾のようなものだ。
その後、ミラの部下がやって来て、彼女と共にこの村を去っていった。
◇ ◇ ◇
(よしっ! これで……!)
フィリアも流石にこの状況でずっとおんぶされているわけにもいかず、ようやく背中から降りてくれた。ずっと背負っていて手に力が残っていないため、オトダマはフィリアに投げてもらうことにした。
「これを投げればいいの?」
「そう。できるだけ遠く、遠くにね」
フィリアは腕を大きく振りかぶり、遠くへ投げた。しかし、思ったより投げる角度が低く、遠くまでは飛ばなかった。
近くの家の壁に当たり、そこからスーパーボールのように壁、地面、柱へと跳ね返り――結果。
「……フィリア? これって……」
「逃げよ」
次の瞬間、二人の足元でオトダマが炸裂し、大音響が響き渡った。
爆発する二秒前には走り出していたため直撃は回避し、鼓膜も守ることができた。
「待って! 来てる来てる!!!」
必死に走りながら後ろを見ると、ルプセルの群れが追いかけてきた。オトダマの音と二人の足音で、完全に見つかってしまったのだ。
「フランマ・イグラス!!!」
「ルビュート!!」
二人は魔法で応戦する。一匹相手なら大して強くない。この二人の魔法なら一撃で倒すことができる。しかし数が数だ。倒しても倒してもキリがない。一匹ずつ倒していては先にこちらの魔力が尽きる。それなら、一発大きな魔法を放った方が魔力の消費も少ない。
「どうする!? フィリア!」
「この村ごと焼き尽……!」
「却下!!!」
たとえこの村ごと焼き払ったとしても、ルプセルを全滅させられるわけではない。というか、そんなことをしたら村人に怒られるどころでは済まない。
(どうする……何かいい案は……?)
もうそろそろ追いつかれそうだ。群れの先頭が着々と距離を詰めてくる。
前の迷宮実習のように全体を凍らせることはできる。しかし、そんなことをしたら、ただでさえ信之一人の氷を溶かすのにもあれだけ時間がかかったのに、村全体を凍らせたらどれだけ時間がかかるだろう。
(狼の弱点って何だ……?)
走りながら信之は前世の記憶を掘り起こす。そして、ある記憶にたどり着く。
(そうだ……! たしか狼って!!!)
次の瞬間、信之は足を止め、ルプセルの群れの方を向いた。
「何してるの信之。早く逃げないと……」
「大丈夫! まぁ見てて!!!」
そう言うと、信之は左手に魔力を溜め始めた。
あまないです。
最近PVが低迷していてちょっとショックなんですよ…
やっぱ長編ファンタジーってかなり面白くないと
読者を確保するのって難しいですよね…
アトトウコウヒンド…




