第十四話 親ってなんだろう
「……え?」
信之の頭の中は真っ白だ。本当になんの思考も回らなくなり、急に心臓のBPMが早くなりだした。背中に乗っているフィリアの感触も無くなっていく気がする。
「私にはそんな手袋で隠していても無駄だぞ、私も同じ悪魔の契約者だからな」
どうやら同じ悪魔の契約者には一瞬で所有していることはバレるらしい。
「で、どうやってその指輪を手に入れたんだ?」
信之が魔王も直接使っていたとされる指輪、グラキエスを手に入れた経緯を事細かに話した。
その後シュヴェルト家で働くことになったことや、そのまま魔法学校にほぼ強制的に入学したことなど……。
別に隠しても良かったのだが、相手は警備隊。前世で言う警察のような立場なので隠し事はしない。
「ハッハッハッハッ!! いや面白いね君〜」
信之としてはだいぶ不運なことしか起こっていないのだが……。
「まぁ私と似ているな!」
「……どういうことですか?」
その後、この日が落ち始めている広い草原の一本道でミラの過去の話が始まった。
◇ ◇ ◇
「おとーさん、なんでいつもその指輪着けてるの? もしかして不倫相手!?」
「仕事道具だからだよ? あと不倫相手なんて言葉、三歳の女の子は使っちゃいけません」
約二十年前、ケントルム帝国王都に住んでいたミラ一家の日常はこんな仲睦まじい? 会話があった。
この時のミラはまだ三歳。
母はケントルム帝国各地を回る優秀な医者で、父は宮廷の騎士団長をしている。
母は家に一年で一、二回程しか帰ってこないので、父が男手一つで育てていた。
「もしかして悪魔の契約者!?」
その単語がまだ幼い彼女の口から出てきて、父はキョトンとする。
「なんで知ってるの?」
ミラは満面の笑みで答えた。
「おかーさんが言ってた! お父さんは悪魔と結婚してて、いろんな水の力を使えるんだって!」
「結婚じゃなくて契約だね。結婚だと本当に不倫してることになっちゃうから」
そのまま父の胸に飛び込んでハグをする。
そしてミラと父が遊んでいると、半年ぶりに母が帰ってきた。
「あ! おかーさんだ!!!」
玄関が開いて母の姿が見えると、一目散に走っていく。
彼女はこの日を楽しみに待っていた。
「ただいま、ミラ。お父さんは遊んでくれた?」
「うん! おかーさん! でもね、最近お父さん帰りが遅いの!」
ミラの父はこの国の騎士団長でかなりの多忙だ。
そのため昼間、ミラは宮廷の託児所に預けられている。
母はそのままミラを抱っこしながらリビングに入り、ソファに座って話を聞いてあげる。
「そうなの? たぶんね、お父さんは国のために頑張って働いてくれてるのよ?」
「そうなんだ! ありがと! おとーさん!」
満面の笑みで父に感謝を伝えると、父もなんだか照れている。
「でもねでもね? おかーさん、最近お父さんが変なの」
「変? 何が変なの?」
少し下を向いた後、ミラは母に話した。
父はなんだか動揺しているような……。
「最近ね、お父さん、可愛いメイドさんと一緒にお家に帰ってきて、その日の夜はお父さんの部屋から変な音がするの!」
場の空気が固まった。
父は冷や汗が止まらず、母からは怒りのオーラが放たれていた。
「音って、どんな音?」
無理やり作った笑顔でミラに聞く。
「えっとね! なんだかギシギシってベッドが……!」
「ち、違うんだ!!! ごごご、誤解だ!!!」
一応笑顔だが、目は笑っておらず殺気に満ち溢れている。
「へぇ……そうなんだ……」
次の日。
場所は宮廷の地下深くの処刑台。
「被告人は、悪魔の契約者に選ばれ、ケントルム帝国騎士団長という立場を利用し、宮廷の人間と関係を持ったため、ディアリングを強制没収とする」
椅子にくくりつけられたミラの父。
そして、その椅子の前にある机に固定された左腕。
そう、ディアリングは死ぬまで外れないので、指を切り落とすしかないのだ。
「ま、待ってくれ! ゆ、指を切り落とさないでくれ!」
そう叫ぶと、目の前にいるこの国の王が言う。
「元騎士団長という過去があるため、死刑は免除してやった。それでもまだ戯言を言うつもりか?」
「な、なにかあるはずだ!」
次の瞬間、処刑室は眩しい光に包まれた。
そして、指輪の中から人影のようなものが現れた。
(この指輪の精霊……?)
『う〜ん……この男は私を持つのにふさわしくないわ! だから素質のありそうなあなたの娘の所に行くね〜!』
そう言って消えていった。
そして手を見てみると、ミラの父の指から指輪は消え、部屋の外で待機していたミラの指には光り輝く指輪がはまっていた。
その後、ミラの両親はもちろん離婚し国外へ永久追放。
ミラは悪魔の契約者となってしまったため、宮廷で育てられることになった。
◇ ◇ ◇
「んで、そのまま郊外警備隊に入ったってわけ!」
「お父さん、本当に不倫してたんですね……」
かなり衝撃的な過去の話を聞いた後も、二人は草原の一本道を歩き続けた。
さっきよりも辺りは暗くなり、もうそろそろ陽は落ちきる時間になっていた。
こんにちは!あまないです!
今回はどちらかと言うとギャグ回でしたね…
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