第十三話 猪突猛進!!!
つい数秒前までの彼女独特の可愛い雰囲気は消え、その代わりに警戒心と殺意が彼女から感じられた。
「いるって、なにが……?」
「分からないけど……なにか大きな魔力が……」
次の瞬間、音もなく二人の右側から攻撃が飛んできた。それは今までで一番洗練された魔法のように感じた。
「くっ……!」
クラウスやプルウィアと同じ水属性魔法だ。なんとか信之が指輪の力を使って凍らせることができ、直撃は免れたが、明らかに攻撃の質が違う。そして、その魔力にはどこか自分と似たものを感じた。
(だ、誰だ……あれ……?)
攻撃の手が止んだ。
二人の視界に一人の人影が現れる。
水のような模様が入ったローブを身にまとい、顔はフードで隠れて見えない。しかし、その人物が放つ圧倒的な存在感は、今まで戦ってきた相手とは比べ物にならなかった。重圧だけで押し潰されそうになる。
「来る!」
フィリアがそう呟いた瞬間、案の定再び攻撃が放たれた。
しかも超広範囲。
この魔法はプルウィアとの一戦でも見たことがある。だが、それとは比べ物にならない。理不尽さすら感じるほどの圧倒的な水の質量攻撃だった。
「ッ……!」
信之は目の前に迫る巨大な水流を見据え、深く息を吸う。
「ジェルアーレ!!!」
魔力を指輪へ一点集中させる。いつものように少し魔力を込めればいいという話ではない。
次の瞬間、一瞬で巨大な水流は氷へと変わった。
謎の水属性魔法使いは、自らの魔法が凍り付いた光景を何も言わず見つめている。
やがてフードが風で外れた。
そこにいたのは、この世界では珍しい黒髪ショートの美少女だった。角は生えていない。少なくとも魔族ではなさそうだ。
「お前ら、何者だ」
十秒ほど見つめた後、低い声で問いかけてきた。
「えっと……パウルスに帰ろうとしている旅人です」
そう答えた瞬間、嘘のように彼女の殺気は消えた。
よく見ると、その服装は警備隊か警察官のようにも見える。
「お前が……マレリスか……」
その声が聞こえた瞬間だった。
殺意に満ちたフィリアが、とてつもない速度で相手へ突っ込んでいく。
「ちょ、ちょっとフィリア! 多分この人は違う!」
「フランマ・イグラス!!!」
フィリアはスコルピウス強化種にも放ったあの魔法を全力で放つ。
しかし、水と火では相性が悪い。
炎は一瞬で打ち消され、三秒後、フィリアは気を失って地面へ倒れた。
◇ ◇ ◇
広い草原の一本道を歩いている。
「悪かったな、お前たち」
「い、いえいえ……」
あの後、気を失ったフィリアを回収しようと近づくと、その水属性魔法使いは普通に話しかけてきた。
そして、
『旅人なら最寄りの村まで案内するぞ』
と言われ、現在に至る。
信之の右隣には謎の水属性魔法使い。そして背中には、スヤスヤと気持ち良さそうに眠るフィリア。
「私はケントルム帝国郊外警備隊隊長、ミラだ」
「た、隊長!?」
話を聞くと、世界最大の国土を持つケントルム帝国では騎士団だけでは全土の治安維持が難しいらしい。そのため、郊外専門の警備隊が存在しているという。
「あの……もしかしてディアリングを持っていたりとか……?」
「ああ、持っている。私のは水属性の『アクア』だ」
そう言って、自らの左手人差し指にはめられた指輪を見せてきた。
間違いない。属性こそ違うが、自分と同じディアリングだ。
しかし、一つ疑問がある。
パウルスでは、この指輪を持つこと自体が重罪だ。なのにケントルム帝国で会った変態――アルレウスや、このミラは、むしろディアリングを誇りとしている。
「あの……なぜディアリングを持っていても犯罪にならないのですか?」
「お前、何言ってるんだ? この指輪は選ばれた者だけが身に着けることを許される指輪だぞ。グラキエスにビビっているパウルスとは違う!」
グラキエスという単語が出た瞬間、信之の背筋が冷たくなる。
(だって、そのグラキエスの所有者……僕なんだけど)
だが、どうやらミラはまだ気付いていないようだった。
信之は心の底から安堵する。
――そう思った、その時だった。
「それで、お前は何でグラキエスを持っているんだ?」
「…………え?」
バレていた。
その一言で、信之の心臓は一気に跳ね上がる。
心拍数は軽く二百を超えていた。
こんにちは、あまないです。
ミラみたいな強気なキャラって魅力いっぱいありますよね。
僕はこうゆうキャラも大好きです。
皆さんはどうですか?
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