第十二話 怒ってないよ?ホントだよ?
「な、なんでアンタがいんのよ!」
この男は、迷宮実習の一件があってから停学処分を受けていた。
「ちょうど今日、その期間が終わったところでね……」
相変わらず態度は気に食わなかったが、登場から色々とすごかった。まず、自分たちが一撃も与えられなかった相手に、次々と手応えのある攻撃を叩き込んでいく。
「アクア・フルクトゥース!」
あの時は信之にまったく通用しなかった魔法。しかし、その魔法をスコルピウスへ放った。
次の瞬間――スコルピウスは絶命し、魔力の塵となって消えていった。
そう。あれは信之が異次元だっただけで、この魔法をまともに受ければ、ほとんどの生き物は生き延びることはできないのだ。
「か、かっけぇーーー!!!」
倒した直後、一瞬だけ静寂が流れる。
同じ水属性魔法使いとして目を輝かせるクラウス。それに対し、キザな笑みで応えるブルウィア。
「でも、なんでこんな所に魔物が……」
この地域の地下にスコルピウスのような魔物がいることは分かっている。だが、この学校の施設には強力な結界が張られており、様々な脅威から生徒たちを守っているはずだ。
その時、何かに気付いたステラが廊下の脇へ走っていった。
「ア、アイラさん! これ……」
「こ、これは……」
結界が消えている。
弱まっているのではない。
完全に消失しているのだ。
誰が。何のために。
アイラとステラの間に沈黙が流れる。
すると、後ろから陽気な声が響いた。
「アイラ様ー! この後、魔道具店にでも――」
「停学は黙ってて」
火力の高すぎる暴言に、その場の全員が寒気を覚えた。
(信之……あなたは何者なの……?)
その心の声が誰かに届くことはなかった。
◇ ◇ ◇
「ハックション!!」
「どうしたの? 風邪?」
一方その頃、二人は少し肌寒い、どこまでも続く広大な草原を歩いていた。
「いや、知ってる人が僕の噂をしてるような……怒ってるような……」
『怒っている』という言葉を聞いた瞬間、フィリアはハッとした。
「やっぱ昨日のこと……怒ってる……?」
昨日のこととは何か。
話は昨日、味以外いろんな意味で終わっているシチューを食べ、謎の果物で気を失ったところまで遡る。
◇ ◇ ◇
「信之? 何してるの? 寝るならベッドで……」
(いや、体が動かないんですけど!?)
後に調べて分かったことだが、あの果物は食べた動物の魔力を吸い取って成長する果物だった。
信之は果実をかじってしまったため、もともと魔力が枯渇しかけていた体からさらに魔力を吸われ、すぐに症状が現れてしまったのである。
ちなみに丸呑みすれば魔力は吸われず、普通に美味しい果物らしい。
「あ、大変」
そう呟きながらフィリアは立ち上がった。
(お? もしかして助けてくれるのか? 早く回復魔法を……!)
彼女はそのまま信之に肩を貸し、ベッドまで運んで寝かせてくれた。
(マジでありがとう! さぁ! 早く回復魔法を――!)
しかし、彼女が取った行動は治療ではなく、ただの片付けだった。
「さて、信之も寝ちゃったし、片付けて早く寝よ……」
(……え?)
彼女は苦しんでいる信之には目もくれず、食器を片付け始める。
(ちょっと……このままだと……マジで死ぬ……)
ようやく異変に気付いたのは、夕食の片付けを終え、なぜか同じベッドに入ってきた後だった。
信之の顔色が完全に紫色になっていたのである。
その後、慌てて回復魔法をかけてもらい、本当にギリギリのところで九死に一生を得た。
◇ ◇ ◇
「いや、別に怒ってないよ。気付かなかったならしょうがないよ」
信之が笑顔でそう返すと、フィリアの口元もほんの少しだけ緩んだ。
「それより気になるんだけど、なんで同じベッドに入ってきたの?」
彼が気になっているのはそこだった。
あの後はほぼ気絶状態だったため記憶は曖昧だが、眠っている時に隣に人の温もりがあったことだけは、なんとなく覚えている。
「だって、体調悪そうだったし……寒かったから……」
そう呟きながら、フィリアは視線を逸らした。
いつも無表情で感情を表に出さない彼女だからこそ、その変化はすぐに分かった。
(もしかして照れてる……?)
「いる……」
「え……? いるって、何が……?」
そう聞いても、フィリアは息を潜めたまま周囲を警戒している。
信之には分からなかった。
だが、この時――
何かが二人へ迫ってきていた。
こんにちは、あまないです。
最近、人生で初めてラブコメに挑戦しようと頑張って書き進めているのですが苦手なのか少しペースが悪いです。なにかコツとかってあったりしますか?
先輩方!どうか…どうか教えてください!!!




