第十一話 久しぶりのキャラ
「やっぱり、信之くんのことですか?」
図星だ。
今、彼女の頭の中は彼のことでいっぱいだった。
一応、学校では休学中という扱いになっているが、一緒に苦楽を共にした大切な仲間であるからこそ、ステラを巻き込みたくなくて詳しい事情は話していない。
「ス、ステラ……私……」
アイラの心はもう限界だった。
大切な人がある日突然いなくなってしまい、その人を助けにも行けない。
ほぼ毎晩、枕を濡らしてしまうほど、彼女の心は追い詰められていた。
そんな時、優しい言葉を掛けてくれたステラに近づこうと、一歩を踏み出した。
(あれ? 体が勝手に……)
そのまま近づき、ステラに抱きつこうとする。
ステラもそれを優しく受け止めようと両手を広げた――その時だった。
激しい地響きと建物が崩れる音が、廊下の奥から響いてきた。
「逃げろーーー!!! ス、スコルピウスだ!!!」
砂煙で向こうは見えない。
しかし、その先からはたくさんの悲鳴が聞こえてくる。
さらに轟音が聞こえた方から、生徒たちが一斉に走って逃げてきた。
その波に飲まれそうになりながらも、二人はなんとか踏みとどまる。
「あ、アイラさん……あれ……」
ステラが震える指で前方を指差した。
その先には、洞窟で自分たちを襲ったことのある魔物の姿があった。
「また会ったわね……洞窟の魔物!!!」
アイラは腰の剣を抜いた。
もう前のようには負けない。
そう決意し、スコルピウスへ向かって駆け出す。
(もう前の私とは違うのよ!!!)
そんな思いを胸に斬りかかろうとした、その時。
無数の水の矢が魔物へ突き刺さった。
「アイラ様! 大丈夫ですか!」
スコルピウスの影から現れたのは、久しぶりの登場となるクラウスだった。
学校でも屈指の水属性魔法の使い手である。
「って、全く効いてねぇ!!!」
かなりの数の水の矢を撃ち込んだにもかかわらず、体が硬いのか傷一つ付いていない。
この硬い外殻を豆腐のように切り刻んでしまったイリスは、やはり化け物だった。
三人は一度、逃げることにした。
しかし、逃げ道は崩れた天井で塞がれている。
しかも、ここは地下教棟。
外へ出ることもできない。
(嘘でしょ……?)
三人に残された選択肢は、戦うことだけだった。
「おらぁーー!」
アイラは再び剣を振るう。
しかし、その刃はまったく通らない。
「二人とも離れてください!」
ステラが地形変形魔法で地面を突き上げ、鋭い岩の突起をスコルピウスの顎へ叩き込む。
だが、その効果も今ひとつだった。
(どうしよう……このままだと……)
こんな時、彼がいてくれたら――。
そんな考えが頭をよぎる。
「みなさんは逃げてください! 私が足止めをします!」
ステラが叫ぶ。
確かに、地形変形魔法が使える彼女なら時間を稼げるかもしれない。
だが――
「ダメよ! アンタを一人にはできないわ!!」
アイラは即座に叫び返した。
すると、クラウスも力強く続ける。
「そうだ! 女の子一人に任せるなんて男として失格だ!」
一人の土属性魔法使いが、その言葉に少しドキッとしてしまったことは置いておくとして。
主人公は不在。
それでも、この三人は迷宮を乗り越えてきた仲間だ。
今回だって、きっとどうにかなる。
――そう信じていた。
しかし、現実は甘くない。
三人がいくら攻撃してもスコルピウスはびくともせず、魔力も底をつき始めていた。
(もう……無理なの……? アイツに会えないまま……)
ほとんど諦めかけた、その時だった。
スコルピウスの後ろから、再び大きな地響きが聞こえてくる。
「な、何?」
次の瞬間。
圧倒的な質量の水が奔流となってスコルピウスへ襲いかかり、その巨体を大きく吹き飛ばした。
「久しぶりですね、アイラ様……」
そこに立っていたのは――
信之が入学して間もない頃、勝負を挑んできて返り討ちに遭ったアクア家次期当主。
ブルウィアだった。
こんにちは、あまないです。
今回はかなり短いですが、これには理由は…
ありません。ここで切っておかないと次が5000文字ぐらいになっちゃう
気がするので切らせていただきました。




