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僕がなろう系で貴族になる話  作者: あまない
二章 お家に帰りたい
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第七話 迷ヒロイン

「ど、どういうことよ! お父様!」


パウルス公国シュヴェルト家にて、イリスを地下牢に入れた日の夜。


アイラは信之を迎えに行くと父のルッツに申し立てたが、聞き入れてくれなかった。


「アイラ、今の西諸国情勢がどうなっているか知っているか?」


西諸国とは今まさに信之たちがパウルス公国へ帰ろうと旅をしている地域のことだ。


現在、西諸国では魔族の動きが活発になっており、それに伴って政治情勢も不安定になっている。


「……私だけ行ってはダメなの?」


ルッツは少し下を向いて考えたが、その考えは変わらなかった。


「考えてみなさい。パウルス公国公爵の娘が悪魔の契約者を連れ帰るために来たと分かれば、他国は自国への牽制と捉える可能性がある」


アイラは言葉に詰まった。


確かにルッツの言う通りだ。国の重要人物が悪魔の契約者と繋がっていることが公になれば、様々な問題が起きる。そして彼女自身も、自分がどんな立場にいるのか理解していた。


「で……でも!」


しかし、簡単には諦められない。


自分に優しくしてくれて、自分を助けてくれて、自分を受け入れてくれて……


『剣持ってる時と重さ変わんないな』


そんなことを考えていたら、あの日の夜のことを思い出した。


彼の言葉を思い出して頭にきた。


しかし、それと同時に心に少し余裕ができた気がした。


「そ、そうね! アイツだって一応悪魔の契約者だし……そう簡単に死ぬわけないわよね!」


イリスの処分については現在学校側と話し合っているとルッツから聞かされた。


アイラはそう言って軽く頭を下げると、ルッツの部屋を後にした。


部屋を出て扉を閉めると、彼女は壁にもたれかかり、自然と信之の顔を思い浮かべた。


(そうだよね……アイツは強い……魔族ごときでアイツは倒せないわ……)


その瞬間、彼女の顔にはほんの少し笑みがこぼれた気がした。


「アイラ様、少しよろしいですか?」


壁にもたれかかっていると、廊下の向こうからルーラが歩いてきた。


考え事に集中していたせいで、話しかけられるまで全く気付かなかった。


「どうしたの? ルーラ」


彼女の手には何やら手紙のようなものが何枚も握られている。


そして、少し暗い表情をしているように見えた。


「これが……信之の机に……」


深刻そうな表情のまま、ルーラは手に持っていた手紙をアイラへ渡した。


(なにこれ……アイツに文通する相手なんていたかしら……)


アイラは封を開け、中の文字を読んだ。


どうやら差出人は女性らしい。


(えっと……? ……って……え……?)


二行ほど読み進めたところで、アイラの思考は止まった。


「な、なにこれ……」


そこに書かれていた内容は衝撃的だった。


『信之君、はじめまして。私は隣のクラスのクラファと申します。つい先日のプルウィアさんとの一戦を見て惚れてしまいました。よろしければ今度、街のお店へご一緒しませんか?』


なんと、信之宛てのラブレターだった。


アイラはその場で固まってしまう。


「アイラ様、その……このような手紙があと二十枚ほど……」


いつもはアイラと信之の母親のような存在であるルーラが、こんなに歯切れ悪く話すのは珍しい。


「の、の、の……!!」


アイラの手も足も震えていた。


かなり動揺しているようだ。


「あの……アイラ様……?」


そして彼女は大きく息を吸い込み――


「信之ーーーーー!!!!!!」


その叫びは屋敷中に響き渡り、周囲の森の動物たちまで驚かせているようだった。


◇ ◇ ◇


「ふしゅっ! 寒くない……?」


一方その頃、パウルス公国へ帰るための旅を続けている二人は、王都レギアティスを出た先の森で野宿していた。


昼間、あの金ピカの衛兵《だんちょう》に見送られてから丸一日が経っていた。


太陽は完全に沈み、辺りはかなり冷え込んでいる。


「信之、早く夜ご飯作って」


向かいで毛布にくるまっている猫のような生き物はフィリアだ。


目の前には先ほど川で獲れた魚と、携帯用の調味料の「さしすせそ」が並んでいる。


魚を焼き終えると、フィリアはクマのような勢いで魚にかぶりついた。


「美味しい。信之、ホントに焼くの上手い」


他に食材が何もなかったので、少ししょうゆ多めの味付けをしたシンプルな塩焼きだったが、案外喜んでくれてよかった。


そしてフィリアは、食べ物を食べている時だけほんの少し、本当に少しだけ笑みがこぼれている気がする。


もしかするとフィリアは、かなりの食いしん坊なのかもしれない。


「ホントだ。結構上手く焼けてる」


信之も自分で食べてみたが、自画自賛してしまうほど今日の魚は上手く焼けていた。


「そういやフィリアって、どうやってあの魔族に捕まったの?」


信之がそう聞くと、お腹が空いていたのか、今回は食べる手を止めずにそのまま喋り始めた。


「えっふぉね、あのふぉきは……」


このままでは聞き取れないので、口の中の食べ物がなくなってからもう一度聞いた。


「夜、食べ物がないって街を歩いてたの」


まずこの時点で、アエニグマのお姫様とは思えない。


それでも信之は話の続きを聞いた。


「そしたら裏路地から美味しそうな匂いがして、その匂いをたどったら、あの馬車から出てることが分かって、その馬車の中にあるパンを食べて……気がついたらあの森にいて……」


『バカ』と言うべきなのか、『辛かったね』と言うべきなのか非常に迷う回答だったが、ここは後者を選んだ。


(……にしても眠いな)


寝不足のまま一日中歩いたので、眠気は頂点に達していた。


「眠い? 信之」


「ちょっとだけ」


今すぐにでも寝たい。


しかし、フィリアにキャンプファイヤーの後始末を任せると、最悪の場合、自分まで燃やされてしまう。


簡単には眠れない。


「ん〜……」


そんな感じで眠気と戦っていた信之だったが、突然フィリアが立ち上がり、信之の隣にちょこんと座った。


「ん? どうしたフィリア?」


そう聞いた次の瞬間、フィリアの頭が信之の膝の上に乗っかった。


「うわぁっ! って……え?」


少しの間、思考が停止する信之であった。


こんにちは!あまないです。


フィリアの可愛さがめちゃくちゃ大きく出ましたね…


でも推しはステラです。皆さんの推しは誰ですか?


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