第四話 やっぱりさ…
「何にもないね」
「そうだね」
こんな感じの会話がずっと続いていた。
だって、本当に何もないから。
歩いても歩いても木しかなく、魔族の国が近くにあるせいか、人間とも会わない。
「僕たちも魔族みたいに転移魔法が使えたらね……」
信之は最初、禁断の闇魔術か何かでパウルスから一晩で移動したのだと思っていた。
だが、フィリアの話によると、魔族は転移魔法を操ることができる唯一の種族だという。
(だから迷宮実習の時もいきなり出てきたのか……)
そこから、とにかく歩き続けた。
最寄りの町は、ファルシタスを見張るために作られた町『レギアティス』。
そこまでは歩いて三日ほどかかるのだという。
朝から晩まで一日中歩き続け、ようやく夜になった。
二人は持っていた布で簡易的なテントを作り、寝床を確保する。
そして近くから枝を集め、小さなキャンプファイヤーをした。
(お腹……スイタ……)
何も食べるものがないので、二人は会話をして空腹を紛らわせることにした。
「えぇ!? フィリアってお姫様なの!?」
話を進めていると、衝撃の事実が明らかになった。
なんとフィリアは、アエニグマ魔導国総帥の娘だったのだ。
「そんなに驚くこと?」
彼女は真顔でそう言ってきた。
「いや、驚くでしょ普通」
でも今の会話で、フィリアがさらわれた理由が分かった。
よく分からないが、異世界ってとりあえず偉い人の子供をさらっておけば何かしらのイベントが起こる。
そこに主人公が助けに来たり……
(あれは助けたうちに入るのか……?)
確かに最初は馬車から彼女を抱えて木の陰に隠して守りはした。
だが、先ほどの強化版スコルピウスに対しては何もできなかった。
「早く寝よ、信之」
「あ、うん」
パチパチと燃えるキャンプファイヤーを横目に、枕などもちろんない硬い地面へ横になる。
疲れているせいか、案外すぐに眠ることができた。
◇ ◇ ◇
「つ、疲れた……」
「ようやく見えたね、王都」
フィリアがお嬢様だと分かった日から二日後。
彼女の進むペースが早かったおかげで、予定よりかなり早く到着することができた。
(これがレギアティスか……)
前に訪れたリベリタスは、どちらかと言えば田舎寄りの王都だった。
しかし今回のレギアティスは、周囲をとてつもなく高い城壁に囲まれた要塞都市のような姿をしていて、中の様子はまったく見えない。
おそらく、魔族の国が近くにあるためだろう。
(しかし、どう入るか……)
ここは世界の中心の国、『ケントルム帝国』。
約千年前に魔族と直接戦った国であり、軍事国家の名残が色濃く残っている。
四百年ほど前までは軍が政権を担っていたが、『なんか違うな……』となった結果、現在は皇帝が治める帝国となった。
それでもなお、軍部は今も大きな力を持っている。
(まぁ全部ルーラに叩き込まれた知識なんだけどね)
しかし、どうやって王都に入ろうか。
世界の中心の国の王都。
しかも魔族の国に最も近い街ということもあり、警備は厳重だった。
(衛兵こわ〜)
門の前には、鋭い眼差しで前を見据える衛兵が左右に立っていた。
明らかに強そうなオーラを放っている。
「おいおい、そこの子どもたち〜〜?」
フィリアと門へ向かっていると、後ろからチンピラ冒険者三人組に絡まれた。
「あ、はい」
二人は同時に振り返る。
「お前、いい服着てんじゃねーか。その服くれよ」
信之はシュヴェルト家の紋章が入った最高級の制服を着たままだった。
前世から超平和主義者な彼は、こんな時どうすればいいのか知っている。
「はい、どうぞ」
一瞬の迷いもなく、信之は制服のジャケットを脱いで差し出した。
ここで反抗すると面倒事になるだけだ。
「ハッハッハ! お前面白いな! じゃあ次はそのズボンを……って、ん?」
服を奪ったチンピラの手首を、フィリアが掴んだ。
「あ? なんだお前?」
チンピラは鬼の形相でフィリアを睨みつける。
「お前、顔いいな……そうだ、コイツももらっていく――」
その瞬間、フィリアが手首を掴んだチンピラ冒険者は炎に包まれた。
「うわぁぁ!!! 熱っ! 熱っ!!」
炎の中からチンピラの悲鳴が聞こえてくる。
「ちょちょちょっとフィリア! ストーーップ!!」
その後、仲間のヒーラーのおかげで、チンピラはなんとか一命を取り留めた。
フィリアと信之は、治療でチンピラたちがパニックになっている隙に、さりげなくその場を離れた。
「なんで燃やしたりなんかしたの?」
フィリアは真顔で答える。
「私たちの財源が奪われそうだったから」
フィリアは財源――つまり信之の制服を守ろうとしてくれたのだ。
その財源は、彼女の手によって黒焦げになったけどね。
そして、なんやかんやあって門へたどり着いた。
だが、そう簡単には中へ入れてくれそうになかった。
こんにちは!あまないです!
投稿少しだけ空いちゃってスイマセン!
リアルの生活が少しだけ忙しくて…
でも来週の日曜(十二日)からは毎日投稿になるので
許してください!




