第一話 新たな旅
(ん…?なんだこれ?)
目が覚めると、辺りはひんやりとしている。夜になってしまったのだろうか。
そして、顔には袋のようなものが被せられ視界が遮られている。手と足も紐で縛られて見動くが殆どできない。
(ここは車…じゃなくてこの世界じゃ馬車の荷台か…?)
信之の耳には車輪が回って地面の枝などを折る音、荷台が段差などでガタガタと揺られる感覚、微かに感じる風が伝わっている。
(…ん?隣にも誰かいるのか?)
信之の右腕に人間の温もりがあるような気がした。耳を済ますと呼吸をしていることが分かった。
(誰かは分からんが敵…じゃないよね…?)
殺意などは感じないので一端後回しにする。
しかし、前に誰かいる気がした。
『いやーアイツチョロかったよな!』
『そうだな、いいカモになってくれた』
馬車の運転席には二人いた。どちらの声も聞いたこと無かった。
(アイツってだれだ?)
聞き耳を立てて二人の話を聞いてみた。
『あの校長、親父の情報をやるっていったらあっさりグラキエスの居場所を伝えたな!ついでにアエニグマのガキも…』
その言葉を聞いた瞬間、理解した気がした。
そうだ思い出した、イリスに眠らされたのだ。そこからの記憶が無い。
最後にイリスが水晶で誰かに連絡していた。その相手がこの二人だったのだ。
そしてイリスに指輪ごと自分が売られたと理解した。
(とりあえず、紐を切らないと…)
信之は氷魔法で刃物を作り、こっそりと手を縛っていた紐と足の拘束を解いた。
(しかしどうする…どうやって逃げようかな…)
目の前にはイリスを利用した人間二人、隣にはおそらく敵ではない人間一人、この人を守りつつ安全にここから逃げ出す策を必死に考えた。
(あ、そうだ…よいしょっと…確か持ってたはず……)
信之はポケットからあるものを取り出した。
思いついた策はと言うと……
「〜だよな!って、ん?何か荷台で音がしなかったか?」
「んなわけないだろw!あの睡眠薬を飲んでるなら明日の夜までは寝ているはず…」
しかし、音が気になったのか二人は同時に振り返った。
二人の視界に入ったのは魔族だった。
「なんだこれ?」
「投影魔法だな、それも魔族の」
迷宮実習の時、馬車のスピード対決のときに使った魔族を投影する魔道具がまだ一つ残っていたので前と同じ用に怖がらせようと思ったが全く効かなかった。
なぜなら相手も魔族だったから。
(っしょうがない!!)
信之は一瞬で顔に被せられていた袋を取って、隣りにいたもう一人を抱きかかえて馬車から飛び降りた。
「おい!やっぱ起きてるぞ!」
「すぐに捕まえてこい」
信之は降りてすぐ、抱えていた子を木の陰に隠した。
これから始まるであろう戦闘に巻き込まないようにするためだ。
「クックックッ…ヒーロー気取りか?どうせ今から殺されるというのに…」
「私達の目的はその指輪のみ…貴様の生死などは関係ない…」
二匹の魔族は馬車を止め、こちらに向かって歩いてきた。
信之は指輪の力を使おうと構える。
「おいおい…グラキエスを使おうってのか?お前のようなガキに」
「諦めろ、貴様はマレリス様に捧げられる運命だ」
信之のグラキエスは安全に使うのには準備がいる。
しかし、今回はそんな準備なんてなんにもしていない。
(クッソ…かなり無理矢理にはなるが…!!)
「だから諦め…」
「ルビュート!」
次の瞬間、信之の出した氷柱により二匹の魔族は串刺しになり絶命した。
「よし!上手くいった…」
信之は倒れた。
一番最初に、アイラたちの馬車を助けたときと同じ感覚だ。
あの時に生成した氷柱の10倍近くの量と質で氷柱を生成した。
(あぁ…久しぶりだな…この感覚…)
信之は知らない不気味な森の中で気を失った。
彼が気を失ってすぐ、抱えて木の陰に隠した子の顔に被せられていた袋が取れた。
「スー…スー…」
呑気に眠っていたが、その袋の中にはイリスに少し似ている気がするような顔の女の子がいた。
こんにちは!あまないです!
始まりました第二章!
新たな旅が始まる予感…
7月の12日までは2日に一回投稿できたらな…
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