第27話 「ホントに魔法使い?」
暗い迷宮の一室には、三人の男と一人のお嬢様がいた。しかし、また水をかけられる。これで水筒何本目だろうか……
「ゲホッ!……はぁ……はぁ……」
「いい加減吐いたらどうですか? シュヴェルト家のご令嬢、アイラ・シュヴェルト様?」
「オェェェ……気持ち悪!」
一方その頃、信之パーティーは謎の空間を信之が転んだおかげで見つけ、そこへの侵入方法を模索していた。しかし、当たり前だが叩いても叩いてもこの岩の壁はビクともしない。叩いて出てくるのは蜘蛛だけだった。
「クラウス? 大丈夫?」
「蜘蛛……苦手なんだよ……」
クラウスの意外な弱点を見つけた。しかし困った。謎の空間を見つけたというのに手を付けないのはファンタジーモノとして失格だ。
「地形変形を試してみます」
ステラは土属性魔法使いなので手に触れた地面や壁を変形させたり、新たに生成したりすることができる。
「やっぱできませんね……変形防止の魔法がかけられています」
すごく困った。ステラの魔法が使えないし、クラウスの水魔法に信之の氷魔法もこの状況には相性が悪い。信之は必死に打開策を考えるが……
「諦めるか」
「「賛成」」
諦めた。しょうがないよね? だってなんにも解決方法がないんだもん。そんな言い訳を信之パーティーメンバーは自分に言い訳をした。そして三人は先に進んだ。
「あともうちょいで最下層だぜ!」
クラウスのテンションが進めば進むほど上がってくる。そしてどんどん辺りは暗くなっていき……
「着いた! 最下層だ……」
信之が一瞬歓喜の声を上げたが、三人はすぐに固まった。なぜなら目の前に推定二十匹はいるスコルピウスの群れがいたのだ。そしてその周りには気絶しているアルム生も何人かいた。
三人は静かに後退りをして来た道を全速力で戻った。
「ムリムリ勝てない!! 逃げろ!!」
「ステラ! ステラ! 壁だ壁!」
「クレアーレ・ウォール!」
しかし、スコルピウスの群れはステラが魔法で作った壁を豆腐のように突き抜けてしまった。
氷魔法を使おうとしても信之はまだかなり未熟なので、そんなにいきなりは発動できない。プルウィア戦のときは戦うと分かっていたから準備できた。アイラの洞窟救出のときもそうだ。しかし、魔力を温存しておきたかった信之はそんな準備はしていない。
「はぁ……はぁ……な、なんとか……」
「信之君、私、もう魔力が……」
三人は岩陰に隠れた。しかしその周りはスコルピウスによって完全に包囲されていて、しかもステラは魔力切れ寸前。半ば諦めていた。
しかしその瞬間、信之はひらめいた。
「そうだ! クラウス! いいことひらめいた!」
信之はその思いついた作戦をクラウスに伝えた。
「おい……それ本当に大丈夫か?」
「大丈夫! 僕とステラがいい感じに援護するから!」
念密に計画を立てて三人は手を合わせ一致団結した。
「はぁ……はぁ……もう……もうやめてよ……」
アイラの周りはバケツ一杯をかけられたぐらい水浸しになっていた。
「彼のことを教えてくれるのならすぐに解放しますよ?」
プルウィアの部下がまた水筒の水を頭からかける。アイラは冷水をかけ続けられたせいで頭の感覚も段々と失い始めていた。
「私は彼の強さが知りたいだけなんです。パウルス公国の名家、いまや公国の管理までしているシュヴェルト家のご令嬢、アイラ・シュヴェルトがそこまでして隠したい理由も知りたいだけなのですよ」
プルウィアの冷酷な顔は最初から何も変わっていなかった。周りにはかけ終わった水筒があちこちに転がっている。
「あんた……こんな事をして……た……ただで済むと思ってるの?」
「たしかに、この事を学校側に報告すれば私は退学どころでは済まないでしょう」
そのとおりだ。もしこの風景を教職員に見られでもしたら、プルウィアのみならずアクア家にも甚大なダメージだろう。
「しかし証人がいません。そしてこの二人は私の部下です。いくらあなたが訴えかけたところで何も起きません」
プルウィアの言う通り、この状況を証明してくれる人間がこの場にはいないのだ。
「こんなことやっても……アンタなんかが信之に勝てるわけ無いわ!」
アイラがプルウィアにこう訴えかけても、プルウィアの目は変わらない。そしてプルウィアは転がっていた水筒でアイラの頭を叩いた。
「うるさい、黙れ……」
アイラがそう言った瞬間、プルウィアの目の色が変わった。
「俺は将来アクア家のトップに立つ男だ。たかが小国の雑用執事ごときに負けたままだと名前に傷がつくんだよ……分かるだろ?……やれ」
プルウィアが合図すると、二人の部下はまた水をかけ始めた。
(もう限界……だれか……助けてよ……)
その瞬間、アイラがいる部屋の出入り口から轟音が響いた。
「死……死ぬかと思った……」
「信之ーー! 無事か?」
「なんでこんなに無茶なことするのですか?」
アイラの目の前には見慣れたパーティーメンバーがいた。なぜか周りに気絶しているスコルピウスが大量にいるが、三人は壁を破って入ってきた。
「の、信之? なの?」
「な、なぜ入ってこれた!? この部屋の周りには魔法攻撃無効の結界が貼ってあるのに!」
ステラの地形変形がなぜ使えなかったのかがはっきりとした。しかし、そんな結界は効かない。なぜなら圧倒的物理攻撃で無理やり侵入したからだ。
ではどのようにして入ってきたのか……
時は五分ほど遡る。
「な、なんだって? お前本気で言ってんのか?」
作戦としてはこうだ。まず信之が囮となりスコルピウスを誘う。
「ほら来いよ!!! 獲物はここだぞ!」
信之に向かって走り始めたらステラがスコルピウスの周りに壁を作り、できるだけ一点に向きを調節する。
「ま、魔力切れです……」
「ここからは俺に任せろ! 信之! いくぞ!」
もし途中でステラの魔力が切れてもクラウスがいる。
「アクア・カデンス!」
「ジェルアーレ!」
クラウスが出した滝を崩壊しないうちに信之の氷魔法で凍結させ、新たな壁を作る。そうして、空間があると思われるあの壁に誘導する。
しかし、このままだと信之にスコルピウスの総攻撃が当たってしまう。でも大丈夫。
「ルビュート!」
信之が壁につき、スコルピウスが壁に来るギリギリまで粘り、自分を氷の壁に閉じ込める。そうしてスコルピウスは壁に激突し、壁には魔法を使わずして開けた大きな穴が空き、物理的に突破することができる。
これが信之の考えた『オトリで大穴開ける作戦』だ。
「ふ……ハッハッハ……いや〜まさかご本人様が自ら来ていただけるとは……」
プルウィアは不敵な笑みを浮かべる。
「ア、アイラ!!!」
「アイラ様!」
「アイラさん!」
メンバーはこの時初めてアイラがそこにいることに気がついた。信之は水浸しで今にも泣きそうな、手と足を縛られた彼女の姿が目に入った。
「プルウィア様! 何をしているのですか?」
「おやおや、見つかってしまいましたね……見られたからにはただで返すわけにはいきませんね……」
次の瞬間、信之の目の前に炎攻撃が見えた。
こんにちは!あまないです!
しっかし本当にやなやつですよねプルウィア。でも
こうゆう悪役がいないと異世界系は面白くないですよね?ね!?
次回、信之、✕✕される…




