表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕がなろう系で貴族になる話  作者: あまない
第一期 悪魔と契約〜迷宮実習
22/26

第22話 「氷漬けと家なき魔法使い」

「な……なぜ分かったのですか……?」


「勘じゃよ……わしは昔、冒険者をやっていてな……」


その老人の話によると、昔ディアリングの力に魅了され、この指輪を追って旅をしていたらしい。


しかし結局、ディアリングと出会えたのは十五年前。


それもたった一度だけだった。


「彼に出会った時のことは、今でもはっきり覚えておる。その男は家族を捨ててまで旅に出て、魔族を狩り続けた」


その男もディアリングを持っていたらしく、一度感じた指輪のオーラをずっと覚えていたらしい。


「そうして、もしかしたらこのリベリタスに店を構えれば、またディアリングに会えるのではないかと思ってな……」


そんなに見たくて十五年間も待っていたのなら、見せないわけにはいかない。


信之はそっと手袋を外した。


「おぉ! ……これが……ディアリング……しかも……グラキエスではないか!」


「そんなに珍しいんですか?」


またおじさん――じゃなかった。


商人の話に戻る。


この世界には七つのディアリング。


通称『悪魔の指輪』が存在する。


グラキエスもそのうちの一つだ。


しかし、その中でも特に珍しいらしい。


「グラキエスは魔王が直接使用していた指輪なのだ。それ故、適合者になるための条件が他の指輪より遥かに高い」


商人は信之の指輪を見つめながら続けた。


「千年以上の歴史を持つディアリングの中で、グラキエスの適合者になれたのは魔王と、もう一人の男……そしてお前さんだけじゃ」


その言葉を聞いた瞬間、胸が高鳴った。


歴代で魔王を除けば二人しかいない適合者。


そのうちの一人が自分なのだから。


(もう一人の男は、あの禁書庫の本の人か)


信之は以前、禁書庫へ無断侵入したことがある。


そこにグラキエスに関する本があった。


もう一人の男というのは、間違いなくその著者だろう。


「お前さんのようにディアリングを持つ者に渡すものがある。ついてきなさい……」


そう言って商人は路地を歩き始めた。


信之も後を追う。


そして少し歩いた先に、人目にまったく付かない小さな店があった。


「おじさん、ここって誰もいないね――って、ギャーーーーー!!」


店へ入った瞬間。


上から骸骨が降ってきた。


「それはわしが昔狩った魔族の骸骨じゃ。意外と金持ちには売れる」


商人は平然と言う。


「あと、おじさんと言うでないと言っておるじゃろ」


そう言いながら、商人は店の奥で何かを探し始めた。


「何探してるんですか?」


「待て待て! ついにアレを渡す時が……!」


なんだか一人で盛り上がっている。


まあ、すぐ見つかるだろう。


そう思っていた。


この時までは。


◇◇◇


「あったあった! これじゃ!!!」


「ねぇ、何時間探してんの?」


外を見る。


太陽はほとんど沈みかけていた。


このおじさんは三時間近く、何も言わずに物を探していたのだ。


(せめて『ちょっと長くなるけどごめんね』くらい言ってよ……)


「ほれ、お主にこれをやろう」


「なんですか? これ?」


手渡されたのは小さな緑色の巾着だった。


「ディアリング所有者専用の魔力増大剤じゃ」


その名前を聞いた瞬間、信之は確信した。


これが女神の言っていた物なのだと。


「いいんですか!? あ、せめてお金を――」


「いや、いらん」


商人は首を横に振る。


「ワシはこの指輪が見られただけで大満足じゃ……」


「おじさん……」


今この瞬間だけ、この商人が世界で一番格好良く見えた。


だが。


腕に違和感があった。


指輪をはめている左手の人差し指が妙にムズムズする。


信之は視線を下へ向けた。


そして見てしまった。


商人が魔道具のようなもので、ディアリングを外そうとしている姿を。


「お……じ……さ……ん……?」


「な、ななななんじゃ!? いきなりそんな顔をしよって……」


商人は焦ったように手を引っ込める。


そして――


「って、なにしようとしておる? お主にその薬をやったじゃろ……」


一秒後。


おっさんは氷の中に閉じ込められた。



◇ ◇ ◇


「信之〜! どこ行ってたんだよ!! みんな探してたんだぞ!」


「あー、ごめん」


スラム街の通りを出て大通りに出ると、意外にもすぐ今回の迷宮実習のパーティーと再会できた。


アイラとステラの手には大量の紙袋が抱えられている。


「マジであの後大変だったぜ……アイラ様がチンピラに絡まれるわ、ステラが迷子になるわ……」


後ろではアイラとステラが楽しそうにおしゃべりしている。


それにもかかわらず、クラウスは死んだ魚のような目をしていた。


信之はそんな彼の愚痴を聞きながら、リベリタスの大通りを歩いた。


しかし、アイラには少し元気がないように見える。


何かあったのだろうか。


「そういやみんな、そろそろ宿取らないと」


クラウスが言った。


「そうね」


「わ、わかりました」


そんなこんなで、僕たちの宿探しが始まった。


このとき全員、


『せっかく宿も自由なんだから、ちょっと良いところにしたいな』


と思っていた。


この時までは――。


◇◇◇


「ま、満室? ここも?」


「はい。本日はアルム生の方々が街に多くいらっしゃいましたし、本日は特にリベリタス全体でお客様が多く……」


(オワタ……)


一応、いろいろな所をたらい回しにされた末、滑り込みで馬車の予約だけは取れた。


しかし宿は違う。


あれから何件回っただろう。


どこもかしこも満室だった。


信之パーティーは完全に途方に暮れていた。


そんな中、クラウスが勢いよく手を挙げた。


「みんな! 誰でも無料で絶対に泊まれる場所を知ってるぜ!!」


そう言って道具屋へ走っていく。


しばらくして戻ってきた彼の手には、大量のキャンプ用品が握られていた。


(おい……まさかそこって……)


◇◇◇


「クラウスー! そっちをもっと引っ張ってくれ!」


「了解!」


結果。


僕たちは街を出て、最初に転移してきた丘の近くでキャンプ――という名の野宿をすることになった。


仕方がない。


このまま街中で寝るわけにもいかないのだ。


「なんでリベリタスにまで来て野宿なのよ……」


「まぁアイラさん、いいじゃないですか。ほら! この魚、本当に美味しそうですよ」


アイラとステラの女子組は料理。


信之とクラウスの男組はテント設営。


役割分担をしながらキャンプを進めていく。


最初は少し残念な気持ちもあった。


だが不思議なことに、だんだん楽しくなってきた。


みんなで火を囲みながら雑談をしたり。


くだらないことで笑ったり。


クラウスの水魔法でキャンプファイヤーが消えたり。


色々あったが、本当に楽しかった。


◇◇◇


「ふぁ〜〜……眠い……早く寝よ……」


テントは資金の関係上一つしかない。


少し不安だったが、みんな疲れていたのかすぐに眠ってしまった。


その時だった。


「信之、ちょっといい?」


「あ、アイラ。どうした?」


「ちょっと話に付き合って」


トイレから戻ってきた信之に、アイラがそう声を掛けた。


二人は先ほどまでキャンプファイヤーをしていた場所へ腰を下ろす。


そして消えかけていた火に、もう一度火を灯した。


◇◇◇


「どうしたの? アイラ」


「怖くないの? アンタは……明日の迷宮実習」


意外と普通の質問だった。


信之はてっきり、


『お金足りないから貸して』


とでも言われるのかと思っていた。


「怖いかって……そりゃ怖いよ。成績にも関わるし……」


「そうじゃなくて!! 迷宮そのものよ!」


アイラが急に声を荒げた。


「アイラ! 静かに……他の二人が起きるでしょ……」


「ッ……ご、ごめんなさい……」


二人は声を潜める。


しばらく沈黙が流れた。


そしてアイラがぽつりと呟いた。


「前に洞窟に閉じ込められたことがあったでしょ? あれから狭い場所が怖くて……」


信之は黙って続きを待った。


「あの時、私は何もできなかった。


帰ろうと思ったら後ろから魔法を受けて……


気が付いたらあそこにいて……


だから……今回も何もできないんじゃないかって……」


その声は震えていた。


普段の強気なアイラからは想像もできないほど弱々しかった。


◇◇◇


「アイラ……」


信之はそっと彼女の肩を抱き寄せた。


「あの時は一人だったかもしれないけど、今回は違う」


「……」


「僕もいる。


クラウスもいる。


ステラもいる。


だから大丈夫だよ」


少しだけ笑って続ける。


「まぁ、確証は持てないけどね……」


「ッ!!」


アイラの肩が跳ねた。


「バカ……暑いわよ……離れなさいよ……」


そう言って立ち上がる。


だが、その声にはいつもの鋭さがなかった。


「もう寝る……」


「え? あ、ごめん。急に……」


「……」


「アイラ?」


すると彼女は振り返らないまま言った。


「アンタのその言葉……一応信じるから……」


それだけ言うとテントへ入っていった。


◇◇◇


布団へ潜り込む。


そして顔を毛布に埋めた。


(大丈夫……)


(大丈夫……)


(大丈夫私……)


胸がうるさい。


顔が熱い。


でも、それを認めたくなくて。


(ドキドキなんてしてない……)


そう何度も自分に言い聞かせる。


しかし、その努力はあまり意味を成していなかった。


信之にはアイラの心の叫びが聞こえないまま――。


迷宮実習前夜は静かに更けていった。

こんにちは!!!あまないです

今回も長くなってしまいスイマセン…

でもここまで読んでくれた方には感謝しか無いです!!

続きもどうぞお楽しみに…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ