第21話 「失言と王都リベリタス」
「まったく……あんたのせいでひどい目に遭ったわよ」
今、僕達アルム魔法学校一年生の生徒は、学校からサピエンティア王国の王都リベリタスへ通じる森の中の転移魔法陣へと向かっていた。
昨日寝る前には、転移上限三人の転移魔法陣を一年生全員が同時に使うとなると、かなりの時間がかかってしまうのではないかと心配していた。
しかし、この学校は少数精鋭タイプの学校らしく、一年生全員を合わせても百人程しかいなかった。
「あの……それは八つ当たりというものでは?」
「うるさい」
「ハイ、スンマセン」
アイラちゃんは、先程信之が過去の戦闘で作った穴に落ちてから、ご機嫌が斜めであった。
「まぁまぁ、アイラ様。ここは私の華麗なる芸術魔法で心を癒やしてください……」
そう言ってクラウスは、自身の属性である水魔法で綺麗な噴水を作ってみせた。
「今すぐにそれをやめて。濡れる」
「ガーーン……」
クラウスはこの世の終わりのような顔をして膝から崩れ落ちた。
「よく頑張ったよ、クラウスくん……」
すかさず信之はクラウスの肩をポンポンと叩いて慰めた。
「ア、アイラさん。これからせっかくの王都での自由行動なんですから……その……げ、元気出していきましょう!!」
そこに登場したのは我らが天使様、テラ・ステラ様だ。
この笑みの周りにはキラキラ〜というエフェクトが異常なほど似合う。
さすがのシュヴェルト家ご令嬢、アイラ・シュヴェルトでも、この天使の笑みには刃が立たなかった。
「ま、まぁ……今回は私の不注意だし……その……ごめんなさい……」
「いやチョロ」
一秒後。
朝イチの森の中に甲高い音が響いた。
そして信之の頬は、アイラの渾身の一撃によって張り倒された。
「信之君、大丈夫ですか……?」
華麗なビンタを食らって三十分後。
ようやく信之パーティーの順番が目前になった。
「大丈夫大丈夫。まぁちょっと感覚ないけど……」
「あんたが悪いのよ……」
真っ赤に腫れ上がった頬は、ステラが回復魔法で治療してくれた。
ステラは戦闘能力こそ低いが、治癒魔法においてはこの学校で右に出る者はいない。
「本当にステラは治癒魔法が上手いね」
「あ、ありがとうございます。でも、あのプルウィア様に圧倒的な実力差で勝ったのに、治癒魔法は使えないのですか?」
「え? えっと……ぼ、僕は氷魔法以外の魔法は全く使えないんだ」
そう。
今まで信之は言っていなかったが、ディアリング所有者は所持している属性魔法以外は全く使えないのだ。
故に、魔法使いの王道である攻撃魔法と治癒魔法の二刀流で強敵に打ち勝つ――ということはできない。
「へぇ〜……意外でした。てっきりどんな魔法も魔王並みに操れるものかと……」
(まぁ悪魔と契約はしてるんだけどね〜)
この指輪のせいで、学校の授業で行われる治癒魔法習得の授業などでは成績は万年最下位だ。
しかし、この指輪のおかげで魔力測定などではぶっちぎりのトップになれており、なんとかこの学校に生き残れている。
だから恨んだりは……少ししかしていない。
「次の生徒! 二人ずつこの上に乗ってください!」
やっと自分たちの番が回ってきた。
この魔法陣の一度の転移上限人数は三人なので、二人ずつ行くことにした。
「では先に行くわ」
最初はアイラとステラ。
その次に信之とクラウスで行くことにした。
先に行った二人が着いたのを確認した頃、男組も転移魔法陣に乗った。
「よいしょっと……」
「楽しみだな! 信之!」
「まぁ……そうだね」
魔法陣に乗ってすぐ、視界は白くなっていった。
「……着いたか……」
木の匂いがする。
おそらく森の中に移動したのだろう。
「うぉーーー!! すっげぇー!! 本物の王都リベリタスだ!!!」
目を開けると、目の前にはちょっとした坂があった。
クラウスはその坂を駆け上がった。
「……これが……本物の王都……アニメで見た通りの……異世界だ!」
坂を登って下を見下ろすと、そこには王都というイメージそのままの大きな街が広がっていた。
「ちょっとあんた達、崖から落っこちてリタイアとかやめてよ〜」
先に来ていたアイラとステラが後ろからトコトコと歩いてきた。
「なぁなぁ! 早く街に行こうぜ!!!」
「あ、お……おう……」
四人は街の入口へ向かって歩き出した。
そして、誰も後ろから見ていた人影には気付かなかった――。
街に着くと、四人は高校生らしく思いっきり遊んだ。
それはもう、本当に思いっきり。
最初に四人は自分たちの魔力量の測定をした。
「じゃあ次、ステラ」
「わ……私……ですか……?」
ステラは照れながら魔力量測定機に手を置いた。
「あ、今日の記録更新しちゃいましたね……」
「え? どういうこと?」
ステラは土属性魔法使いで、地形や地面などを形成するため、訓練ではよく実家に山並みの大きさの丘を作っていたらしい。
それを繰り返しているうちに、魔力量は勝手に増えていったそうだ。
「アイラ様より怒らせたらマズくね?」
「それな」
そんなクラウスと信之の会話で魔力測定は終わった。
次に行ったのは魔道具店。
ここは本当にステラが楽しそうで仕方なかった。
「あ! この魔導書は!! あ! この魔道具も!……」
「ちょっとステラさん! これも!!」
それ以上に楽しんでいたのはアイラだった。
シュヴェルト家は代々魔道具を扱ってきた家系なので、大体の魔道具は知っているらしいが――
「こ……このシリーズは……全部で七種類ある内の、家に唯一なかったディアリングのレプリカ! しかもグラキエス!!!」
(本物の所有者、ここにいるんだけどな〜……)
ちなみにこのディアリングのレプリカは、ほんの少しだけその指輪の属性魔法が見かけ上使えるという、実用性がまったくない代物だった。
「なんで女の買い物ってこんなに長いんだ?」
「それな」
その後、なぜか魔道具店の店員とアイラたちが意気投合してしまい、その店を出るのには三時間以上かかったとさ。
(そういや女神のあの助言……)
少し忘れかけていたが、信之は女神に『怪しい商人を頼れ』という助言を聞いている。
(商人が関わってるならここだよな)
この王都リベリタスには商人なんて無数にいる。
そしてここからの日程を考えると、商人と関わる機会はほとんどない。
そのため、女神の助言の答えとなる存在はここしかないと思っていた。
「クラウス、ちょっと行きたいところがあるから女子たちを見といてやって」
「おう任せろ! たとえ……どんな強敵が来ても俺の水魔法でこの魔道具店ごと水で流してやる!!!」
そんな事をしたら最悪退学だが、そこまで行く前にアイラたちが止めてくれると信じて店を出た。
少し歩いて人通りの少ない通りに入る。
(ここは……僕の世界で言うスラム街みたいなものなのか?)
通りを進むと、隣から怪しい声が聞こえてきた。
「おい……おい……そこの若者……こっちへ来なさい……」
(絶対このおじさんじゃん)
見るからに怪しく、そしてヤバそうなオーラを放っている老商人が話しかけてきた。
「あの……おじさん……?」
「おじさんと言うでない! 最近シワが増えてきて悲しくなっているのだ……」
(心はめっちゃ乙女で草)
そのおじさんは続けて話した。
「お前さん……ディアリングを持っておるな……」
その言葉を聞いた瞬間、時が止まった。
なぜバレたのだろう。
手袋をしている。
学校の誰も、校長のイリスでさえ見抜けなかった。
それなのに、出会って一分も経っていない相手が見抜いた。
その事実を受け入れた瞬間、信之は悟った。
――この老人は只者ではない。
こんにちは!あま・ないです
ついにやってきました迷宮実習!!!
もう書くのが楽しくてしょうがないです。
しかし、この老人は一体何者なのでしょうか…
続きの気になる方はフォローと応援よろしくお願いします




