美少女の誘いを断る
「シ、シラユキさん!?なんでこんな時間にこんな所に!?」
俺は飛び起きて、ベッドに正座した。
女性経験ゼロの俺にとって、深夜に女の子が自分部屋に来るという状況だけで、心臓の音がシラユキさんにまで聞こえるんじゃないかというくらい早鳴り、うるさい。
教室のモニターでは今までに見たことが無いくらいの数値が出ているだろう。
「…昨日の話、みんな信じてないわよ。道具を使わないなんて。もっと酷いことをするための前振りに決まってるって」
シラユキさんは一歩ずつ、俺のベッドに近づいてくる。
「でも、私はいいわ。肌を焼かれるくらいなら…あなたに抱かれて、ポイントを出す方がマシ。…お願い、今夜私を選んで」
ちょっと待って!
「私を孵化工場に行かせないって、ポイントで証明して」
シラユキさんがベッドの端に腰掛け、俺の手を取って自分の胸元へと導こうとする。
彼女の手は震えていた。
それは熱情ではなく、生き残るための焦燥。
文字通り命がけの接待をしに来ている。
「シラユキさん、やめてくれ!」
俺はシラユキさんの手を優しく、だがはっきりと意志を込めて押し返した。
「な、んで…?私の身体じゃ不満なの? それとも、もっと別の…やっぱり痛いことがしたいの?」
不満なんて無い。
シラユキさんはスラっとしているのに出る所は出ている抜群のスタイルの美少女だ。
こっちからお願いしたいくらいだ。
「違う! そうじゃないんだ!」
俺はベッドから転げ落ちるようにして距離を取った。
「今、シラユキさんがそこに居るだけで、俺の心臓はもう爆発しそうなんだ。もし今、シラユキさんとそんなことしたら…俺、一瞬で終わって…シラユキさんを満足させるどころか、情けない姿を見せるだけになる」
「…え?」
「それに…」
俺は床に座り込んだまま、真っ直ぐにシラユキさんを見上げた。
「シラユキさん、泣きそうな顔してるじゃないか。そんな顔してる子を抱いて、何が満足度ポイントだよ。そんなポイント、俺はいらない!」
「…バカじゃないの。私の事なんて好きにすればいいのに。工場に送られれば私のプライドなんて粉々にされるのよ」
シラユキさんは拒絶されたショックなのか?
呆然と立ち尽くしている。
「いいから、今日はもう寝てくれ。明日、別の方法を考えるから。道具もエッチも使わない、俺なりの戦い方をさ」
「…勝手にすれば。二ヶ月後、一緒に絶望すればいいわ」
シラユキさんは捨て台詞を残して部屋を出て行った。
◇◇◇◇
閉まったドアの向こう側で、彼女は自分の左手首に埋め込まれたデバイスを見つめていた。
拒絶された。
身体も触れ合っていない。
それなのに彼女の心拍数は跳ね上がっていた。
ピピッ♪
「なに?これ?」
デバイスが弱く薄く、淡く光っている。
デバイスには微弱だが今までで最も純粋な満足度スコアが記録されていた。
◇◇◇◇
三日目の朝、講堂に集められた男子七人。
相変わらず上位クラスの連中は気持ち悪い笑みを浮かべている。
「それでは二日目のポイントを発表する!」
教師が機械を操作すると、クラス別満足度ランキングのモニターが動き出す。
そこには…
A組三点。B組三点。C組三点。
D組一点。E組一点。F組一点。
とあった。
もちろんG組はゼロ点。
「それではまた、明日の朝…」
教師が立ち去るのを止めた男子がいた。
「ちょっと待ってくれ!明日からは集まるの無しでいいだろ!正直、だるいんだよ朝起きるの!それに…」
A組の男子が俺を見て勝ち誇った笑みを向けてきた。
「こいつ!このゴミには一生ポイントは入らないんだからな!知ってるか?こいつ昨日シたんだぜ!奴隷が寝室に行ったんだ!それなのにゼロポイントって!くははっ」
なんで、知っている?
監視カメラの映像が漏れてる?
それともクラスメイトの中に情報を流している子が居るのか?
「笑えるだろ!もう脱落者は決まってんだ!お前らも二ヶ月後からの本番に備えて少しでも休みたいだろ?」
「そうだな」「そうするか」
「僕もしばらく女はいいかな。ポイントが変わらないなら来る意味ないよね」
「俺も」「俺も」
「G組の君は?全員の同意があるのならそうしてもいいぞ!」
「はい、それでいいです…」
ギャハハ、と笑いながら帰っていく上位クラスの男子。
はぁ、昨日はあんなこと言っちゃったけど、本当にどうしよう。
いよいよ本気でエッチ無しでの攻略を考えなければいけないな。
でも何かありそうだとは思っている。
入学式でゲームマスターは去り際、俺のもとへ近付き小声で「君には期待している」と言った。
あれは何だったのだろうか?
早漏の俺に期待している?
それはエッチ以外で何かしらポイントが稼げるという事なのだろうか?




