最底辺男子、心拍数が上がる
「…何? 早く仕事をすればいいじゃない」
俺の目の前に座る美少女は、血の気が引いた顔で目を閉じ、俺の方へ首筋を差し出してきた。
何?この空気。みんな俺が何かするのを待っているのか?
本当にここでエッチするのか?
それに俺、ここにきて早漏を気にしている。
この間までは親友と自虐ネタとして話をしていたというのに…
「…やりなさいよ。どうせ、それが目的なんでしょ」
彼女にとって俺は快楽を強制してくる装置でしかないのかも知れない。
「早くして、痛いのは嫌いじゃないから…」
ギューと目を閉じ無防備に首筋をさらけ出す美少女。
「(ヤバい、どうしよう。女の子とこんなに近くにいるだけで…!)」
ムラムラした気分になってしまう。
ただそれでは他の男と同じになってしまう。
それに目の前の美少女が、死を待つような顔で震えているのにポイントの為に抱くのは違う。痛いのは嫌いじゃないなんて嘘だろ!
ただただ放っておけなかった。
「あのさ、その…さっき校長の話を聞いたんだけどさ。俺、怖くてさ…」
「…え?何?」
「心臓がバクバクして。見てよ、俺の心拍数が凄い事になってる」
彼女にドキドキしているのはモニターを見れば一目瞭然。
クラスの女子にバレる前にゲームマスターのせいにしてしまえ!
「…初めないの?私たちの存在価値はポイントでしょ?」
最前列に座る彼女はカサカサに乾いた唇を開きそう言って、自分のシャツの襟元を広げ鎖骨を見せつけてくる。
だからそれは止めてって!
胸の谷間が見えてるから!
「早く道具を出して…さっさとヤって。牧場送りでも何でもいいから。ねっ、王様」
「嫌だ!」
「…え?」
道具…バイブやローターを使っての絶頂はポイントにはならないと説明されたばかりだ。
そんな道具で女の子を虐める趣味もない。
「そんな道具を使うなんて、やり方わかんないし。俺は、やりたくもない!」
また教室の空気が緩んだ。
あきらかにホッとした空気。
「そう、この王様はアイツらと違うのね。なら今夜は私の部屋に来て、ポイントが欲しいんでしょ?」
「なんでそうなるんだよ!だいたい、なんでみんなそんなに死にそうな顔してるんだよ。俺、王様なんてガラじゃないんだ。ただ…」
俺は教卓に手をついて、必死に言葉を絞り出した。
「ただ、この二ヶ月間、誰も死なせたくないだけなんだよ!」
何なのこの男…?
さっきまで恐怖が顔に出ていた女子生徒たち。今度は困惑顔に変わったみたいだ。
「まあ、あれだ。まずは皆の名前を教えてくれるか?番号で呼ぶなんて嫌だからな!」
俺は必死に彼女たちの顔を見て、名前を覚えようとする。
六番の子の名前はシラユキさんか。
その誠実さになのか、一部の女子の心拍数が上がっている事に俺は気付いていなかった。




