第59話 アルフレッド回想3
過去
アルフレッド視点
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数カ月後、オレは自領であるメンデル領の北部問題に一定の区切りをつける事が出来た。
メンデル領の一部地域を占有した北部からの蛮族達を殲滅したのではなく、話し合いによって短期解決に道筋を付けられたからだ。
容易では無かったが蛮族とはいえ最低限の良識は備えていたし、外見も耳が丸く小さい以外は我らとたいして変わらなく、双方の通訳になる人間が居たからだ。
彼らも基本的に争いは好まない種族であり、南下は北部の寒冷化という環境変化を逃れての事。
私は父と相談しメンデル領の一部を彼らに割譲する事で事態の収拾を図った。
幸い領内に住民の居ない未開地があり、領民との軋轢も生みにくいとの判断もあったからだ。
領民の一部からは蛮族と領内で住まう事を不安視する向きもあったがそこは領主判断で黙らせた。
最終的には領民も無駄に血が流れるより共に生きる方が良いに決まっている。
いずれは蛮族もこちらの流儀を教えて領民に帰化させればメンデル領にプラスになるのだ。
そういったわけで数カ月という短期間で無血解決をしたメンデル領は、ほかの地域に先駆けて帝都に凱旋する事が出来たのである。
だが、たまたま相手が話しの通じる蛮族で運が良かったとも云える。
北部問題は今回で終わりではない。
蛮族とは幾多の少数民族達であり、その大半は個々の集団で完結する遊牧民族である。
国家を形成しておらず個々に独自の社会形態を持ち暮らしていた者達。
横の繋がりも薄い彼らは様々で中には好戦的な蛮族は幾つもあるし、広大な北部国境を持つ帝国において蛮族の侵入はひっきりなしなのだ。
そしてメンデル領を含め北部国境に接する領は数十もあり、蛮族との小競り合いは常態化している。
北部各領は蛮族への対応で疲弊してきており帝国本土の支援は不可欠なのだが、元老院の決定は『各領が個々に対応せよ』だ。
彼らは帝国内での政治闘争にご執心で、北部問題に真剣ではない。
メンデル領も財政悪化と領民の疲弊が著しく、今回の話し合い解決は最良の成果とも云えるだろう。
今後は他領にもこの様な事例を増やしていけば、北部問題は無くなるかも知れない。
「父上、どうにか終わらせられました」
「アルフレッド、今回は文字通り話しの分かる相手で良かった。武力鎮圧していたら双方に犠牲が出てもっとメンデル領民を苦しくさせただろう。お前の提案に従って良かったぞ。だがよく蛮族の言葉が分かる通訳を揃えられたな?随分前から予測して通訳を育てていたか」
「蛮族の侵入にいずれ我らのメンデル領が巻き込まれるのは時間の問題でした。たまたま部下の一人に蛮族と接点を持つ者が居たのです。その者を起点に蛮族の言語を調べさせ、三つの体系に分類しました。今なら大半の蛮族の言葉を翻訳出来るでしょう」
「そうか。全てはお前の下準備が今日の成果に繋がったのだな。全ての領民に代わり礼を言うぞ。よくぞわが領を救ってくれた。有難う」
「父上、当たり前の事をしただけです。全ては帝国人民として国を守る気持ちからですから」
「帝国人民か。私とて国家全体として考えたいところだが現状は自領存続に必死だ。何時からだろうな。帝国中央と地方領との分断が顕在化したのは。中央は地方の苦しみを何も解ってはいない。嘆かわしい事だ」
「まったくです」
「かつて先代皇帝の懐刀として権勢を振るったリングルベル宰相時代は本当に良かった。帝国隅々まで善政が生き渡り民の笑顔に溢れていた。その手腕はまさに公明正大。滞りなく税制は平等であった。それが今はどうだ?元老院の老人達は権益を貪り政敵を排除する事しか考えていない。やはりリングルベルが政治の中心にいるべきなのだ」
「……………」
「どうした、アルフレッド?」
「父上の言われる事は正しいとは思います。ですが今のリングルベルに全てを担わせるのは些か無責任ではないかと。やはり全ての帝国人民が自身と周りを良くしようと奮い立たなければ腐敗した政治を変えるのは困難かと思います」
「ふむ……今のリングルベル当主はお前と交流があるのだったな。済まぬ、失言だった。お前の言う通り誰かに現状を託すような言い方は無責任であり間違いであろう。栄光ある過去を懐かしんでも現状は何も変わらない。やはり全ての国民一人一人が団結して世の中を変えよう、そういう機運を作り出す事が我らに課せられた責任であり最重要な事なのだ」
「はい、まったくその通りです。一番の功罪は無関心であり他力本願。帝国を変えようという機運の盛り上げこそ我らに課せられた責任であり、出来る事から積極的に関与する事が必要なのだと理解します」
頷く父上に私自身も気持ちを改めたところ。
自身の役目に区切りがついた今だからこそだが、少しでも帝都の親友に手助け出来ればと心新たにするのだった。




