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宝くじ10億円でアバター救世主を請け負ったら、助けた英雄達が全員ヤンデレになってました。  作者: 無限飛行


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第57話 アルフレッド回想

過去

◆アルフレッド視点




私が辺境伯を命じられたのは訳がある。


7年前のあの日、オレはメンデル領防衛の為に物資の補給と帝国中央への援軍の要請の為、帝都を訪れていた。








❇❇❇❇



帝国歴628年


北部の帝国領は南下しようとする蛮族達の断続的な襲撃に遭っており、その矢面に立っている北部貴族領は団結してこれに対処してきた。

ただ各領の私兵だけでは武闘派の蛮族に対して押され気味であり、各領とも既に一部の領土を占有される事態に至っている。


私のメンデル領も同様な状況が続き、元老院に帝都にいる帝国正規軍の派兵を要請したが、元老院からの返答は各領の兵力だけで対処せよとされ、補給部隊の編成しか認められなかった。


やむなく帝都内で物資を調達し、商人の馬車を動員して補給部隊を編成。

帝都邸宅に残していた僅かなメンデル領兵士にも召集をかけ、たった今数十名の増援部隊の編成を済ませたばかりだ。

そして三日後に私は、その補給部隊と僅かな増援部隊と共に北部領へ向かう予定となっていた。








バタンッ


「アルフレッド、ついにシッポを掴んだぞ。近々行われる不法な人身売買とアヘナ麻薬の取り引きに関する情報を手に入れた。上手くいけば悪徳貴族や闇商人を一網打尽に出来るかも知れない。帝国の膿を出すチャンスだ!」



勢いよくドアを開けてオレの執務室に飛び込んできたのは、深い碧眼と水色の髪色が印象的な色白の青年だった。

オレの親友で出世頭、ジョージ・リングルベルである。

治安局トレードマークの厳格な黒衣のマントに血の決意を表す赤腕章。中の白い軍服は治安局を表す何ものにも染まらない中立の白色だ。

そして胸にはこの青年が局長である事を示す治安局の象徴、《公正なる天秤》のマーク。

正義感溢れる彼には相応しい称号だろう。



「それは凄いな親友!ならばようやく民衆に治世を取り戻せるか」

「ああ、きっとそうなる。関わっているのは全て中央の高位役職に付いている貴族達。その殆どが自領で不当に民衆を弾圧し高い税率を課している悪徳領主だ。奴らはそうして集めた資金を使い今の地位を得た。その特権を活かして更なる金儲けに手を出していたと言う訳だ」

「憂慮すべき事態だな。だが大丈夫なのか?」

「何がだ?」

「いくら国家治安局長官のお前でも中央の貴族が相手だと厳しいのじゃないか」

「正義を行うのに躊躇する理由はない」

「それはそうだが、しかしお前が侯爵家とはいえ相手が高位役職にある貴族ならそれなりに警戒しろよ。奴らは色々と狡猾だ。足をすくわれないようにしないと」

「ふん、お前は相変わらず慎重だな。慎重過ぎるのは怠慢と紙一重だぞ」

「はあ?ば、馬鹿野郎!オレはお前の事を思ってだな!」

「分かっているよ。お前だけだ。本気で私の事を分かってくれるのは。大丈夫、慎重にやるさ」

「お前の家族の為にもだ。今度、父親になるんだろ?やっと出来たお前の子供が生まれるんだ。奥さんの為にもあまり無理はするな」

「ああ⋯⋯⋯そうだな」



オレの話にジョージは一瞬、感慨深げに間を俯いた。

彼は一時、《魔力過多症》に掛かっていて、子供が出来にくい体質だったのだ。

強過ぎる魔力は時として他者の魔力を拒絶する。

それは本人のコントロール出来ない無意識なもので、配偶者であるアリシアの魔力と交わるのを完全に拒絶していた。

帝国貴族は魔力をステイタスとするところがあり魔力持ちが殆どである。

《魔力過多症》は魔力持ちならではの症状ではあるが《貴族病》とも云われる帝国内では有りがちなものでもあったのだ。

だから婚約時にお互いの《魔力合わせ》をして相性を確かめ合う。

だがジョージの場合、魔力合わせ後に発症した後天的なもの。

本来魔力が増えるのは成人迄とされている。

しかしジョージの場合、非常に稀だが成人後に魔力が増え続けるという《魔力過多症》に掛かってしまったのだ。

その為に配偶者の魔力と反発するようになり、弱い魔力側が《魔力酔い》となって頭痛と吐き気に悩まされるようになってしまう。

そして最悪には昏倒するようになるのだ。

よって結婚後に悪化した《魔力過多症》により、二人は夫婦でありながら近づく事も出来ない事態となっていたのである。


そうした中、長い治療の末にジョージの魔力がようやく落ち着きを見せ、二人が近づけるようになったのが一年前。

喜ばしい便りがあったのがつい先日だ。

デカいヤマに光明が見えたのは良い事だが、正義感が先行する親友にオレは一抹の不安を覚える。



「アリシアには家の事をまかっせっきりにしてるからな。このヤマを終わせられたら暫く休暇を取るつもりだ」

「そうしろ。お前は働き過ぎだ」

「ふ、人の事を言えた義理か?お前だって今回の北部増援は随分と尽力しただろう。メンデル家でもかなりの資金を投じたと聞いているぞ」

「物資がなければ兵は飢える。軍隊がいかに精鋭でも補給がなければただの案山子だ。中央は何も分かってはいない。ウチで資金を出したから補給部隊を送る事を認められた。北部防衛にはわが領の民が多数参加している。物資を出さねば結果として貴重な領民を見殺しにした事になる。メンデル家として動くしかなかったんだ」









帝国には幾つかの解決しなければならない課題がある。

その一つが蛮族南下に起因する《北部問題》だ。

帝国の北部には幾つかの少数民族が暮らしている《北の大地》が広がっている。

かつては豊かな草原地帯であったが、近年は寒冷化で荒地が広がる荒野が増えた。

その地で遊牧民として幾つかの部族が暮らしていたのだが、彼らが荒野の地で生きられずに南進して帝国領の一部を不法占拠しだしたのだ。


不法占拠された土地は他領であってもメンデル領も北部に位置しているが故に、防衛の為の兵力を出すのは帝国貴族としての義務にあたる。

貧乏貴族であるメンデルであったが、領民を多数兵卒として派遣するのだ。

それなりに体裁を整えてやる必要があった。


ただ問題なのは、国境守備の為に地方貴族領が外敵と戦うにあたって通常は国家の支援があって然るべきなのだが、元老院はこちらの通達に対して終始受け身で、向こうからのアクションは何も無いという事実だ。

国境が外敵に晒される事態となっているのに中央は地方領主、領民に全ての責任を押し付けて動こうとはしない。

硬直化した体制は迅速な対応が行われず、実体を把握した北部領主達は自分達で動くしかなかった。

結果として地方領の財務は圧迫され、没落する貴族領が相次いだ。

我がメンデル領も今回の出兵で大半の財産を補給物資に投入した。

もはや次回の出兵では全ての財産を差し出すしかないだろう。



「これでオレも没落貴族だ。蛮族を追い出したらお前のところで使って貰う予定だ。だからお前には今の地位を死守して貰わないとならない。保身に務めておいてくれ」

「おい、話が笑えないぞ。勘弁してくれ」

「はははは」

「ふっ」



ジョージはオレの話を冗談だと笑い飛ばしたが、残念ながら冗談じゃないんだ。

だが、こんな事は冗談で終わらせていい。

オレの家の事はオレの問題で忙しいコイツに聞かせられる話でも無い。

別にオレは三男だし家を守っているのは長男だ。

まあ、なんとかすると思う。



「国が国境守備の予算を削るのは元老院の老害だな。私の調査ではその内の何人かが」

「ジョージ」

「っ、アルフレッド?」



カタッ⋯⋯⋯⋯。



その時だ。

オレは指を口に立ててジョージに黙るようにゼスチャーした。


ドア外で小さな小音がしたからだ。


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