第53話 ギルド長7
天音の16歳感覚からすると最近は、すっかりアリアとしての子供圧力を受けている気がする。
不本意だと思える事と、事実だと肯定する気持ちが入り混じり、私の立ち位置は何処なんだと悩んで腹が立って混乱する。
ただ確かな事は一つ。
私は天音でありアリアでもあるという事。
そして後の英雄をサポートする救世主を女神フォルトーナに頼まれたという事実だ。
イレギュラーでアリアとして人生の大半を生きる事になったとしても、理不尽な境遇にある子供達の存在を知って、なおも傍観者でいられるほど私は我慢強くはない。
もちろん現代日本においてもニュースにある遠く離れた外国の惨状を憂い、どうして人は同じ人に対して残虐になれるのかと悲しくなる事がたたあった。
確かに世の中にはどうにも出来ない事柄があり、綺麗事で済まない事が多い事は分かっている。
だとしても今回の件はアリアとも関わり深いブルガが関わり、多くの子供達を喰い物にする結末が見えているのだ。
これを見過ごす選択肢は私には無い。
「領主様が言われる事が正論であり、私の今の現状は確かに子供なのでしょう。ですがアナタは領主だから平民より力があるはずです。ならば私を帝都に送る事は造作も無いし孤児達を救い出す事も本来なら可能な筈です。助けるという強い意思があるか無いか只それだけではありませんか?」
「お前を送るのは造作も無く、助ける意思だけの問題だと、本当にそう思うか?」
「領主や貴族にはその力がある、のでは無いのですか?」
「そういうのを偏見ともいう。最初のサーベルと変わらん」
「はい???」
ドサッ
はあ………っ
あれ?
私の言葉に物凄く疲れ顔になった領主アルフレッド様。
ソファの背もたれに深く座ると、これでもかと言わんばかりに、更に頭を背もたれの向こう側まで垂らした。
つまり完全に顎が上を向いていて、私が見えない状態だ。
なんとも破天荒なフザケた態勢だが、その雰囲気はまるで拗ねた時の義弟、尊の感じにそっくりだった。
え?領主が私の目の前で拗ねてしまっているって事!?
「あ、あの………」
「いいんだ。所詮オレは名ばかりの何も出来ない領主だ。しかしこんな幼気な子供にまでそれを悟らせられるとか、這い上がれる気がしない。ドン底だ。もう死のう」
「ええ?死なないで下さい!」
うわあぁ。
物凄くめんどくさい。
大の大人が完全に捻くれて落ち込んでる。
しかもアルフレッドは此方を見ずに終始頭の大半をソファの向こう側に垂らしたままだ。
子供か!?
「サーベルも町の奴らもオレなら何でも出来ると思い込んでやがる。オレは日々膨大な書類仕事に埋もれながらも帝都からの無理難題を交わしつつ町を守るのにてんてこ舞いしてるのにだ。毎日魔獣の被害に晒され帝国の中で最も危険な場所とされる《深淵の魔森》。そこから押し寄せる魔獣の群れを帝国内に解き放たない為の《防波堤》とされているブロンキス町を、冒険者共にオベッカ使いながら何とか収めているのがオレだ。それなのに皆んなしてオレを責めやがる。そもそもこの地に流された時点でオレは追放された貴族の一人に過ぎず帝国中央における発言力は皆無だ。そんなオレに過大すぎる評価を皆して求めるのは酷くないか?オレはしがない地方公務員の末端より弱い可哀想な奴なんだからな。それを皆んなは分かってくれてない。あんまりだろうが………」
てな具合に私を置いてきぼりにして、ずっと自分の立場の弱さを独り言の如く話続けるアルフレッド領主。
拗ねて腐ってソファの肥やしみたいになってる。
私に《コレ》をどうしろっていうのよ?!
「オマケに中央は定期的に監察官という監視監督をする、オレより強い権限持ちを派遣しやがる。そうやってオレに反逆の意思が無いか測ってやがるんだ。更に市民や開拓村の監視監督までやりやがる。がんじがらめなんだ。もう勘弁してくれ」
駄目だ、こりゃ。
サーベルの兄弟で私の保護者になる予定の領主様は、何の力も無いと嘆く無気力虚脱感漂う情けない大人だったようである。




