第44話 冒険者への道3(パーティー)
アグニス帝国歴640年
10の月
とある荒野の明け方。
タロに乗った私とベスは冒険者ギルドの依頼を無事に終え、ブロンキスのサーベル一家の拠点、いわゆるサーベル御殿に帰りの途中にあった。
そして私達の服装は様変わりしていた。
もう貫頭衣ではなく、見るからに冒険者風の装いに進化している。
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❶メタルスネークの肩バッドと腕輪にジャイアントボアの皮ベルト。(メタルスネークはS級魔獣。超硬質で超軽量。ジャイアントボアはC級魔獣)
❷キングベアの皮を使った胸当てにシルバータイガーの毛皮製スカート。(キングベアはB級魔獣、シルバータイガーはA級魔獣でその毛皮はあらゆるものを弾く。汚れもしない)
❸ライオネルビックバードの羽根製マントは防寒用。(ライオネルビックバードはB級魔獣)
❹ワンポイント耳飾りは七色クジャクの羽根をあしらってある。(七色クジャクは幻影級。個体数が極端に少なく値段が付けられない。魔力を帯びていて特殊な使い方が出来る)
もちろん相棒のベスとお揃いだ。
❺あと下着は秘密とさせておこう。
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私はアリア年齢で11歳。
ベスは15歳となり、共に冒険者デビューして半年が経った。
この世界は発展途上で労働人口は相当に若い。
成人年齢は大体13歳から15歳と言われていて、中卒か高1で成人扱いされる。
江戸時代の《元服》という感覚に近いが、特に御赤飯とかは無い。
まあ、私からすると天音の時が16歳だから、プラス5歳で21歳⋯⋯⋯。
既に10代すら越えて十分過ぎる大人じゃん?!
うう、目の前のベスがピチピチギャルに見えて何かヤバい。
しかも15歳でその乳はズルくね?
モミモミモミ⋯⋯⋯⋯。
「ねぇ、アリア?」
「何、ベス」
モミモミモミモミモミ⋯⋯⋯⋯⋯。
「私のキングベア胸当ての上から何してんの?」
「ちょっと爆乳が目について本物か調べてる」
「キングベアの胸当ては硬いから意味無いよね」
「メタルスネークよりずっと柔らかい」
「だから本物だからね?変な事は止めなさい!」
「若くてデカくてベスはズルい」
「若くてデカくてズルいって何!?」
半年でこなしたギルドの依頼は60余り。
月10件ペースだが、これは私達の年齢ではあり得ないんだそうだ。
もちろんブロンキスのギルド内でもそうらしい。
例えば一つの薬草採取依頼があったとする。
その依頼薬草を探す事から始まるわけだが、依頼数の薬草を確保するのに通常は数週間かかる事も稀じゃない。
なのに私達は、それを二日か三日ペースでこなしてるのだ。
それがどんなに貴重な薬草であってもだ。
最大のアドバンテージはタロの存在が大きいだろう。
タロは鼻が人間の数百倍効く上に、私と意識が繋がっている。
つまりタロの鼻を私が利用し、数キロ離れた薬草であってもあっという間に見つけてしまうのだ。
そしてかかっている時間はその自生地までの往復の時間だけであり、薬草を探す時間を大幅にカット出来ている。
これはもはや圧倒的と言わざるをえない。
薬草採取が文字通りの採取業務だけになっているというわけだ。
しかも薬草採取につきものの危険魔獣との遭遇も毎度滞り無くこなしている。
《毎度滞り無く》だ。
ドスッドスッドスッドスッドスッ
『バウッ』
「タロはご機嫌だね」
「そりゃそうでしょう。キングベアの肉をたらふく食べたんだから満足でしょうよ」
『バウゥッ!』
「ふふ、それは良かった」
「アリア、全然良くないから!私達の昨日の依頼は何だか分かっているの?薬草採取じゃない!それが何でキングベアの群れ討伐に変わるわけ?しかも十頭以上の群れを殲滅なんてあり得ないんだからね。オマケに殆どアリアとタロでやっつけちゃって私は何にも出来なかった。本当に勘弁して欲しいのだけど!」
「ごめん、ベスにも獲物を残しておけば良かったね?」
「冗談でしょ?災害級のB級魔物だよ?!私にどうにか出来るわけないじゃない!」
「そうなんだ?楽勝だったけど」
『バウッ!』
「アンタらにかかったら、どんな災害級でも太刀打ち出来そうにないわ⋯⋯⋯」
はっきり言って、私とベスが着ている魔獣素材はギルドの精鋭であるA級冒険者であっても簡単には集められない代物ばかり。
どれもA級冒険者パーティーが幾つか集まっても中々討伐し辛い魔獣になる。
特にS級のメタルスネークの素材は私やタロでも苦戦したところだ。
タロがスネークを足止めし、私が水の塊をスネークの顔に集めて呼吸を塞いだ。
それでも呼吸を長く止めていられたメタルスネーク。
最後まで暴れてやっとのところで倒す事が出来たのだ。
タロが居なかったら反撃をされて大変な事になっているところだが、私とタロの連携が見事にS級魔獣を倒したのである。
メタルスネークに限らず、B級以上の魔獣についてはタロ無しでの討伐が出来ないのが実情だ。
もちろんパーティーを組んでるベスの存在も重要だ。
彼女は弓の技術が特級で、3秒間隔で次の弓を放てる。
精度も極めて正確だ。
そのお陰もあり、タロの鼻が発見した幻影級の七色クジャクはベスの弓で狩る事が出来た。
私達は最高のパフォーマンスが出来ている。
「見えた!私達の、皆んなのブロンキスの町よ」
「三日ぶりだね」
『バウッ!』
朝焼けに城壁が赤い。
今私達が辿り着いた場所はブロンキスの町が一望できる峠の先の小高い丘。
ヨーロッパの古城の数倍はありながら、古き佇まいを見せているブロンキスの町。
この時間、この場所からのブロンキスは中々に美しく、私はここからの景色が一番好きだ。
そこには人々の生活があり生きる場所であり、そして生涯を終える場所でもあるのだから。




