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宝くじ10億円でアバター救世主を請け負ったら、助けた英雄達が全員ヤンデレになってました。  作者: 無限飛行


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第31話 町と国と子供達

「お前ら、こんなところで何やってんだ!?」

「「!!」」

「っ?!」

「こんなところで油うってるとはいいご身分だよなぁ」



今正にタロを呼ぼうとしたその時、路地奥から顎に髭を蓄えた長袖シャツと赤いチョッキ姿の男が現れランベル達に怒鳴りつけた。

20代くらいだろうか。

身なりはそれなりに整った長身細身な男だ。

奥から現れた男の背後を見るに、この小さい路地は袋小路ではなくL字に曲ってるだけらしい。


あとランベル達は男を前に立ち尽くしている。

フリーズして固まっているみたい。

そして理由は分からないが、男はランベル達の今の行動に苛立っているようだ。



バシンッ

「うっ!」ドサッ

「ランベル?!」

「お前もだ」

バシッ

「きゃああっ?!」ザザッ

「!!」



その瞬間、顎髭赤チョッキ男はランベル達を容赦なく殴りつけていた。

近くにいた幼い子供達はその恐怖に震え、座り込んでしまっている。


大の大人が十歳前後の子供達を殴ったのだ。

地球の常識からすれば、これは間違いなく虐待だろう。天音なら二人を助けるべきと直ぐに行動したはずだ。


だけど今の私はアリアの身体だ。

大の大人に対してあまりに体格差がある。


更に二人はこの男に従う素振りを見せていた。

つまり男はランベル達の上役的存在で、今のは躾け的な体罰という話なのかも知れない。

ここは迂闊なこは控えるべきだと思ったのだ。



「いつも言ってるだろうが!働かない奴はサーベル一家に必要ねーんだ。食い物が欲しけりゃ働け!お前らはそうしなけりゃ生きていけないんだからよ」

「す、すいませんグェンさん。直ぐに仕事に行きますんで」

「グェンさん、ゴメンなさい」

「ちゃんとしろよ!この穀潰し達の分もお前らが稼ぐって言うから面倒見てんだ。その事を忘れんじゃねぇ。ボスは寛大だが俺は厳しく躾けるからな!」

「「はい!!」」



ランベルとベスは殴り飛ばされたのに直ぐ立ち上がると、暴力顎髭赤チョッキ男の言葉を素直に聞いている。

やはり兄貴分のような存在か。


サーベル一家とか言ってるけど?何らかの組織(日本のヤクザみたいな)のようだ。

二人がその組織に入っているという事で、この男が指導役という事なのだろうか?



「で、何だ?ソイツは?」

「⋯⋯⋯知り合いの孤児です。一家に入れようと連れてきました」

「べ、ベス!?」

(いいのよ、ね?)

「!」



何だろう。

ベスという少女が勝手に私の今後の処遇を決めたみたいだ。

私にアイサインをしている。

ランベルという男の子が意外そうな顔をしているからこれは彼女の独断という事なんだろうが、ここで決定権のあるのは顎髭赤チョッキ男という事になる。



「んだとぅ?ほう、成る程な。お前らにしてはやるじゃねーか。いいだろう。俺がソイツの事をボスに話ておく。いいか、今日一日でそのガキにも一家の仕事を教えとけ。寝床に普段の振る舞い方もだ。特にベス」

「は、はい」

「お前が責任もって指導しろ。いいな!」

「はい!」

「よし、あとは全員仕事だ。ランベル!稼ぎは昨日並みを維持だ。この無駄時間を取り返せ!」

「分かりました。お前達、いくぞ!」

「「「「「は、い」」」」」



顎髭赤チョッキは元来た路地奥に消え、ランベルと幼い子供達はゾロゾロと大通りの方に向かって歩いて行く。

後には私とベスだけが残り、結局ハンギ兄弟を倒した話を証明する事無く、なし崩しに私は彼らのグループに入ってしまったらしい。



「成り行きだったけど結果は一緒だわ。ようこそサーベル一家へ」

「サーベル一家、どういう組織なの?」

「ソシキ?変な言葉。サーベル一家の事を知りたいのよね?サーベル一家は主に廃村の開拓村孤児を引き取り、孤児達に仕事と寝る場所を提供しているの。このブロンキスには女神教が孤児院を運営してるけど、あくまで町の孤児が対象なの。ギルド所属の冒険者の子供とかね。残念だけど私達のような町外の孤児までは手が回らないみたい。それでボスは一家を作り、主に町外の孤児、特に廃村になった開拓村の孤児達の受け皿をやっている。でも運営は非正規だから表立っての寄付が受けられない。だから私達は自分達の食い扶持と一家を支える為に働かないといけないのよ」



いわゆる共同コミュニティのような存在か。

その運営資金は開拓村の廃村孤児を主に引き取り、働かせて利ザヤで成り立っているようだ。

地球で言う《児童労働》の元締めみたいな事をやっている訳だ。

この中世の様な世界では致し方ないのだろう。



「一つ聞きたい。開拓村とは何なの?」

「ああ、先ずはそこからだったわね。最初の言動からアナタには色々と常識が足らないみたいだったから」

「なんかごめんなさい」(お辞儀)

「別に気にしてないわ。最初から何でも理解してる子供の方がおかしいもの。この国の事とか色々と教えてあげるわ」




そうしてベスが語ったのは次のような事だった。


❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇

まず私達がいる町はブロンキス。

この町は国の外れに位置しており、いわゆる辺境の町という事になる。


そして町が属する国名は《アグニス帝国》。

ブロンキスはその帝国の辺境町になるようだ。

アグニス?

どっかで聞いた気がするけど?分からないからスルーだ。


また、その帝国のある大陸はアルカディーテ。

ベスは《世界を表す言葉》と言っていたが、これが女神との話でも出ていた現地人の世界観になるのだろう。(ヒューズ2でない)

他にも大陸はあるらしいが、ベスにそこ迄の知識は無いようだ。

それぞれの大陸の人間は自身の大陸を《世界》と表現しているのかも知れない。


そして開拓村だが、これは国家を広げる事業の一環で、農地を広げて食料自給率を上げる為に開拓民を編成して未開地を開墾させ、領土拡張に繋げるもの。

当然ながら国境開発が主体になるが、主に隣接国家の無い未開地を開墾するのが基本だ。

隣接国家の国境を開墾したら、それは領土侵害か侵略になって戦争になるだけだからね。


ただ辺境の未開地は未開地なりの理由が存在したりする。

僻地で開墾が困難な荒れ地だったり、近隣に危険な猛獣がいる森があったり、敵対少数部族の支配地域だったりといったところか。

概ね危険地域に該当するもので、派遣要員は通常なら見つかるはずが無い事になる。

では、それでも編成出来たベス達やアリア達が暮らした開拓村の住民はどうだったのか?


おそらくだが農奴のような強制力の効く人々にやらせているのだと思う。

そういう制度や自身の身分についてベスは深く考えた事は無かったようだが、強制力を持って人々を送り込み家屋や財産、土地所有の自由は与える条件を示しながらも、その移動を著しく制限して高い税率を課すのが農奴制度の基本だ。


何らかの微罪を持つ罪人達を農奴とする事が多く、自由を与える代わりに危険地域の開拓を対価として要求する形があるのだろう。

でも、開拓した土地は農奴達の物となるから、開拓に成功すれば彼らはその地に留まる事となり自ずと領土が広がる事に繋がるのだ。


そして定期的に領主の監視はあるのだろうが、ここの孤児達のように廃村民が逃げ出しても、それを追って拘束しようなどまではしないのだろう。


だが開拓民である彼らがそのまま他の町や村に受け入れられるのは難しいのだ。

この貫頭衣もそうだが一目でわかる姿を義務付けるのは日本の同和問題のように、罪人指定で差別的対応がある事に他ならない。

しかしその多くは冤罪に等しく、農奴の人々は一人歩きした差別の連鎖により、自ずと生活圏が開拓村に限定されて益々外部への移動も困難になるわけだ。

ブロンキスの町の女神教孤児院が町外の孤児を受け入れ無いのも、そうした差別に基づくものなのだとしたら、それはフォルトーナの顔に泥を塗る行為に等しいと思う。

❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇


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