第30話 ペット?イヌ?
あのクソ悪人共、他でそんな事までしてたのか。
本当に最低最悪な屑だったんだな。
まあ、タロが分解?しているから良かったのかも知れないが、本来ならランベル達に仇を取らせるべきだったのかも知れない。
「ランベル!」
「分かってるよベス。アリアのせいでなく、奴らが悪い事も理解してる。だから俺達はブロンキスに来たんだ。ブルガ商会に復讐し両親や妹、村の皆の仇を取る為に!!」
「え、そうだったの?」
「ごめんベス。成り行きとはいえブロンキスまで連れてきて済まない。皆んなも」
「仕方ないわ。あのまま村に居ても私達は生きられなかった。アナタがブロンキス貧民街のおじさんを頼ったから私達は生きている。この子達も」
「だが、あんな事」
「仕方無いんだから!」
「あ、うん⋯⋯」
「?!」
ブルガ商会⋯⋯⋯それがアリアを麻薬で廃人にし、その両親の命まで奪った黒幕?
そのブルガ商会があの悪人共の元締めなら、それはアリアに取っても仇なのには違いない。
ならば私の目的と合致する。
他にも気になる事があるけど、先ずは二人に話をする必要があると思う。
「ちょっと話せるかな」
「「?!」」
「二人の話が聞こえたから言うけど、アリアはハンギ兄弟に誘拐されたの。そして当たり前だけど両親が救い出した。ただそれだけよ。アリアと両親は何も悪くない」
「「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」」
「?何??」
二人は私の言葉に直ぐに反応しなかった。
ベスが少しランベルと話して前に出る。
私の話は変だったか?
「まるで他人事のように話すのね。それはアナタの身の上に起きた真実でしょ?」
「!」
そりゃそうだ。
中身が赤の他人なんて、この世界の人間に分かる訳もない。
うん、確かに変だわ。
「そう、だったわ。私はアリアだから⋯⋯」
「アリアちゃん」
「!」
次の瞬間、私はベスに抱きとめられていた。
彼女から伝わるのは深い哀れみと憤り。
ここにいる子供達は総じて同じような感情を向けてくる。
そうだね。
考えてみたらそうだ。
アリアの是迄の人生は、あまり壮絶としか言いようがないものだから。
「可哀想なアリアちゃん。きっとこれまでの辛い事がショックで自分の事ととして捉える事が出来なくなってしまったのね。もう大丈夫だから。私達がアナタを守るわ。だから苦しく辛い事は忘れてもいいのよ。これからは私達と楽しい思い出を作っていきましょう」
「おいベス、それは?!」
「分かってる。私達と居ても辛い事もある事を。だけど小さな子供が一人で生きていく事を考えてみて?それがどれだけ辛く難しい事だという事を」
「だ、だか、両親と一緒にいるんじゃないのか?」
「あ、そうね。だったら」
「居ない。ハンギ兄弟に拷問の末に殺された」
「な!?」
「何て事!!」
私の言葉に目を見開き驚く二人。
他の子供達もハンギ兄弟が怖いのか、皆が抱き合って震えている。
そうだった。
ここにいる子供達は皆がハンギ兄弟の蛮行による被害者だったのだ。
この場でアリアの話をしたのは不味かったか。
ここはその憂いを払っておく事としよう。
「ちくしょう!アイツらは人間じゃない!!」
「あんまりだわ。こんなの本当に許せない」
「だけど駄目だ。アイツらは強過ぎる。今の俺の力では全く歯が立たない。何でこんな」
「大丈夫」
「何?」
「アリアちゃん?」
「私の愛犬が倒した」
「「???」」
「だから大丈夫。もうアイツらは私達を襲って来ない」
「「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」」
「?」
私の言葉に二人が固まっている?
また言葉を間違ったのだろうか。
色々と異世界言語は難しいな。
もっと異世界ボキャブラリーを充実させるべきだろうか。
「ちょっと待て!?今倒したって言ったか?お前が?」
「違う、ランベル。倒したのはアイケンとかって言ってた」
「アイケン?あいけんって何だ?」
「アイケンは愛犬。私のペットの犬の事だけど?」
「ペットは分かる。イヌって何だ?モンスターの一種か?ペットで飼えるくらいなら角ウサギの類だが、あれは気性が荒くて子供が飼えるもんじゃない」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
どうやら犬という生き物はこの世界に居ないようだ。
だったらタロって犬じゃ無い?
うん、体長5メートル超えのハスキー犬は地球でも犬とは言わないか。
じゃあ猫もいないとか?
いや、今はどうでもいいか。
「だが、もっとおかしいのはハンギ兄弟を倒したって事実だ。あり得ないだろう?!」
「そうね。でもアリアが嘘をつくとは思えない」
「そうだが勘違いって事もある。親が殺されてるんだ。錯乱して思い込みをしてるだけかも」
「ランベル!決めつけるのはアナタの癖ね。それは直しなさいよ」
「う、わかったよ」
「それでねぇ、アリアちゃん。そのアリアちゃんのペットに私達も会えるかしら?」
「大丈夫だと思う。でも驚くかも」
「ランベルは多分そのペットを見ないと信じられないんだと思う。ハンギ兄弟は元B級冒険者くずれでブロンキスではそれなりに名が通っていた強者だったの。汚れ仕事ばかりやるから冒険者ギルドからは追放されたけど、それを倒すには同じB級かA級冒険者並みの力がないとならないわ。だからペットになるような弱い魔物に負けることは信じられないのね」
「分かった。今呼ぶね」
「え?」
どうやら彼女達にはタロの事が想像出来ないらしい。
大事には至らないと思うが、ここはタロを信じてこの場に呼ぶしかない。
大丈夫、だよ、ね?




