番外編⑨ ドラゴンキメラ ①|“竜ではないもの”
※本編完結後の番外編です。
今回も日常寄りですが、
清龍視点の少し不穏なお話になっています。
「ドラゴンって、何だ……?」
清龍の私室には膨大な本が置かれている。
それは様々な文献、研究資料、童話など多岐に渡る。
そんな清龍の本棚から蘭鈴は本を選び、清龍の隣で読書を楽しんでいた。
「ドラゴン? 簡単に言えば、巨大な翼を持つ生き物だ」
「巨大な生き物……」
「童話の中ではドラゴンは『竜』とも呼ばれているが……」
「『竜』……! オレたちと同じだな」
蘭鈴の黄金色の瞳がキラキラと輝く。
「そうかな? 私たちはあんな――爬虫類とは違う。黄龍のお前がその自覚がなくてどうする」
清龍は蘭鈴の頬をムギュッと鷲掴みにする。
「……むぐ……。お前こそ、黄龍のオレに対する敬意が足りないぞ――」
「まさか、私の“敬愛”が伝わらないとは……」
「”敬愛“してるなら! こんな事はしない!」
清龍は頬を掴んだまま蘭鈴の顔を上に上げた。
黄金色の瞳に、清龍の浅葱色の瞳が近づく――。
「フン。小娘が、お前が黄龍でなければいつでも食ってやれるものを――」
「ほら! またバカにしたな!」
清龍は興が削がれたとでも言うように蘭鈴から手を離す。
「……冗談だ……。これ以上続ければお前の愛玩動物が黙っていまい」
「……ペット……?」
ドドドドド――!
「……噂をすれば、だ――」
バーーーン!
清龍の私室の扉が勢いよく開かれる。
「おい! 清龍! 蘭鈴をまた変な実験に付き合わせる気だな!」
「何を言う。私たちはただ、仲良く隣に並んで読書をしていただけだ――」
清龍が蘭鈴が読んでいた本を指さす。
「……信じられない! 何も変なことしてないだろうな!?」
息巻く琉龍に蘭鈴は立ち上がり馬にするように「どうどう」と背中をポンポン叩いた。
蘭鈴に「どうどう」されて落ち着く琉龍。
蘭鈴は琉龍を連れて散歩に行くと提案した。
(……そういうところが愛玩動物だと言っている。
その首輪がどこに繋がっているのか、当の本人だけが分かっていない)
「清龍、本ありがとな。また読ませてくれ」
蘭鈴は清龍に手を振ると、琉龍の背中をポンポンしながら部屋を後にした。
清龍は、閉じた扉を見つめながら――
本棚の奥に隠した一冊へと視線を落とした。
――『Dragon Chimera』と書かれた、その背表紙へ。
今回もお読みいただきありがとうございます!
「刻龍のお料理教室」編とは少し雰囲気を変えて、
今回からは新しいお話――“ドラゴンキメラ編”がスタートします。
これまでの“龍”とは少し違う存在が登場してきますが、
この先どう関わってくるのか、楽しみにしていただけたら嬉しいです。
ゆるい日常の中に、少しずつ違和感を混ぜていけたらと思っています。
ドラゴンキメラ②は【3/30】投稿予定です。
引き続きお付き合いいただけると嬉しいです!




