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番外編⑩ ドラゴンキメラ ②|“作られた命”

 数日後――。


 蘭鈴と琉龍が談笑しているところに清龍が訪れた。


「蘭鈴、これをやる」

「これは……?」


 清龍の肩には、藤色の鱗を持つ小さな爬虫類のような生き物が乗っていた。

 それは蘭鈴を見るなり、ぴくりと鼻先を動かす。


「お前の新しい愛玩動物(ペット)だ――」

「新しい……?」


 蘭鈴は首を傾げる。

 

「新しいも何も、オレ、ペットなんて飼ってないぞ?」


 蘭鈴は琉龍と顔を見合わせた。


「お前、自分が何を飼っているのか分からずにエサを与えているのか?」


 突き刺すような視線で清龍は琉龍を見やる。


「…………ッ! 清龍、お前、ペットって――」 


「清龍が何を言っているのかさっぱり意味が分からないんだが……。琉龍は何か分かったのか?」


「ッッ!」


 答えを言いあぐねる琉龍に清龍はクククと笑った。 


 その瞬間、藤色の生き物は翼を震わせ、迷いなく蘭鈴の肩へと飛び移った。


「うわっ――」

 

 琉龍が咄嗟に手を伸ばすより早く、

 その小さな生き物は「きゅー」と鳴き、蘭鈴の頬をぺろりと舐める。


「ふふ、くすぐったい……」

 

 その様子を見て、琉龍の眉が露骨に寄る。

 

「おい! 清龍! コイツは何だ! 蘭鈴を食べ物だと認識しているんじゃないだろうな!?」

 

 だが藤色の個体は琉龍の視線には一切反応せず、

 蘭鈴の服の襟元に顔を埋め、小さく喉を鳴らした。


「……随分と分かりやすいな」

 

 清龍は低く笑う。

 

「食べ物だと認識しているのは、お前の方だろ――」

 

「な、何を――!」

 

「あはは、やめろよ。くすぐったいって」

 

 琉龍が藤色の生き物を引き剥がそうとすると、口を大きく開けて牙を剥き威嚇行動をとった。

 

 ――だが、蘭鈴が「大丈夫だぞ」と撫でると、

 すぐに安心したように口を閉じ、翼を畳む。

 

(……刷り込みは完了しているな)

 

 清龍は内心でそう判断した。

 

「……で、清龍。コイツは何なんだ?」

 

 改めて蘭鈴が問う。

 

「だからお前のペットだ」

 

「……そのペットという概念は分かったが、この生き物が何かを聞いている」

 

 琉龍はなおも警戒を解かず、藤色の生き物と蘭鈴の距離を測っている。


「……ドラゴンだ――」

 

「ドラゴン……? 翼のある、あの爬虫類の?」

 

「そう言っている」

 

 その言葉に、蘭鈴の瞳がぱっと輝いた。

 

「ドラゴンって、近くに住んでいるのか?」

 

「いや。これは私が作ったキメラだ――」

 

「キメ、ラ……?」

 

 琉龍の脳裏に、かつて清龍の森で襲われた記憶がよぎる。

 

「……ッ! 蘭鈴! 離れろ!」

 

「安心しろ。黄龍の命令しか聞かないように調整してある」

 

 清龍は一歩だけ距離を詰める。

 

「――お前が望まぬ限り、何も奪われない。

 ……それを許すつもりはない」

 

 その浅葱色の瞳が、逸らすことを許さないように、まっすぐ蘭鈴を射抜いた。

 

「どういう意味だ? それに、ちょう、せい……?」

 

「簡単に言えば――

 お前の言葉だけを“主人の声”として認識する」

 

「!! それ、すごくないか!?」

 

「今更だな」

 

 清龍は肩をすくめる。

 

「成長すれば、背に乗ることも出来る」

 

「えっ! じゃあ今からでも大きくしてくれても――」

 

「子育ての予行演習だ」

 

「……今、何て言った……?」

 

 琉龍が前のめりになる。

 

「お前たち、いつも一緒にいるからな。

 てっきり――」

 

 清龍は二人を見比べ、首を傾げる。

 

「……なんだ。

 まだ番になっていなかったのか?」


「つがい……?」  

 

「正式な手順を踏んでいないのかと聞いている」

 

「正式な……手順……??」

 

「清龍!!」

 

 顔を真っ赤にする琉龍の裾を、蘭鈴が引っ張る。

 

「なあ、『正式な手順』って何だ? 『つがい』になるとどうなるんだ?」

 

 琉龍は答えられない。

 

「首輪は、もう掛かっているように見えたが……

 どうやら私の早合点だったようだな」

 

 清龍は一人納得したように頷いた。

 

「よく分からないけど、まあいいや」

 

 蘭鈴はあっけらかんと笑う。

 

「ところで、コイツに名前はあるのか?」

 

「ない。自分でつけるか、琉龍にでも付けさせろ」

 

「えー……」

 

 蘭鈴は思い出す。

 琉龍の名付けセンスが壊滅的であることを――。

 

「いや、待て……。琉龍に任せたら

『ランラン』『リンリン』『ルンルン』になるぞ!」

 

「『ライ』『リイ』『ルイ』『レイ』『ロイ』はどうだ?」

 

「今の流れでそれ出せるの逆にすごいな!」

 

 匙を投げた蘭鈴とは対照的に、

 琉龍は少しだけ誇らしげだった。


 

 ――その様子を、清龍は黙って眺めている。

 

(……やはりだ)

 

 首輪はもう、掛かっている。

 

 だがそれに気づいていないのは――

 飼い主の方かもしれないな。


✕✕✕


 小さなドラゴンが鳴いた。

 

 ――その未来を、誰もまだ知らない。 

今回もお読みいただきありがとうございます!


ひとまず

『黄龍の継承者である私は、偶像として祀られる運命を拒み、瑠璃色の龍に拾われました』の番外編は、ここで一区切りとなります。


本編・番外編ともに、一度区切りとはなりますが、

ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。


日常の中でのやり取りや、それぞれの関係性を少しでも楽しんでいただけていたら嬉しいです。


そして次回からは、新作――

中世ヨーロッパ風を舞台にした、まったく新しい物語をお届け予定です。


新作は【4/2】より投稿開始予定となりますので、

もしよろしければ、そちらもお付き合いいただけたら嬉しいです!



また、本作は現在「ネトコン14」に応募しております。

ここまで読んでくださったこと自体が本当に励みになっていますが、

もし少しでも面白いと感じていただけましたら、応援していただけると嬉しいです。

皆さまの反応ひとつひとつが、本当に力になっています。

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