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番外編④ 刻龍のお料理教室 ①

※本編完結後の番外編です。

本編とは少し雰囲気が違いますが、

いつものメンバーの日常を楽しんでいただけたら嬉しいです。

「藍鈴が『ちょこれーと』なる食べ物をくれた――」

 

 蘭鈴の手には、藍鈴からもらった『ちょこれーと』が握られている。



「その、ちょこれーとなる食べ物って何だ?」


 琉龍が首を傾げて蘭鈴の手の中にある小さい黒い物体を見る。



「分からないからお前に食べて貰おうと思って……、はい、『あーん』」


「あーん」と言われるまま、琉龍は口を開けた。

 その隙に蘭鈴が琉龍の口にチョコレートを放り込む。


「むぐ!」

 

 よくよく考えれば蘭鈴は「未知の食べ物を琉龍に食べさせて味見させた」事になるが、琉龍はその発想に至る前に口の中で広がる甘さに悶絶した。


「なんだこれは! 甘い、甘いぞ……!」


「甘い……? この黒いのがか?」


「蘭鈴も食べるべきだ! はい、『あーん』」


 琉龍は蘭鈴の手の中からチョコレートを一粒とり、さっきのお返しとばかりに「あーん」とチョコレートを近づける。

 琉龍の瑠璃色の瞳が蘭鈴にどんどん近づいてきた。


「り、琉龍、ちょっと待て! 『あーん』はさすがにちょっと恥ずかしいっていうか――むぐ!」


 問答無用で口の中に入れられるチョコレート。


 蘭鈴は黄金色の目を見開き、琉龍の瑠璃色の瞳を見つめた。


「なんだこれ! 甘い! 溶ける!!」

「だろ!」


 二人は一粒ずつとり、もう一度口に入れる。

 チョコレートの甘さとほろ苦さにうっとりしている所に声をかけられた。



「なんだ、今度は『あーん』しないのか?」


 からかうような清龍の声に琉龍は顔を真っ赤に染め上げた。


「いつから見てた!」

 

「蘭鈴がその菓子をお前の口に入れた所から見ていた」


「最初からじゃねーか!!」

  

「清龍! お前も食べたいのか?」


 清龍の登場に、蘭鈴は無邪気に一粒摘むと清龍の口元に持っていった。


「はい、『あーん』」


 突然の事で清龍も一瞬浅葱色の目を見開く。

 どうやら蘭鈴は『あーん』されるのは少し抵抗があるが、するのには抵抗がないらしい。


 清龍は琉龍の顔を見て、ニヤリと笑う。

 そして、堂々と、恥ずかしげもなく蘭鈴の『あーん』を受け入れたのだ。


「……甘すぎるな。だが、嫌いではない」


 ペロっと蘭鈴の指を舐める清龍に、琉龍は怒りで顔を真っ赤にしていた。


「なんだ? 清龍、もっと欲しいのか……?」


「ああ、もっと食べたいな」


「そんなに気に入ったんなら藍鈴に作り方聞いとけばよかったな……」


 蘭鈴はチョコレートをもう一粒取ると、また清龍の口元に持っていく。 


「はい、『あーん』」


「蘭鈴! 清龍はちょこれーとが気に入ったんじゃなくてその『あーん』が狙いなんだ!」


「……え?」


 琉龍の声に蘭鈴の手が清龍の口元から外れた。

 

 その瞬間――


 パクッ!


 蘭鈴の指ごと刻龍がチョコレートを咥えていた。


「刻龍!」


「刻龍! 貴様! 私の菓子だぞ!」


(怒るところ、そこなんだ……)


 刻龍は思った。


「刻龍もそんなに食べたかったら言ってくれたらよかったのに……」


 どうやら蘭鈴は、「刻龍は食い意地が張っている」としか思わなかったらしい。

 だが、そんな刻龍を許さない男がいた。

 ――琉龍だ。



「刻龍、早く蘭鈴から離れないとお前を『()()』することになるぞ……!」


 琉龍の瑠璃色の瞳から魔力が溢れる。


「【絶対的停止アブソリュート】――――」


「わーー!! 分かった! ごめんごめん! 出来心!!」


 刻龍はパッと蘭鈴の指から口を離す。


「蘭鈴、大丈夫か――?」


 刻龍が蘭鈴から離れると、琉龍は蘭鈴に近づき刻龍に食いつかれた手を握った。


「オレは大丈夫だけど、ちょこれーとが残り少なくなってきた」


 琉龍は蘭鈴にもっと自分を大切にしてほしいと思ったのだった。

 ――当の本人は、まるで気づいていないのだが。



✕✕✕ 



 その数日後――。

 

「この間のお詫びに俺が料理教室を開いてあげるよ」


 刻龍が何処からともなく人数分のエプロンと三角巾を持って現れた。


「……料理教室……?」


 蘭鈴と琉龍は首を傾げる。


「この前の『チョコレート』、今人間の国で流行ってるみたいでさー」


 ルンルン♪ と歌い出しそうな勢いで刻龍は料理の準備を始めていた。


「おい、刻龍。なぜ私の分も用意されている……?」


 仏頂面の清龍が刻龍に詰め寄る。


「だってあの菓子気に入ったんでしょ? だったら清龍も一緒に作ったら楽しいと思うよ!」


「……私は別に……」


「清龍は不器用な自分を蘭鈴ちゃんに見られたくないのかな?」


「は? 私の何処が不器用だと言うんだ。日々の実験で繊細な作業を行なっているんだぞ!?」


実験(それ)はそれー、料理(これ)はこれー。んー、ただ作るだけじゃつまらないから何か勝負しよう」


「勝負……?」


 勝負という単語に食いついたのは蘭鈴。


「蘭鈴ちゃんが一番美味しいって思ったチョコレートを作れた人が、今日一日、蘭鈴ちゃんを独占するってのはどうー?」


「なっ……! 蘭鈴を賭けの対象にするな!」


「そのルールだと、オレは何も得られないんだが……」


 蘭鈴が珍しくぼやく。


「もし、蘭鈴ちゃんが勝った場合、今日一日、俺達は蘭鈴ちゃんに絶対服従するってのはどう? 日頃溜まった鬱憤を清龍にぶつけるもよし! 俺にお菓子を作らせるのもよし! 琉龍と街に出かけるのもよし! これでどう?」


「……悪くはないが、それだとオレはオレの作った菓子を一番美味しいと言うかもしれないぞ……?」


「いや、黄龍である蘭鈴ちゃんはそんな事しない。俺たちは()()()()よ」


「…………刻龍、ズルいな。そんな事言われたらちゃんと審査するよ」


 全員は顔を見合わせ頷いた。

 いよいよ、刻龍のお料理教室の始まりである。  

今回の番外編はギャグ回でした。

チョコレートをきっかけに、まさかの料理教室が始まります。


次回は「刻龍のお料理教室②」になりますので、ゆるっと楽しんでいただけたら嬉しいです。


番外編⑤は3月25日投稿予定です!


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