8、純野悠羽子(すみの ゆうこ)
「では、エアリアルつまり彼女について話そう。彼女は、小笠原菜穂子の細胞から造られた。小笠原菜穂子については、知っているかな?」
「ええ。1996年の戦い以後、記憶は失ったものの幸せに暮らしていた筈。……まさか、殺されて細胞を採られたわけではないですよね。」
「ああ、その戦いで採取された細胞で造られたらしい」
少し、安心した。しかし、かつて共に戦った人の細胞で、妙なことをした者達がいるのは、腹が立った。
「で、『闘鬼』を足止め出来た者から、自分たちに従って動く死神を造り出そうとした……のが雇い主なんだが、どうも我々ラ・メーンもいずれ実験台にしようとしている様でね。……この娘も、人殺しのために使われ続けるのは、可哀想だ。首領の意思はまた違うんだが、私とミズハ、それにチャシューは、エアリアルを逃がしたいのだよ」
「なるほど」
「まあ、あたし達は信濃に行くつもりだから、この街にいるよりはいいかもね」
いざとなったら、卜部さんもグィー殿もいるし、半独立地域だから、相手も表立って手出しはしにくいだろう。
「じゃあ、本人が良ければ信濃へ連れて行きますが……どうしますか?」
「うん、お酒もらったし行く。また欲しい。」
「いや、エアリアルさんその理由はどうかと……」
「純野悠羽子」
「えーと?」
「わたしの名前は、純野悠羽子。……エアリアルは、戦う時の名前?のようなもの」
「あ、それなら純野さん。三輪暗志です、よろしくお願いします」
「よろしく、ミワ クラシ」
「あたしは、ゼッタニードル」
「俺、グラヨンベスパ」
「冷血人間、ガイラルアッヴァーンです。よろしくお願いいたす」
「妖科学者の是害院。妖術と科学の融合と、妖獣について、信濃妖人大学を拠点に研究しているよ。妖獣革命党でもある」
なんとなく自己紹介しあった。
ギヌロギョロリラ!
そうこうしていたら、闇気列車が来た。異界と異界をつなぐ、軟らかなボディに巨大な目玉が多数ついた、妙な乗り物だ。是害院博士の異界にも来ることを知っていたので、ここに来た。……宴会をしに来たわけではない。
「フハハハハ!今回は、お客様が多いですな。どうぞ、お乗り下さい」
……みよん
壁に穴が開き、入り口が出来た。
「じゃあ、乗りましょう」
「うん」
「左様ですな」
「俺、乗り込む」
「じゃあね、ラ・メーンの二人」
カラシミソフ氏とミズハ・セールフさん、是害院博士は残って手を振った。
「では、三輪さん。エアリアルを頼む。ミズハ君、時々こちらから情報を送ってくれ」
「ご自分でどうぞ。皆さん、またお会いしましょう」
「フハハハハ!出発致します」
みよん…と、入り口が閉じて壁になる。
ギヌロギョロリラ!!
闇気列車が空に浮かび、結界の壁を通り抜けて動き始めた。




