9、三輪は、酒をくれる鬼
ギヌロギョロリラ!
「草仮面」と書かれた案内板の立った、プラットホームしかない駅に着いた。 空には星が出ている。夏の夜風が、草を鳴らした。
「フハハハハ!またご利用下さい」
ギヌロギョロリラ!
闇気列車は、夜空に消えていった。
「さて、信濃にある鬼界に着きました。とりあえず、外に出ましょう」
ぞろぞろ連れだって歩く。ここは、常に夏の夜である世界だ。外に出ると、千曲川の近くに出る。
「三輪、俺達、行く」
「あたし達食屍鬼は、墓場がある場所が、なんとなくわかるんだ。ありがとね。じゃ」
グラヨンベスパとゼッタニードルは、去っていった。
げしっ!
「痛い!……純野さん、すねを蹴らんで下さい」
「うん……嫌。三輪は、わたしに酒をくれる鬼。だから、酒を渡さない三輪は蹴る」
解せぬ……なぜだ?
「純野殿、三輪殿は今は酒を持っていないのでは?」
ガイラルアッヴァーン氏が、かばってくれた。……まあ、リュックの中に最後のカップ酒があるが……自分で飲みたい。
「違う。三輪は、酒を隠している。わたしには、わかる」
僕は、視線をそらせた。なぜ、わかったのだろうか。
げしっ!……げしっ!
「……脚を蹴る相手にやる酒は、無い」
……ぐにゅぼっ!
「〜!……!……!?」
腹を……蹴られた。
「純野さん。僕は、酒が飲みたい。しかし、これで最後なんだ」
「三輪、わたしは三輪が酒をくれて、嬉しかった。だから、あの閉じ込められた場所から、ここに来た。……酒、飲みたい」
……仕方ない。
…がさごそ。……すっ。
純野さんをに、カップ酒を渡した。
「三輪、ありがとう」
純野さんは、少し安心した様に見えた。あまり表情は、変わらないけれど。
純野さんが、くぴくぴと酒を飲みながら黙って歩いている横で、ガイラルアッヴァーン氏と彼らの住む場所をどうするか相談する。
「一応、知り合いの神さんに頼もうかと思ってます。または、元退魔破神師の所ですかね。……ああ、面倒見の良い邪龍殿もいますね」
「その邪龍殿とは、グィグィラゲヴァーン様のことだろうか?」
「ええ。ガイラルアッヴァーンさんも、グィー殿を知ってたんですか?」
「直接面識はありませぬが、土を守護する偉大な龍だとか」
「そうです。土の守護が第一だから、ニンゲンから見ると邪龍らしいですが、優しい方ですね」
「左様ならば、私はグィグィラゲヴァーン様の所へ行くことを希望します」
とりあえず、ガイラルアッヴァーン氏の行き先は決定した。
「じゃあ、純野さんはどうしますか?」




