6、「ナメクルンS」は、医薬品ではありません。
この街には、偉大な陰陽師を祀った神社がある。……が、そこから少し離れた場所にある、偉大な怨霊であった神の社、その向かいの電柱に用があった。
僕は、食屍鬼に冷血人間、吸血鬼というバラエティーに富んだ面々を連れて移動している。(チャシュー・ヤキブッタさんは、ラ・メーンに合流するため離脱)
「三輪、まだか」
「まだだ」
「私は、皆を送ったら帰る」
「わかりました、ザバラキィーンさん」
人があちこちにいて、落ち着かない。ラ・メーンとかいう組織や、人造死神に見つかりそうで、不安である。
「人造死神って、何か白いのが動いてるぐらいで、はっきり見てないんですが、どんなでした?」
「……胸の薄い娘、だね。あと、白かった」
「左様ですな」
「……ほう」
白かったのは僕も見えたが、女性だったのか。
「ロボットだったのかもしれませぬ。感情がないかのような相手でした」
しばらく歩くと、社の門が見えてきた。
「む、目的地か。では、失礼。また会おう、ガイラルアッヴァーン」
「うむ。また会おう、ザバラキィーン」
ザバラキィーン氏は、去って行った。
電柱には「ナメクルンS」と書かれたナメクジのポスターが貼られている。
「へえ。こんな変なポスターが、貼ってあったなんてね」
「探さないと、気付かない。そういうモノなんですよ、これは」
「三輪、わからん」
「よっ……と」
ポスターに描かれているナメクジの目玉を、指で突いた。
『ミョギャギャギャー』
ナメクジが、なぜか叫んだ。同時に、結界の入口が開いた。人通りは多いままだが、道行く人々はこちらを見ていない。
「気をつけていないと、感知出来ないような仕様らしいです。さて、行きますか」
「そうですな」
「行く」
しかし、数名の男女に取り囲まれた。その中には、白い服を着た色白の少女もいた。
「あれ?小笠原さん?……いや、歳が違い過ぎる。あと、胸が薄い」
小笠原さん……小笠原菜穂子は、信濃の元悪魔召喚士である。
1996年秋、ニンゲンを滅ぼすことを決意した神々と、それを止めようとした神々の戦いがあった。その戦いは、沢山の人や鬼、魔を巻き込んだ大きな戦いだった。
その戦いで、『闘鬼』と呼ばれる羽田淳を5分間足止めしてのけたのが、小笠原菜穂子さんだった。
羽田淳は、最強の鬼である。5分間の足止めの代償に、小笠原さんは召喚士としての記憶を失った。
今は、普通の人として幸せに生きている筈だ。
小笠原さんのそっくりさん……ではなく、一緒に僕らを取り囲んでいるうちの一人が前に出てきた。
「気をつけていれば、見落とさない……ならば、あなた方を追っていた我々は、意識出来るわけですね」
「まあ、その通り。……どちら様?」
グラヨンベスパを結界に押しやりつつ、相手が何者かを問うた。




