5、縛られ、焼かれ、煮られた肉(諸説あり)
「さて、なんとなくこっちに来たけど、どこ行きゃ合流出来るかな」
「俺達、墓場、住んでる」
「じゃあ、墓場に居ればいいのかな」
そんなわけで、グラヨンベスパと共に墓場へ向かった。大路の北にある大学、その近くにある車の入れない細い道を行けば、目的の墓場だ。近道になりそうなので、大きな寺の中を抜ける道をあるいていた。
「三輪、ブタ」
「それは、喧嘩を売っているのかね?」
「違う。ブタ、手招きしている」
……たしかに、ブタが手招きしていた。仕立ての良さそうなスーツを着ている。……僕の稼ぎでは、一生買えなさそう。
ブタ族の知人……知豚?は数名いるので、近づいてみた。
「三輪さんでやすね?わたくし、チャシュー・ヤキブッタと申しやす」
「ご丁寧にどうも。三輪です。一緒にいるのが、グラヨンベスパです」
「ブタ、よろしく」
「存じておりやす。実はわたくし、ニンゲンの情勢を探るために、日頃は人化して『ラ・メーン』という特殊機関に務めておりやす」
「はあ」
「先程三輪さんが遭遇した白いのでやすが、人造死神というモノで、ニンゲンの世界をほしいままにしている奴らが開発中の存在でやす」
「……で、それを見たから僕らも狙われていると」
「その通りでやす。そもそも、食屍鬼を攻撃させたのも、性能を試すため。ラ・メーンは、目撃者を消すために動いておりやす」
「教えちゃっていいんですか?」
「三輪さんには、竜神の件で借りがあるから守るようにと、ゴッドから頼まれておりやす」
ゴッドさんというのは、ブタ族の神である。以前、ゴッドさんに頼まれて、暴れ回る竜神を抑えるのに協力したことがあった。
「しかし、チャシューさんの立場は大丈夫ですか?」
「お気になさらず。大丈夫でやす。ただ、実験台にされた食屍鬼たちの住処は、すでに手が回っておりやす。直接信濃に帰ることを、お勧めいたしやす」
そろそろ地元に帰ろうと思ってはいた。
「ありがたいんですが、一応知り合いが戦っているので、彼らが死ぬのも嫌だなぁと思いまして……」
ガカカカカ…
見覚えのある3人が走ってきた。ガイラルアッヴァーン、ザバラキィーン、ゼッタニードル(敬称略)の3人だ。
3人とも、ボロボロだった。
「三輪殿、グラヨンベスパ殿も、無事で良かった」
「左様ですな。こちらも、しばらく戦っていたら人々が集まりだし、相手が引きました」
「あのままだったら、危なかったかもしれないね」
僕は、3人にチャシューさんを紹介し、情報の共有をした。
「左様ですか。ザバラキィーンよ、どうやらこの街にいるのも危なくなってきたようだ」
「うむ。私は、コウモリに変化すれば、何とでもなるが、君は変身出来ない。たしかに、危険だ」
「あたし達も、ちょっと危ないねえ。どうしようか、あんた」
「俺、弱い。この街、出たい」
吸血鬼と冷血人間のコンビ、食屍鬼の夫婦がそれぞれ相談している。
「三輪さん、普通に駅や高速道路で移動するのは、危険かもしれやせん」
「多分、僕も含めてこのメンバーは、車の運転は出来ないんで、徒歩?」
免許証はあるが、運転15分で40〜50時間体調が悪くなる。初めは体調が悪くなるのも、運転した時間と同じ位だったので、免許証を取得出来たが、だんだん体調の悪さがひどくなり、回復する迄にかかる時間も長くなった。
ガイラルアッヴァーン氏は、外国の免許はあるが、この国では使えない。
百八十年地下にいた食屍鬼達も、運転は出来ないだろう。
……ザバラキィーン氏は、飛べるから車を必要としない。
「それは困りやした。わたくしは、運転出来やすが、そろそろラ・メーンに合流しないと怪しまれやす」
「まあ、信濃に戻るぶんには、電車でも自動車でも、徒歩でもない方法がありますが」
「左様でしたら、私も信濃へ行きます」
「俺達、同じく」
「旦那が行くなら、あたしも行く。墓地があれば、そこに住めばいいからね」
どうやら、皆さん信濃へ移住するようだ。




