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24、大神(たいしん)キャピター




 吉田さんの話によると、今回の工事を進めているのは、信濃の外の企業らしい。

 現市長は、ぐろーばる化というやつに対応するために、信濃の外から企業を誘致したい。また、相手の企業は信濃に食い込みたい。そういう思惑が一致したようだ。


 なお、相手企業は大神キャピターの息がかかっていることも、吉田さんが調べてきた。



 「キャピターって、どんな神ですか?」

 「1996年の戦いには参加しないで、それによって弱った神や魔を従えた神らしい。詳しいことは、わからなかった」

 「風乱党でも、かの神については掴めていない部分が多いですね」



 謎が多い相手か。



 「わたしは、知っている。キャピターは、わたしを造らせた奴らが従っていた神」

 「純野さん……」



 純野さんは、うつむいたまま話を続けた。



 「あの神は、生きているニンゲンを全て、自らに従えようとしていた。……逆らう者を殺すために創られたのが、わたし」



 僕らは、黙って純野さんの話を聞いていた。



 「今は、ここにいて、三輪たちと、酒を飲んだりしてる。けど、キャピターが目の前にいたら、殺すだけの、わたしに、戻ってしまいそう」


 「エアリアルは、空の死神。わたしは、ずっと、『お前はキャピター様の敵を殺すためだけの死神だ』と言われてきた」


 「池を埋め立てようとしている相手の、後ろに、キャピターがいるなら、三輪たちを、殺す、ことになりそうで、わたしは怖い」



 純野さんは、さらに何か言おうとしていたが、口に酒ビンを突っ込んだ。



 「もがっ!三輪、何をする!?」


 「まあ、落ち着け。その酒、どうかね?」



 純野さんは、こちらを睨んでいたが、酒を少し飲んだ。



 「……おいしい」


 「うん。おいしいよね。純野さんは、キャピターに創られたらしいけど、キャピターはそんな飲んだくれに創ったと思う?」


 「……わからない」

 「多分、純野さんが酒好きなのは、キャピターがそう創ったからじゃなくて、純野さんがただ飲んだくれなだけ」



 「むう。……三輪は、失礼だ」


 「まあ、なんだ。つまり、いくら神さんでも、純野さんを創ったらしくても、何でも思い通りってわけじゃない。純野さんは、純野さん。自分で思う様に、動けるよ」


 「……うん」



 純野さんは、うなずいた。そして、右手を伸ばしてきた。



 「……どうした?」


 「新しい紙コップ、おくれ」






 なぜか全員、酒を飲みながら話を続けた。



 「池を埋め立てないという文書があるのなら、風乱党が動くのは筋が通らない。一度戻って、党首に確認してくる」


 室賀さんは、そう言って戻っていった。



 「室賀ちゃんが行ったから、風乱党は大丈夫だろう。ただ、企業は引き下がらないだろうな」


 「うーん、だからといって、風乱党は信濃の退魔組織では最強だし、他が動きますかね?」



 吉田さんは、資料をパラパラとめくりながら言った。



 「他所でも、あの企業は同じようなことをしてるんだがな。最初は、地元の退魔組織をぶつけて、そいつらを消耗させてから、国際エクソシスト会とかいうのを動かしてるな。そして地元の退魔組織も、潰してる」


 「ああ、独占しようというやつじゃな」


 「デンキパイロットなんかも、キャピターの勢力ですよね。いつの間にか、あちこちにキャピター勢力がありますね」


 「ちょっと、大変そうだな。まあ、千両箱のためか」

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