23、吉田のお兄さん
酒を飲みながら、自己紹介しあった。
「三輪です。多分、分類するなら邪鬼ですかね」
「純野悠羽子。お酒が好き。よろしく」
酒が好きなのは、言わなくてもここにいる面子にはわかっていると思う。
「先程は、すみませんでした。室賀淳子と申します。いわゆる退魔士ですね」
「蛙の神、登雄流じゃ」
「……依頼人からは、工事を邪魔する魔物だと聞いているのですが」
「……蛙の神、登雄流じゃ」
「まあまあ、飲みましょう」
そう言って、登雄流さんの酒を飲む。……うん、うまい。かなりいい酒だ。
「むう……うまいですね」
室賀さんも、登雄流さんの酒を気に入ったようだ。
「一応、前の市長とこの池を埋め立てないって約束をしているんですが、室賀さんご存じでした?」
「いや、それは依頼人から聞いていない。……何か文書があるのだろうか?」
多分、吉田さんが調べているとは思うが……。
「確かとってある。少し待つのじゃ」
……どぼん
「……池の水で濡れないのだろうか」
室賀さんも、かつての僕と同じことを思ったようだが、酒の肴を持ってきた際にでかい気泡のようなので水が入らないようにしていた。文書も同じようにするのだろう。
「三輪、戻ってくるまで、もう少し飲もう」
「そうだね」
僕は酔っぱらうと、まともに動けなくなるが、純野さんは飲んでも感覚が鈍らない。不思議である。
ばちゃっ
「おーい、取ってきたぞー」
登雄流さんが戻ってきた。
「三輪ー、調べてきたぞー」
吉田さんも、池に来た。
「ああっ!吉田のお兄さん!」
「えっ?室賀ちゃんか?」
吉田さんはなんだか怖れていた様子だったが、かつては仲が良かったのだろうか。
「いつの間にか風乱党を抜けてて、心配していたんですよ!」
「まあ、いろいろあって鬼道士についたからなあ。退魔士の集まりである風乱党には、顔をだせなくてなあ」
「吉田のお兄さんに勝ちたくて強くなったのに……。でも、元気そうで安心しました」
室賀さんは、吉田さんに会って、雰囲気がかなり柔らかくなった。
「いや、なんだか大人になったなあ。20年も会わなきゃ、当たり前か」
「ずっと会いたかったんですよ。風乱党では、吉田のお兄さんは裏切者扱いで、捜しに行こうとしても止められましたし」
退魔士と鬼道士では、守る相手が逆だからそうなるのだろう。
吉田さんは、退魔士として優秀な方だったらしいから、なおさらだろう。
「ところで、吉田のお兄さんは、この方々と知り合いなんですね」
「まあ、そこの三輪は同業に近いし、登雄流さんは依頼神だな。純野さんは、三輪の友達?で今日初めて会った」
「依頼神?……まさか、吉田のお兄さん、この魔物を守るために来たんですか?」
「まあ、魔物じゃなくて神だけど。そういうことだな」
室賀さんは、下を向いてしばらく動きを止めた。
「……書類とやらを見せてもらえるだろうか」
室賀さんは、登雄流さんから池についての書類を受け取って確認している。話し方は、元に戻っている。
「三輪よ、こっちも調べてきた内容を話しておこうか」
「そうですね。純野さんも、酒飲むのは一度やめて、話を聞こうか」
「……飲みながらじゃ、駄目?」




