13、邪龍グィグィラゲヴァーン
「こんにちは。酒の神、解子です。よろしく。橘様から話は聞いていると思うけど、台風神サブローと妾が話してる間、眷族を足止めしてもらうのをお願いします」
「はい。ええと、僕は三輪です。よろしくお願いします」
「ガイラルアッヴァーン。冷血人間です。よろしくお願いいたす」
「純野悠羽子。よろしく」
「グィグィラゲヴァーン、邪龍ナリ」
「……なんでいるの?」
解子姫が、僕も思った疑問を口に出した。
「……最近、暇デナ」
「お世話になっている故、止められませなんだ」
「いや、グィグィラゲヴァーン!あなた土の守護者でしょう?暇デナ……じゃないでしょう?」
「三輪殿、酒ノ神ガ我ヲ苛メルノダガ」
邪龍グィグィラゲヴァーン。30メートル程の長さの、ミミズ型邪龍である。ミミズ型でありながら、一般的に龍で思い浮かぶ形の龍族、そのほとんどより強い。太古のドラゴンは、ワーム型と聞いたこともあるし、ミミズ型龍族侮り難し。
「冗談ハ、サテオキ。……ソコノ娘ガ心配デナ」
グィー殿ことグィグィラゲヴァーンは、面倒見がいい。ここに来る前に純野さんのことを説明したら、自分も力を貸すと言って、来てくれた。
「ソレニ、最近ノ台風ニヨル土砂災害ハ、土ノ守護者トシテ看過デキヌ」
うん。グィー殿、真面目だ。
「まあ、戦力にはなるからいいか。じゃ、台風神サブローに会いに行くけど、飛べない人?はいるかな?」
純野さんしか、飛べる者はいなかった。
「……グィグィラゲヴァーン、あなた岩石飛ばして戦うんだよね?なんで飛べないの?」
「……我ハ我、岩石ハ岩石……ダ」
解子姫は、酒を取り出した。
「飛べない人は、飲んでね。一時的に、飛べる酒だよ」
なぜか紫色の煙が出ている。
「解子姫殿、失礼だが別の意味で飛びそうなのですが、いかに?」
「ガイラルアッヴァーンさん、鋭い!なんだかいい気分に、なってしまう副作用があります。でも、飲んでね」
「三輪、酒ならわたしも飲みたい」
「純野さんは、飛べるからダメ。それに、多分不味い」
解子姫が、うんうん頷いている。
やはり不味い酒だった。酒の神としても、これはいずれ何とかしたいと、解子姫も言っていた。
「ぴゅらりら、ぴゅらりら、びゅおんびゅおん!」
「ぶぉんぶぉん!」
「ひゃっはー!台風神サブロー様のお通りだぁー!ぴゅらりらぴゅらりら」
台風神サブローと、その眷族である『雨やん』『風やん』だ。
「まずは、私が説得してみるよ」
解子姫はそう言って、進んで行った。
「おーい、サブローちゃん。お久しぶりー」
「酒の神か。今年も我の邪魔をする気か?」
「まあ、そうだね」
「ふむ。今年は、卜部翠隼がおらぬのか。……しかし、グィグィラゲヴァーンが代わりに来たか」
「代わりは、そっち」
台風神サブローは、初めてこちらを見た。
「ほう。……酒の神よ、賭けをせぬか?」
「どんな賭け?」
「そこの三名が、我が眷族に勝てたら、今年は引こう」
「……我ハ?」
グィー殿は、ちょっと寂しそうだった。
「そいつらなら、卜部翠隼やグィグィラゲヴァーン程は強くないだろうし、賭けになるだろう」
「そうだね。……乗った!」
「……我ハ?」




