12、猫の神時春(ねこのかみときはる)
「遅くなったので、グィー殿の所へは明日行きましょう。今夜は、夜訪ねても平気な神さんにあなた方を泊めてもらおうと思います」
そんなわけで、ある神社に来た。そして、境内にある小さな祠へ。
「サルートン、時春さん」
祠に声をかけた。すると祠が光りだした。
「サルートン。……三輪かに?よく来たにー。お土産の八ッ橋、楽しみにしておったにー」
「……あっ」
「……あっ?……まさか貴様、忘れたのかに?」
祠の光が消えると目の前に、二本の足で立つ、三つの目を持った、尻尾が二又に分かれた猫がいた。
「すみません、時春さん」
「ちぇっ」
三つ目猫、猫の神時春は、舌を鳴らした。
「そうか、そうか、つまり三輪はそんなやつなんだに」
「でも行く途中、停車した駅で、鮎の甘露煮を買って来たので、どうぞ」
時春さんは、目を見開いた。
「わ、我は三輪を、信じていたにー!」
行きに買っておいて、良かった。時春さんは、早速封を切り、魚を頭から貪り喰っている。
「三輪、猫触りたい」
純野さんが、ポツリと言った。
「む!三輪の他にも、なんかいるにー」
「今、気付いたんですか。土産に夢中になり過ぎですよ」
「む!三輪の方こそ、サルートン以外のエスペラント語を忘れてるくせに、偉そうだに!」
……この猫(の神)、痛い所をついてきた。
「猫、触る」
「ヒョエッ!な、何をするにー!」
純野さんが、時春さんを抱え上げた。
「三輪、この無礼な娘はなんだに!?」
「純野悠羽子さんです。こちらにいるガイラルアッヴァーンさん共々、今夜泊めてあげて下さい」
「冷血人間、ガイラルアッヴァーンです。よろしくお願いいたす」
「わたしは、純野悠羽子。猫さん、よろしく」
「ふむ、よろしくだに。……ニギャー!尻尾をつかむなにー!」
時春さんは、神ではあるが戦闘タイプではない。死神として造られた純野さんより、はるかに弱い。つまり、純野さんに、好きなように弄り回されていた。
「じゃあ時春さん、僕は帰るんで、二人をよろしくお願いします。明日の夕方に、迎えに来ます」
「朝来んかにー!」
「いや、昼まで寝るんで無理です」
翌日、ガイラルアッヴァーンさんを、グィー殿こと邪龍グィグィラゲヴァーンの住処へ案内した。
純野さんは、時春さんの祠にしばらく住んでもらう。純野さんは、きれいな女の子なので、僕のねぐらに住まわせるのはまずい。
幸い、時春さんの祠は、僕のねぐらから徒歩数分。また、時春さんは弱いものの、2ヶ月交代で密かに彼を守る六匹の聖猫がいる。今は、「マタタビのニャー」さんが担当らしい。
そして、酒の神である解子姫の所へ行く日がきた。




